嫉妬 〜羅那さまからのいただきもの〜<前編>   




※「LUNATIC」羅那さまから当サイトの四周年記念のお祝い小説をいただきました。羅那さん、素敵なお話をありがとうございました。 



「デュオ〜。今日当たり食事でも行きませんか?」

それはカトルからの食事の誘いだった。
久しぶりの友達からの誘いで、デュオは快く受け入れたがこれが悪夢の始まりだとは、思っても居なかった。

「ヒイロあのさ〜。」

「・・・・・・。」

無視された。何でだ??と思いながら、通り過ぎてゆく彼の背中を眺める。デュオには思い当たる節がないのだ。
不に落ちない。
一緒に暮らしていて、無視される事は多々あるが、取敢えずは話を聞いてくれて、何も答えてくれないと言うケースが多い。
でも今回は何かが違う。
他人には分からないであろうが、デュオには解るのである。
完璧に自分を避けていることが。
そんなことを考えている内に、仕事も終わり外は暗くなって居た。

「デュオ。食事に行きましょう。もう予約は入れてありますから。」

カトルの声で我に返ると、デュオは笑顔でカトルに答えた。
が、今のデュオはヒイロのことで頭が一杯で、他の事は何も考えられない。
昼から一度も口を聞いていなければ、誰だって不安になる物だが、相手がヒイロとなると難しいのである。
少しブルーになっているが、こんな物憂げな顔では駄目だと思い、カトルに着いてゆく。
するとヒイロの後姿が見えた、デュオは彼の背中を追いかけ呼び止めると、いきなり話始めた。

「今から、カトルと食事に言ってくるから。遅くならない様に直ぐ帰る。」

デュオはそれだけ伝えると、カトルの所へ戻った。
無視されるのは解っていたが、伝えずには居られなかった。
案の定無視されたが、気を取り直したデュオは何時もの様にはしゃいで見せる。

「ヒイロ怒ってるの?」

様子の可笑しい二人を見て、カトルは心配そうに問う。

「そんな事、何時もの事だって。オレ何時も無視られてるし〜。ほんっと、デュオちゃん悲しくなっちゃう〜。」

てな事を言いながら、おどけてみせるデュオに笑みを漏らしながら、カトルはデュオを店まで案内した。
案内された店に着くとデュオは、田舎者丸出しで瞳を輝かせる。

「わぁ〜!すげーな!!さすがウィナー家の跡取り。」

招かれた店は、気品が溢れ見るからに大人のお店!!と言う感じで、デュオは何だか自分が場違いな様な感じがした。
置くから、ボーイが出てきて二人を席まで案内してくれた。
テーブルの上も綺麗な花で装飾され、ナプキンまで置いてある。
ヒイロとは何時もショットバーへ行き、気楽に飲んで騒いで帰るくらいなので、こんな上品な所は緊張してしまう。

「落ち着きませんか?ここは、何時もトロワ達と来るんだよ。デュオは何だか苦手そうだね。」

デュオの様子をみて、カトルが話しかけてくる。

「あっいや・・・。こんな豪華なところ初めてだからさ・・・。何か緊張しちまって。でも、凄い店だな。」

辺りを見回しながら、デュオは答えた。
そんな彼を見ていると、何だか初々しく感じる。
くすっと笑ったカトルは、改めてヒイロの事を聞いた。

「ヒイロは君の事がとても好きなのですね。」

いきなりのカトルの発言に、勢い良く出された水を吹き出してしまったデュオは、咽ながらカトルの方を見やる。
一体何を言い出すんだ?と言う表情をしながらその先を促すと、カトルはニヤニヤしながらまた口を開く。

「だぁって、どう考えたって今日のヒイロは僕に嫉妬してる様にしか見えなかったから。あの顔と態度を見たら一目瞭然だよ。彼にもやっと人の心が宿ったと言うか何と言うか〜。」

思わず絶句してしまったデュオは、ガクリと肩を落とすと大きな溜息を一つ吐いた。あのヒイロが嫉妬なんてするはずが無いと心の中で言ってみる。

「アイツに嫉妬する心があるはずないだろーが。無鉄砲だし無茶ばかりしてるんだぜ?ヒイロが嫉妬なんて・・・。
ま、リリーナお嬢さんくらいじゃね?オレに嫉妬して、アイツに何のメリットがあるって言うんだ?」

そうだ、オレになんて嫉妬するはずが無い。
デュオは軽くそう言い放つと、何だか悲しくなった。ヒイロが命がけで守ったのはリリーナ・・・。オレじゃない。
胸が痛くなった。

「デュオは勘違いしてるよ。ヒイロがリリーナさんを愛してるなんて根拠が何処にあるのさ?素直になりなよ〜。君も彼の事好きなんでしょ?」

「なッ!?」

カトルに痛い所を疲れたデュオは、思わず小さくなってしまう。
どうしょうもないこの気持ち。カトルには見透かされている事に軽く驚きを隠せない。
一番気付いて欲しい彼には気付かれないで、ましてやカトルに気付かれているなんて。本当に悲しくなった。
テーブルに出された美味しそうな料理も食欲が進まない。そして、家にも帰りたくない。帰ったってどうせヒイロは口を聞いてくれないに決まってる。
そんな事を考えていたら、どんどんテンションも下がり何処かえ消えてしまいたくなってくる。

「そんなに落ち込まないで。少し言い過ぎたよ、御免ね。でもね、デュオもそうだと思うけど、嫌いな相手とは一緒に住みたくないでしょ?裏を返せばヒイロだってそうだと思うんだ。だから、今日はもう帰ってヒイロと仲直りして下さいvv」

カトルは、デュオの気持ちを察したのか優しく笑って、帰るように促した。

「で、でもよ。折角誘ってくれたんだし、飯もまだ食ってねーし悪いよ。」

「良いんですよ。遅くなればなるほど、気まずくなりますよ?さぁ早く帰ってあげてください。」

そう言われて、後ろ髪を引かれながらもデュオは店を後にした。



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