富山市民プラザ2F ギャラリーA
1996, 1月14日

正月気分が残るなか、華道展で踊るのは身が引き締まる気持ちでした。広いホールの中央に四角く閉じられた鉄さくの骨組みに、大きく生けた木瓜(ぼけ)の赤い花ばなが清楚な空間を作り出していました。私達はこの正方形の木瓜と関わって踊るわけですが、ぐるりと囲んだ白い壁にも室内を飾るように鉄の断片と木瓜一枝が生けられていました。
無料の2 回公演でしたが、マチネーの時、人が多くて四方の壁を埋めてしまいました。登場してから観客に対して、方向性を与えようと考えていましたが、近ずいても思いのほか移動せず、逆に四方から見つめられる事になりました。私達にとって計算外で、四方に気をくばる事によって二人の動きがずれだし、キッカケをはずす事になってしまい、呼吸の合わない舞台になってしまいました。2 回目は一方の壁を背景にするために、事前に観客に空けてもらいました。やっと、呼吸を合わせる事ができました。

舞台の本番というのは観客の真剣なまなざしに伴い、舞踏手にとっても、とても緊張が高まっていきます。しかし、バランス良い緊張感は決められた動きの上に、新しいインスピレーションを生み出すものです。それが泉のように湧き出てくると舞踏家にとってこの上もない喜びです。
このときの新しい発見、木瓜展での出会いは鉄柵の上に登った時に現われました。本来は展示物は静止物で、空間を飾って位置しています。私が不安定な鉄柵に手をかけて登ろうとした時、鉄柵が動き、生けられて静止していた木瓜の木々と花々がサワサワと揺れたのです。この時私は木瓜に出会い、その瞬間「木瓜をざわめかせる」というインスピレーションが湧き上がりました。鉄柵の上に立ち、足元をゆすりました。身近かな木瓜の枝からザワザワとゆれた動きがひろがっていきます。
ー古い華道の世界の生けられた花を動かすー これだけで舞踏家・山本萌と草月流・岡崎忍との出会いがあったと言えると思います。立って見てくださった観客に感謝いたします。
( 文章: 山本萌 写真: 菊 昌治 )
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