センチネルリンパ節生検とは?

癌のもっとも近くにあるリンパ管に入った癌細胞が最初に流れ着くリンパ節のことをセンチネルリンパ節といいます。このセンチネルリンパ節を見つけ出して摘出することをセンチネルリンパ節生検といいます。このリンパ節に癌の転移が無ければ、その癌にリンパ節転移はないことがわかります。
現在当科では前立腺癌で手術を受ける方だけを対象に行っています。

リンパ節転移とは?
リンパの流れは体中いたるところにあり、もともと身体を外敵(細菌など)から守る役割があります。癌はこのリンパの流れに逆らって進展しようとする性質がありますが、これをリンパ節転移といいます。
センチネルリンパ節とは?
センチネル』とは、日本語では『見張り』や『歩哨』と訳されます。センチネルリンパ節は、癌がリンパ節に転移するのを見張っているリンパ節という意味になります。上図の紫色で示されるセンチネルリンパ節は、癌組織から最も早くリンパ節が流れ着くところであり、つまり一番最初にリンパ節転移が起こりうるリンパ節ということになります。あらかじめこのリンパ節(見張りリンパ節=センチネルリンパ節)が分かっていれば、手術時にこのリンパ節だけを取り出し転移がないか手術中に調べることが出来ます(術中迅速病理検査)。センチネルリンパ節に転移がなければ、他のリンパ節にも転移がないということが分かり、癌の手術で通常行われるリンパ郭清(周囲のリンパ節を根こそぎ取り除く)は不要になります。

【センチネルリンパ節のコンピューター合成写真

センチネルリンパ節を見つける方法
手術当日朝8時半に、核医学科外来で前立腺に少量の診断薬(アイソトープ)を注射します。診断薬は肝臓の核医学検査で通常行われるものを少量使用するだけであり安全です。午前11時30分に再度核医学検査室で下腹部の撮影をします。30分ほどでコンピューター処理され左図のような写真ができあがり、午後開始の手術室に運ばれます。この例では、右の外腸骨動脈という血管の近くにセンチネルリンパ節が1個あることが分かります。

センチネルリンパ節の摘出
手術中はガンマプローブという特殊な器具を用い、あらかじめ写真で予想される部位をさらに詳しく調べてセンチネルリンパ節を摘出します。右図のように、体外でもう一度センチネルリンパ節であることを確認後、術中迅速病理検査に提出します。約30分で結果が判明します。

センチネルリンパ節生検のメリット

1.

リンパ節転移診断がより正確になります。

2.

センチネルリンパ節に転移がなければリンパ郭清が省略できます。

3.

リンパ郭清省略により手術時間短縮と術後の足のむくみ等の副作用が軽減します。

4.

センチネルリンパ節に転移があればリンパ郭清を通常より拡大し、より根治性の高い手術が可能になります。

センチネルリンパ節生検を受けるには?

1. 保険適応はありませんので、当院倫理委員会で承認を得て実施しています。希望される方は実施承諾書に署名が必要です。
2. 薬剤費とフィルム代に数千円必要ですが、現在病院負担ですので新たな費用は発生しません。

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