に後押ししてもらい、部屋を出たときにはもう既に心に迷いはなかった。 男など、決して恋愛の対象ではないと思ってきただったが、惚れてしまえば性別など関係ない。 似たようなことを言っている人間は、今まで何人も見てきたが、まさか自分が同類になるとは思いも寄らなかった。 全ての始まり、薔薇の木が目の前にある。 辺りを見渡すが、繁の姿が見えない。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 しばらくそこにいたが、は意を決して繁の家を訪ねることにした。 もう既に日が暮れてしまっていたため、雑木林の中は真っ暗だったが、白い塀が見えると安心した。 身軽に跳び越えようとして、塀の上で動きを止めた。 その先に見覚えのある後姿があったから。 「・・・くん・・・?」 ゆっくりと振り返る。 「はぁ・・・はぁ・・・」 走ってきたため、肩で息をするを見て、繁が目を擦る。 夢ではないだろうかというように。 しかし、その漆黒の艶やかな長い髪は・・・見紛うことはありえない。 「ああ、来てくれたんだね・・・。もう、会ってくれないかと思ってた。・・・・嬉しいよ」 言いながら目を細め、本当に嬉しそうに繁が微笑んだ。 「に・・・会った・・・ん・・・だな」 言わなければならないことはもっと他にあるはずなのに、口から出たのはそんなどうでもいい内容。 己の素直じゃなさを、はこれほど呪ったことはなかった。 「? ああ、薄茶色の髪の子のことかな? ほら、いつまでもそんなとこにいないでこっちに降りておいで」 そんなの思考をお見通しだというように、ゆっくりと両手を広げて繁が言った。 「・・・なんだ、その手は」 「ぼくの腕の中に、降りておいで」 「・・・・・・・」 「あ、疑ってるね? もう虐めないよ。そんな必要もなくなったからね」 語尾がやけに辛そうだ。しかし、暗くてよく見えないがその瞳は優しげに見える。 ・・・月村に、何かあったのだろうか。 「・・・・」 無性に腹立たしくなり、はわざと両手を広げる繁を避けて、少し離れたところに飛び降りた。 ・・・はずだった。 「・・・・・・・・・・・素直じゃないわりに、やることが単純だよね」 見事に抱きとめられた。 「は、離せ・・・っ。そして、降ろせっ」 気が付けば、いつの間にか繁にしっかりと抱きしめられている。 「また、そんな可愛くないことを言う」 「・・・・・・っ」 繁の声が少しだけ意地悪を含んだものに変わり、が無意識に身を硬くする。 それがわかったのか、繁は口元を緩めた。 そして、の耳元にその形の良い唇を寄せた。 「」 抱きしめられたまま耳元で優しく名を呼ばれ、は戸惑う。 「好きだよ」 「え・・・?」 「は?」 この男は、自分の敬愛する水川抱月であり、月村のことが好きで、あんな狂った計画に手を貸して、 それで自分にあのようなことをさせて、思い出すだけでも恥かしい屈辱的なことをして・・・。 それなのに、好きだと言われて、どうしてこんなにも胸が甘く疼いてしまうのか。 理由など、わかりきっている。 「・・・・」 しかし、自尊心が邪魔をして、それを口に出すことが出来ない。 「ぼくにだけ、言わせるつもり?」 「言わなくても・・・わかっているだろう?」 「そんなの、言わなきゃわからな・・・・・・え?」 繁の目の前が、更に暗くなった。 その先の言葉は声になる前に、がその唇で吸う。 「これが君の答え?」 「・・・・・」 俯きながら、ほんの少しだけ頷いてみせる。 「嬉しいよ・・・・・あぁ」 「な・・・なんだ、変な声を出して」 「君があんまりにも可愛いことをするから・・・・」 ぎゅっと抱きしめる腕に力を入れる繁。 着物越しに、少し熱を持った繁自身がに触れた。 「なっ!?」 