2001ミステリ感想(12月)


12月
「赤死病の館の殺人」(芦辺拓)4つの古き良き香りのする本格探偵小説。七色の部屋のある館での殺人、道化師による密室殺人、監視下の密室殺人などなど。
芦辺さんとは相性合わないのかも…。どれもコチコチの本格ミステリなのですが、今いちすっきりしません。「密室の鬼」のロボットの使い方には失望しました。カーの「三つの棺」のようにきちんとあらためをしたかったのでしょうが…
「花の下にて春死なむ」(北森鴻)お勧め!急死した俳句仲間の過去を調べる内に意外な過去が蘇る。
香菜里屋のマスターが快刀乱麻のごとく推理する連作長編。意外な結末に落ち着く表題作、感動的な「終のすみか」、北森版「九マイルは遠すぎる」の「七皿は多すぎる」等々、純粋な推理が楽しめて良かった。
「忍法相伝73」(山田風太郎)サラリーマンが先祖の忍法の巻物を手に入れて現代に忍法を蘇らすが、その忍法はどれもとんでもないものばかりで、とんでもないことばかりが起こるのだった…
印刷物を白紙にする忍術、男女入れ替えの忍術、思っていることと逆のことを言ってしまう忍法などなど奇想天外な忍法が現代に蘇り、あっけにとられます。途中男女のジェンダーについて考えさせられる部分が多かったです。しかしラストは、うーむ、絶句。
「人狼城の恐怖第1章」(二階堂黎人)ドイツとフランスの国境に立つ人狼城に招待された人々が次々と殺されていく。密室で殺される人、幽霊に殺される人など謎と怪奇に彩られた殺人の結末は…
全四章中第一章なので、起というべき作品なのでしょうが、この結末で最後どういう風に決着がつくのかとても興味深いです。しかし長い…
「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(ローリング)お勧め!ホグワーツのどこかにあるといわれる秘密の部屋が開かれた。生徒達が何者かの手によって次々と犠牲にあう。そしてハーマイオニーも…
ってミステリじゃん。犯人探しと意外な真相。面白すぎます。ハリー・ポッターの勇気と力に感動しました。
「鬼のすべて」(鯨統一郎)公園の時計から現れた生首は鬼に見立てられていた。その友達の刑事は元刑事と協力して事件に取り組む。
鬼の解釈をめぐって鯨さんなりの推理がされます。警察の人間関係がドロドロしていてミスディレクションになっていたりして。鬼の解放の方法が良いです。
「鏡の中の日曜日」(殊能将之)お勧め!梵貝荘で起きた殺人事件。仕掛けに満ちたミステリ。あの探偵最後の事件…
前作「黒い仏」はとんでもない作品でしたが、これはそこまでいきません。しかしp68で絶句することまちがいなしです。水城の解決も凝っていますが、真相はもっとすごかったです。
「悔恨の日」(デクスター)一年前に起こった未解決の看護婦殺しを調査するようにモース警部は命令された。しかしモースは乗り気ではなかった…
こういう名探偵の最後の事件もせつなくていいかもしれません。最後は泣けるかも。事件自体は単純だが、複雑な人間関係からなかなか真相が見えてきません。
「名探偵は、ここにいる」(太田忠司、鯨統一郎、西澤保彦、愛川晶)狩野俊介、安楽椅子探偵、根津愛(の父親)と名探偵が事件を解決する。
鯨さんの安楽椅子探偵は、シリーズ化が楽しみな探偵です。4つのミステリの中で買った文庫本から過去を思い返しながら推理していく西澤さんの「時計しかけの小鳥」が傑出しています。

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