2001ミステリ感想(6・7月)


7月
棺の中の死体(ロースン)大富豪が殺害されたが、犯人が出入りすることの出来ない密室状態。何度も死んでは生き返る男、そして幽霊の謎を奇術師マリーンが見事に解決します。
ミスディレクションがきいていて、どんでん返しの連続で、なかなか真相に到達できません。機械仕掛けではない心理的な密室なので、とてもすっきりした解決です。
最後の刑事(ラヴゼイ)
お勧め!
コンピュータなど最先端の技術を嫌うまさに「最後の」刑事が湖から発見された女の全裸死体をめぐる殺人事件に取り組む。
過去を題材にミステリを書いてきたラヴゼイが現代のミステリを書いたのですが、主人公のピーター・ダイアモンドは昔気質の刑事です。途中挿入される2つの長い陳述を経て、話は意外な展開を見せます。ダイアモンドがとても魅力的で、次の作品も読みたくなります。
動かぬ証拠(蘇部健一)完全犯罪のはずが、最後の一枚のイラストで崩れ去るというなかなか凝ったミステリ。
「6枚のとんかつ」でバカミス史上に名前を残す蘇部健一の新作。アイディア的に面白いが、推理クイズの域を出ないかも。なぜか六本指の男が出ている「宿敵」はオチがよくわかりません。「変化する証拠」にしても無理があるような…
ハイパーハイブリッドオーガニゼーション01-01(高畑京一郎)
お勧め!
突然現れた黒い覆面集団とガーディアンの戦いに巻き込まれ、恋人を殺された山口貴久は復讐に立ち上がる。
これはまさに「改造人間」、仮面ライダーの世界ですね。藤岡(弘・本郷)武士、佐々木(剛)、緑川、速水(亮・神)敬介、城南大学と明らかに意識的に仮面ライダーに関わる語が用いられています。しかし本作はプロローグにしかすぎず、この続きが早く読みたいです。
硝子細工のマトリーシカ(黒田研二)「完全なる虚構」と「不完全な虚構」。生放送ドラマ中に多発する事故、そして現実の事故・自殺。これらがロシアの人形マトリーシカのように入れ子式で話がすすむ。
というわけで、発想は面白いのですが、先が読めてしまうのが残念。またもっと別の告発方法がなかったのか、不思議です。しかし完璧にアンフェアでしょう。
フリッカー式(佐藤友哉)作者は戦慄の二十歳。妹を殺された僕が犯人の娘達を監禁する。それとは別に語られる77人の少女殺人犯。この二つの話が絡まる時、一体何が?
うーん、これはダメです。どうしてこういう行動をとるのか、77人も殺して捕まらない犯人、などなどとても容認できない内容です。メフィスト賞はかなり地雷が多いですね。
六色金神殺人事件(藤岡真)青森の津本で行われている「六色金神祭」。それにたまたま参加することになった直美は不可解な事件に巻き込まれていく。
いきなり空中を飛んで壁にめり込む死体や、天高くから放り落とされた死体、六色金神伝記に従って殺されていく人々には驚かされます。そして終了まぎわに開かされる事実。かなり驚かされました。
十三角関係(山田風太郎)
お勧め!
東京の遊郭で「恋ぐるま」の女主人がバラバラ死体にされて風車にくくりつけられていた。飲んべえの医者荊木歓喜が事件に乗り出すと様々な人間関係が明らかになってきた。
女主人は殺されているのですが、いろいろな証言を聞いていくうちに彼女のことが浮き彫りになり、とても印象的な被害者いえます。たくさんの容疑者、そして意外な真相。いやあ、山風のミステリは面白いです。
ミステリオペラ(山田正紀)「宿命城」を舞台に行われる不可能状況での殺人、巨人伝説、オペラ「魔笛」の陰謀、過去と現在が入り乱れ、ミステリと現実が入り乱れます。
この大長編をなんとか読み終えた、その満足感だけで、内容はどうなんでしょうか…同じような話が繰り返し繰り返し出てきて、結局なんだったのか、よくわかりませんでした。
6月
超・殺人事件(東野圭吾)推理作家、編集者、書評家を笑い飛ばす怪作。高齢になった推理作家の書くミステリを描く「超高齢化社会殺人事件」、意味なくどんどん長くしていく風刺のきいた「超長編小説殺人事件」などなど読んでいると、もしかして推理作家ってこんなのかなと思ってしまったりして、なかなか楽しいです。
ST警視庁科学特捜班(今野敏)
お勧め!
警視庁科学特捜班が連続猟奇殺人事件に挑む。そのメンバーは、はみ出し者で一癖ある者ばかりだった。
一匹狼なのに人が寄ってくるリーダー、現場でお経を上げる坊主、色っぽいのに…な女性、などなど5人のどのキャラも立っていて、その後の話を読むのが楽しみです。
月長石の魔犬(秋月涼介)頭を切断されて犬の死体を縫いつけられた死体。
メフィスト賞ですが、これは…続編が作られること間違いないでしょうが、ダメです。どうして犬の首を縫いつけるのか、その必然性が全く理解できませんでした。

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