龜鳴屋 霧の彼方の続刊予定
『根津權現前より−藤澤清造随筆集−
 
西村 賢太 編
『藤澤清造貧困小説集』に続く二匹目のドジョウをねらった訳では決してありません。清造は随筆も滅法面白い。
生まれ故郷の話、関東大震災の傑作ルポ、女性観、結婚観、演劇談義、役者咄、同時代の文学者像、どれもこれも興味津々の内容、話柄であります。近日刊行。

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「貧故の冤罪
」 挿絵
    編集に際して             西村 賢太

随筆、感想の類が、その作家を掘り下げて知る上で好個の手引きになるとのことは、決り文句だが、確かに事実であろう。なおも蛇足で申し上げるなら清造の場合も同様に、芥川が“ヘンな芸術主義者”、菊池寛が“旧文人気質”、久保田万太郎が“正義派”と評したその素顔、ときには憤怒に燃え、ときには困窮を連綿と訴える、独自の「清造節」は、やはりそれら随筆類に、より生(き)に近い状態であらわれている。
私自身、気がつけばどうも性格破産者として四面楚歌みたいな態にあって、とても他人のことをとやかく言えはしないのだが、その立場から眺めても清造と云う男、なかなかに扱いにくい、どうにも困った人種ではあったろう。しかしその底には、一点、誠実さを持っていた人物である。
この度の『随筆集』は、百五十篇余りの中からの精選になるが、良くも悪くもそんな清造的な面がよりにじみ出ている作、ある意味暑っ苦しいほどの正義派な清造節が炸裂しているものを、特に意識して選んでみた。
表題とする一篇を選ぶに際しては、図らずも龜鳴屋主人との意見が瞬間的に一致した。その直後、事情が重なり住所を転ずる破目になったが、これまで清造がらみで敬して遠去けていた根津でヤケ気味に部屋を探したところ、一発目で出会ったのが清造が死ぬ間際、最後に住んだ下宿の全くの跡地だった。
根津権現裏のその地にて、本書をも編ませて頂けるこの巡り合わせを必然のことと信じ、由縁といわくと共存しつつ、発刊への一助を目指したい。
                    H14.12.28
『朝山蜻一未刊行作品集』(仮題)
『白昼艶夢』や『真夜中に唄う島』で甦った異色ミステリー作家の未発表及び単行本未収録作品を集成。内容未定。
『岡本喜八お流れシナリオ集』

  
龜鳴屋第3冊目として予告しておりましたが、のびのびになっていて本当に出るのかと怪しまれていた方もおられると思います。編集作業はちゃんと進めており、目下カンフーアクションもの、戦争もの、各一作ずつ手元にいただいております。これに、人気作家Y.Fの原作をシナリオ化した目玉作品をいただく予定だったのですが、遺作のつもりで撮った「助太刀屋助六」に続き、遺作第2弾のSFコメディのメガホンを取ることが最近決定。それに専念したいという監督の意向で、当方、作品完成まで待機と相成りました。
映画共々気長にお待ちいただければと思います。
(写真は本書収録予定のシナリオ2作品)


霧の彼方にかすかにかすむあれやこれや龜鳴屋の本の影、皆様の前にうまく姿を現しましたらお慰み。



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