2002ミステリ感想(1月・2月)


2月
「スティームタイガーの死走」(霞流一)玩具メーカーが作った機関車、そのお披露目の前に機関士は謎の失踪をとげ、当日列車はハイジャックされ、コンパーチブルからはズルムケの死体が現れ、やがて機関車までもが消失する。
このミスで4位とは、すごい事です。次から次へと事件がノントップで起こるのであれよあれよといううちに読んでいって、あっという結末に。う〜ん、そうくるか、パカミス王。このラストはすごいと思うけど、唐突?
「死の命題」(門前典之)「雪に閉ざされた山荘に集った六人の男女。脱出も侵入も不可能な完全密室状態」「一人が殺され、つづいて二人目。繰り返される殺人。…そして、誰もいなくなった」
冒頭に掲げられた「読者への挑戦状」。しかし読みにくいのでなかなか読み切れませんでしたが、真相はなかなかいい感じです。島田荘司に書いてもらったら大傑作になったかも。途中アンフェアな記述があるような…
「夏の夜会」(西澤保彦)
お勧め!
同級生の結婚式の後の飲み会で小学生の時に死んだ女教師のことで話が盛り上がる。しかし記憶は曖昧で…
曖昧な記憶の中から二転三転して真相が浮かび上がってくるのはさすがです。人間の記憶なんて本当にどこまで信頼できるのか考えさせられました。
「名探偵はもういない」(霧舎巧)雪で閉ざされたペンションでの殺人事件。事件を解決するのは「あの人」だった。
何を書いてもネタばれになってしまいます。発想は面白いのですが。これはカケルの書いたパロディミステリと考えればそれでいいんでしょうが、そうではないようです。となるとカケルシリーズも…となってしまって。考え出すと頭が痛くなります。
「牙王城の殺劇」(霞流一)「天守閣にゾンビの群れ、密室殺人に怪物ワニ、切断された死体、それに、UFOやら、籠を担ぐ騎士の亡霊がタイムスリップか」
バカミスの帝王霞流一のライトノベルミステリ。次々と意外な出来事が起こり、どんどん広げられていく大風呂敷が最終的に収束されます。続編が楽しみです。
「女囮捜査官5味覚」(山田正紀)ワインを持った女が殺された。おとり捜査が行われたが、特被部の刑事が殺され、特被部の生みの親の遠藤まで失踪する。
全五巻という連作ミステリの最終巻。五巻から「五感」を思い浮かべ、触・視・聴・嗅・味のタイトルをつけたのではないかと思いました。それほど五巻で一つの長編という感じがします。特被部の存在意味がわかり、予想だにしなかった結末になだれこみ、読後しばらく放心しました。「ただ一人の師匠」山風を彷彿させるこの連作は、お勧めです。
「人魚とミノタウロス」(氷川透)高校時代に影響を受けた医者の親友に会いに行くと病院で生きたまま焼け死んだ死体が。死体は親友の可能性が高い。探偵は読者に挑戦状を叩きつけて論理的に犯人を推理する
純粋に論理的に推理して犯人を確定します。ただゲーデル問題?にこだわりすぎかも。そのため登場人物が自分が小説中の人物であることを自覚している記述が出てきて驚かされます。純粋に論理的に解決するためには、全ての手かがりに嘘偽りがあってはいけないので完全なフィクションにする必要があるんだそうですが…
「マリオネット症候群」(乾くるみ)朝目覚めたら自分の身体の中に憧れの先輩の意識が入っていて勝手に身体を動かす。先輩は昨夜殺されていたのだ。
予想外の展開でした。ライトノベル系SFであっという間に読めるし、Jと違って腹も立ちませんでした(笑)。
「この闇と光」(服部まゆみ)
お勧め!
閉じこめられた「王と盲目の王女と侍女」の物語。めくるめく闇と光の世界。
多くは語れない意外な小説でした。美しい世界は闇の中にあるのかも…。あと単行本の装丁が豪華です。
「六枚のとんかつ」(蘇部健一)「ノベルス版が出たとき、バカだ、ゴミだ(中略)たくさんのご批判を頂戴した。(前略)四年ぶりに読み返してみると、たしかにこれはゴミだった」(文庫版あとがき)
ノベルス版を買った時、「ガッツ石松」で放り出してしまった「六とん」のディレクターズ・カット版。文庫版あとがきと解説が一番面白かったような…文章はともかく「しおかぜ17号四十九分の壁」と「六枚のとんかつ」は読んでもいいかも
「女囮捜査官4嗅覚」(山田正紀)女囮捜査官も第四弾。連続放火事件の警戒中に見つかった死体。そのそばにはユカちゃん人形があり、死体と同じ格好をしていた。やがて人形連続事件となって…
見立て殺人の動機が面白いし、死体現場の共通点も意表をつきます。サンスクリーンの謎もいいですね。あと相棒の袴田の過去が明らかになりますが、最後まで意識不明という…
「誘拐ラプソディ」(荻原浩)
お勧め!