「さぁて、どう責任取ってくれるつもりかな?」 「ど、どうして俺が、責任を押し付けられるんだ!!馬鹿!自分でなんとかしろ!!」 じたばたと暴れてみるが、やはり繁の腕はびくともしない。 わかってはいたが、これが暴れずにいられようか。 「おや、冷たいことを言うね・・・お仕置きだ」 楽しげな繁の声と共に振ってきた、小鳥のついばみのような口付け。 「やめ・・・くすぐった・・・いっ」 まるで子供がじゃれるように、顔中に軽い口付けを散らされ、身を捩って耐える。 そして、結局・・・大量の本に囲まれた繁の部屋で、絡み合っているこの状況に、が思わず苦笑する。 「どうかした?」 「いや・・・何故こんなことになったのか、考えていた」 繁のあぐらに、正面から跨るように乗せられたが答える。 「へぇ、それは、余裕ってこと?」 「どうしてそうなるんだ」 「時に君は・・・・する方とされる方、どちらがいい?」 色気も何もないこの聞き方が、まさしく繁である。 が、何と答えたものかと思案していると、先手を打つように繁が言う。 「ぼくとしては、する方がいいんだけれど」 「だったらどうして聞くんだ」 「君、女扱いを極端に嫌うだろう? それに耳を貸す気がなくても、一応希望くらいは聞いておいてあげないとって思って」 優しいだろう?と付け加えて、どこか得意げに繁が言う。 「耳を貸す気がなくてもだと!?」 「うん、そう」 耳を疑う勢いで聞き返したはずの台詞も、あっさりと肯定されてしまえば、二の句は次げない。 が、こめかみを押さえた。なんという男を好きになってしまったのだろうか。 「もう一度聞くが、耳を貸す気は、ないのか?」 「そうだねぇ・・・言い方にもよるかな? 例えばもし、君が可愛く、させて下さいって言えば、考えてあげるかもね」 「・・・・」 「ま、言わないとは思うけど」 「・・・違う」 「何が?」 「その、別に・・・いや・・・その・・・」 「ん?」 が妙に口篭る。 好きだとすら言えなかったこの口が、よもやそのようなこと−−−されてもいいなどと、言えるはずがない。 言おうとした発言を脳内からも撤回しようとした、まさにその瞬間。 繁が、何かに気が付いたような顔をした。 「もしかして・・・?」 「ばっ、違う!誤解だ!!」 焦って否定したが、それが逆効果だったことは、繁の表情を見れば一目瞭然だった。 「なーにーがー?」 にやにやと笑う繁。この顔は、の心を完全に見透かしている。 は羞恥と身の危険を感じ、大慌てで繁から離れようとした。 「駄目だよ、逃がさない」 腰に回された手が、をきつく抱き寄せる。 互いに硬くなった自身が触れる感触。のものは繁の腹の辺りに。そして繁のものはの尻に。 「う・・・」 「言ってごらん?」 「なに・・を・・・っ」 「」 繁はたしなめるように、名を呼ぶ。腰にくるような、とろける官能的で甘い響き。 たまらなくなり、はついに観念した。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・す、すれば・・・いいだろう」 目を逸らし、これが限界と言わんばかりに、蚊の鳴くような声で言う。 「ああもう、どうして君はそんなに可愛いんだろうねぇ」 あっという間に押し倒されて服を脱がされる。 「ご褒美に、優しくしてあげるよ」 「あ・・・っ」 の身体は、繁からの愛撫を待ちわびていたかのように熱くなる。 両胸の紅い点をゆっくりと舐られるたびに、自分のものではないような甘い声が漏れる。 きつく吸われれば、自然に身体が悦びに震えた。 「んっ・・・・・・あ・・・・」 「気持ちいい?」 「・・・・な、こと・・・・・いちい・・・ち聞くな・・・」 「こっちも、だいぶ大きくなってるみたいだけど?」 の熟れたものを、その手にやんわりと包み込み、上下に優しく扱く。 