死という名のプレゼント 〜魁さまからのいただきもの〜 




「わぁ、雪だ−。ヒイロ−。雪だぜ雪!俺生で見るの初めて−−」

「そんなにはしゃぐな滑るぞ」

「すべらね−よ。」

「三年後、のクリスマス。絶対迎えに来る。だから、ここで待っていてくれるか?」

ヒイロが俺にくれたのは水色の宝石のはめてある指輪。
これはヒイロが迎えに来るまでの代わり。替わりにヒイロに俺のピアスをプレゼントした。そして、最後のキスをしてヒイロと俺は離ればなれになった。





「あ−−−。もう、これで五年目か〜〜。」

デュオは窓辺にもたれて外を見渡していた。
高級マンションの最上階。
ヒイロがデュオに与えた五年前のクリスマスプレゼント。
本当なら今頃一緒にこの雪をみてるんだろうな−。とデュオは重いため息をついて窓を閉めて部屋へ入っていった。

五年前よりもはるかにのびた髪。
のびた分だけがヒイロとデュオの今の距離を示しているようで、それがいやで今まで何度もばっさり切ろうかと思っていた。
しかし、ヒイロがずっとこの髪を好きだと言っているときの笑顔を忘れたくなくて切れないまま五年がだった。
今日はクリスマス・イブ。
明日はクリスマス。
今年こそはクリスマスに還ってきてくれるだろうか・・・・・?
デュオがぼ−っと考えに入っていると急に玄関のチャイムが2・3回鳴った。
うるさいチャイムの音で急に現実に引き戻されたデュオは、少しの期待を込めて玄関のドアを開けた。

しかし、玄関の前にいたのはヒイロではなくただの宅急便。

「ここにサインしていただけますか?」

「はいはいっと。で、これ何?えらくでかいけど?」

「よくわかりませんが結構重かったですよ」

そう言って宅配便は帰って行った。

部屋まで箱を引きずって、やっとこさリビングに着き「ヒイロからのプレゼント?」と少し思いつつ箱を開けるとそこにはヒイロが横たわっていた。

「ひ・・いろ?」

デュオの声と共にカチッと言う音がすると箱の中のヒイロがゆっくりと目を開けた。
五年前となんの変わりもないヒイロ。
そして、デュオを見つけるとにっこりとヒイロは微笑んだ。

「ヒイロ?ヒイロ?ヒイロだよな?なんで二年も連絡ないんだよ!!おれ、五年待つところだったんだぞ!!」

デュオは思い切りヒイロに抱きついてそう叫んだ。
ヒイロはゆっくりとデュオを引き離すと、ゆっくりと口を開けた。

「デュオ、ヒイロ・ユイは死んだ」

「・・・・・え?何言ってるんだよ・・・・?だって。お前はここにいるじゃね−か!」

「三年前。ちょうどヒイロ・ユイとお前が別れた二年後だ、ヒイロ・ユイはある任務に就いていた。任務はほとんど終わりかけていてあと一つの大きな爆弾を設置し、そこから離れて遠くにいる仲間がスイッチを推せば任務が終わる簡単な任務だった。しかし、ヒイロはある物を取りに戻ったため爆発に巻き込まれた」

「ある物って・・・・?」

ヒイロは自分の耳元に手をやるとすっとデュオの前に手を差し出した。
差し出された手にあったのはデュオが別れ際にヒイロにプレゼントしたピアス。

「よほど大切な物だったんだろう。爆発には巻き込まれたがその時は重度の怪我ですんだんだが、長くは生きられないと医者に言われていたヒイロ・ユイは自分のクロ−ンを作るようにカトル・ラバ−バ・ウィナ−に言った。そして、自分が死んだらデュオの手元に届くようにと設定された」

ヒイロが言い終わった瞬間デュオの体は崩れていった。



「ん・・・・」

デュオが目を覚ましたのは真夜中で、デュオの横にはヒイロが、詳しく言えばヒイロのクロ−ンがずっと手をつなぎ隣に座っていた。

「あったかい・・・・。クロ−ンでも暖かいんだな・・・・。」

目の前にはヒイロがいて、でもヒイロは本当のヒイロは死んでいる。
わかっているはずなのに頭が受け付けられない。
でも、ヒイロの死を受け入れられなければ目の前にいるヒイロを受け入れていないのも同じ事。それは今手を握っていてくれるヒイロを受け入れていないのと同じ。
人に受け入れられないのがどんなにつらいのかデュオは知っている。
でも、ヒイロはいつもの冷めたい様な雰囲気でいつもデュオを優しく包み込んでくれた。
ヒイロが好きだと言ってくれたとき本当にうれしかったとデュオは考えていると、自然と涙がでてきてヒイロを起こしてしまった。

「デュオ・・・・?泣いているのか?」

「っ・・・ヒイロが俺を愛しててくれたんたせ・・・・。すごくうれしかったんだ・・・・。でも、今ヒイロは居なくて代わりにお前がいるんだ・・・。ずっと、俺の傍に居てくれるか?」

「ずっと一緒に居る。これはヒイロ・ユイの遺伝子だからじゃなくて俺自身の考えだ。」

「うん・・・。俺もお前を受け入れる・・・・。時間かかるかもしれないぜ?いいのか?」

「ああ、かまわない。俺が目の前に居るのがいやなら俺を殺せばいい。お前のある動作で俺の脳にヒイロ・ユイが埋めた小型爆弾が作動するようになっている」

「どういう動作・・・・?」

ヒイロはふっと優しく笑って言った。

「それを言えばお前は極力しないようにするだろ?トップシ−クレットだ」

そして、二人はゆっくりとキスを交わした。
次の瞬間本当に小さなカチッと言う音と共にヒイロの頭は弾きとんだ。
デュオは目を大きく開けて白い肌を真っ赤に染めながら一人泣いた。

「やっぱり、ヒイロは俺の事嫌いだったんだ・・・・。」

『違ウ、愛シテイルカラ誰ニモ奪ワレタクナインダ。ソウ、タトエ自分ノクロ−ンデモ』

ヒイロのたたき込んだパスワ−ドは“キス”デュオがクロ−ンにキスしたときにだけ働く。

そして、デュオも長年使っていなかった銃を枕元から取り出してこめかみに当てた。

「バイバイ。ヒイロ」

そして翌日高級マンションの最上階から首のない男の死体とこめかみを打ち抜いた男の死体が管理人によって発見された。




後書き。
ちょうど24日の夜に送らせていただきます〜。
蓮上さん!!
ず−−−−−−−−っと前に勝手に魁が「クリスマスに何か送ります−」と言った品です。
そう、死にネタ。
っていうか、マンションの管理人さん大迷惑!!
自分とこのマンション。しかも一番良い部屋で自殺されちゃたまりませんよね・・・・。
しかも、血まみれ・・・・。
よく分かりませんが、これを人様に捧げます・・・・。
え?いらないって・・・・?そんなこと言わずに−−。


魁さん、どうもありがとうございました。
ちゃんと24日のクリスマスイブにいただいていたというのに、蓮上の諸事情のせいでこんなにもクリスマスからはずれたUPとなってしまいまして、大変もうしわけございませんでした。