「ああっ・・・・・はぁ・・・・・んっ・・・んっ」 「可愛いよ・・・」 繁はの先から零れる液体をその指に絡め取り、その奥の秘部に押し当てた。 ゆっくりと、ほぐすように挿入していく。 「あっ・・・・・ああっ・・・・ん・・・あぁ・・・」 ゆっくりと息を吐く。身体中の神経が全てそこに集中してしまったような奇妙な感覚。 「繁だよ」 「しげ・・・・・・・・るっ・・」 「いい子だ」 耳元で低く囁かれれば、脳内が麻痺したような感覚が襲う。 「んっっ!!」 いきなり電気のような衝撃が走り、が目を見開いた。 「隠しても無駄だよ。君のいいところは全部知ってる」 その台詞が嘘ではないということを証明するように、の弱い部分を強弱をつけて突いてやる。 「ぁあっ・・・・・あっ・・・・・あぁっ・・・・ア・・・やっ・・・やめ・・・・」 「そろそろ欲しくなった?」 既に抵抗する気も失せたらしく、くたりと自分に全身を委ねているに向かって、繁は意地悪く問う。 「どう・・・して・・・・あん・・・たは、そんっ・・・なに・・・・・意地が・・・悪い・・・ん・・・だっ」 「さて、どうしてだろうねぇ? あ、今、あんたって言ったね? さっきはちゃんと名前で呼べていたのに・・」 剣呑に光る繁の蒼い眼。がまずいと思っても、今更だった。 「・・・お仕置きだ」 聞きなれたその台詞。今のにはそれすらも、甘美な響きを持って聞こえる。 それはそれは楽しそうにを抱え上げると、座った体勢の自分の上にゆっくりと降ろしてゆく。 「ああああっ・・・・待・・てっ・・・ちょっ・・・・・ああっ」 の止める声を綺麗に無視して、自分自身の上に沈めていく。 完全に静めると、その細い腰を持ちゆっくりと揺する。 「ああっ・・・・もぅ・・・・ああ・・・・ああ・・・・」 既に余裕の欠片もない声が、の口から漏れる。 「く・・・ぅ」 達する時期が近いのだろう、無意識に締め上げるに、繁も細い眉も寄せ、苦しそうに息を吐く。 薄く目を開ければ、白い肌と漆黒の髪の対照的な色合いが、をより卑猥で美しく見せる。 腰を掴まれ、揺すられて、上半身をいやらしくくねらせる。 身を仰け反らせ、与えられる強すぎる快楽に耐えるその姿は、自分が今まで文章で表現してきたどの場面よりも美しく官能的だ。 まさに眩暈の起きそうな甘美な誘惑。そんなことを考えていると、繁の余裕もそろそろ危うくなってきた。 このままではよりも早く達してしまいかねない。 「だ・・・め・・・そこ・・・あぁ・・・・」 わざとの弱い部分を狙って甘く揺すってやる。 しつこく、これでもかというほどに。 「あ・・・・ア・・・・っ・・・・・・・っ・・・っ・・あっ・・・・あああああっっ」 「・・・・・ぅ・・・くぅ・・・っ」 同時に果てる。 がその青味を帯びた切れ長の眼だけを、ぐったりと四肢を広げて快楽の余韻に浸る繁に向ける。 「・・・・・・・・繁」 「うん?」 「その・・・・好き、・・・だ」 一瞬、あっけに取られた繁だったが、すぐにいつもの余裕の表情に戻ると、得意げに言う。 「・・・知ってたよ」 その後、どちらが先だったかは定かではないが、ひとしきり二人で笑いあった。 胸の奥に何かくすぐったいものを感じながら、が些か照れくさそうに繁に寄り添う。 「でも、いいのかい? 彼・・・えぇと、くんだっけ? 君のこと、好きだったんだろう?」 「ここへ来たのはが行けと言ってくれたから・・・だ」 「・・・そう。 君はなかなか罪な男だねぇ」 「なんだそれは」 「ねぇ、もう一度君の方から・・・・からキッスしてくれない?」 「・・・俺のは高いぞ?」 「ん〜・・・・・・・・・それじゃ、身体で返すってのはどう?」 「・・・馬鹿」 の呆れ声の後、互いの唇は吸い寄せられるように静かに重なった。 back |