工務店の親方を殴って金と車を奪った前科持ちの伊達秀吉。自殺をしようとした時に転がり込んできた男の子を誘拐することにしたが…
面白すぎです。「ノンストップユーモアクライムストーリー」です。秀吉が最初自殺しようといろいろするシーンから笑いすぎて苦しくなりました。子どもの親(笑)から警察から香港マフィアまで入り乱れて誘拐喜劇が繰り広げられます。最後はちょっとほろっとして、これはめちゃくちゃお勧めです。
「女囮捜査官3聴覚」(山田正紀)
お勧め!
赤ん坊が誘拐され、女囮捜査官の志穂が身代金受け渡し役に選ばれた。志穂が選ばれるにいたる話と誘拐とが交差して語られる。
身代金の要求の仕方、そして意外な動機等これはすごいです。誘拐をテーマにトリッキーなミステリになっています。
「桜姫」(近藤史恵)
お勧め!
十五年前に兄を殺したかも知れない…笙子は若手歌舞伎役者と事件を探るうちに恋に落ちる。
歌舞伎ミステリですが、歌舞伎を知らなくても十分に楽しめます。兄の死の真相は、十分意外でした。幼い役者の死も意外性に満ちています。
1月
「女囮捜査官2視覚」(山田正紀)首都高2つのバラバラ死体がばらまかれた。被害者に共通したクラブに女囮捜査官は潜入するが…
赤い目の女には唸りました。○○○○○も予想外でした。ただ解説の不可能犯罪トリックの意味がわかりません…
「今日を忘れた明日の僕へ」(黒田研二)事故により3月31日以前の記憶がない僕。頼りは書き留められた日記。僕は人を殺したのだろうか。
記憶を蓄積できないという設定が良いです。日記が真実かどうかわからず、自分の存在があやうやというのはなかなかスリリングでした。日記を元にきちんと推理するミステリになっていました。
「女囮捜査官1触覚」(山田正紀)駅の女子トイレで殺害された女性。女囮捜査官が囮となるが、現場の刑事たちの抵抗にあって…
すらすら読めました。全五巻からなる女囮捜査官を紹介的する第一巻なのですが、二転三転する展開が面白かったです。
「沈黙者」(折原一)家族惨殺事件と自分の身元を明かさない沈黙者。その関係は…
折原一の叙述トリック物ですが、沈黙者の正体が誰なのかが興味の焦点になります。しかしそこまで沈黙を守るものなのでしょうか…
「捻れ屋敷の利鈍」(森博嗣)メビウスの輪の構造の捻れ屋敷の完全な密室の中で人が殺された。西之園萌絵が密室の謎を解く。密室本第一弾。
密かにS&MもVも持っているけど読んでいないのですが、二つの登場人物が交錯するこれは面白かったです。メビウスの輪の構造の建物見てみたいと思いました。もう一つの密室も驚愕のトリックでした…
「両性具有迷路」(西澤保彦)SF官能小説家森奈津子が宇宙人のミスで特殊な身体にさせられる。コンビニにいた他の女性も同様に。やがてそれが連続女性殺人事件とむすびついて…
うーん、何なんでしょうか。SF官能ミステリとでもいうのか…これはちょっと人には勧められませんね(笑)
「噂」(荻原浩)
お勧め!
「十二時にレインマンにあうと女の子は殺されて足首を切られる。ただしある香水をつけていたら大丈夫」という噂が流れる中女子高生が足首を切られて殺される…
驚愕の最終章というので買いました。確かにラスト一文でのどんでん返しは驚きました。ただ検死でばれないのかと不思議に思いましたが。あと途中アンフェアなのではないのかな?でもベテラン刑事と美人警部補のチームワークはよく、またいろいろと笑えるシーンがあって楽しめました。
「金色のゆりかご」(北川歩美)
お勧め!
早期幼児教育ならぬ赤ん坊から天才を生み出そうというシステムがある。それに関わる九年前の事件。さらには殺人事件も起こって…
どんでん返しの連続で面白かったです。最後の落ち着き方も意外でした。天才と狂人は紙一重なんですね。
「人狼城の恐怖第四部」(二階堂黎人)二階堂蘭子によって人狼城殺人事件の全ての謎が解かれる。さらには「ハーメルンの笛」の謎までも。
やっと読み終わった、というのが正直な感想です。人狼城に関する大がかりなトリックは驚きでした。それだけで四千枚を読んだ価値がありました。ただ殺人の動機が今一つ納得できなかったですが。ラストが意味深で、蘭子の行方も気になります。
「人狼城の恐怖第三部」(二階堂黎人)新聞の記事から人狼城での事件に興味を持った二階堂蘭子はフランスとドイツに行く。人狼城意外にも不審な死がいくつかあって…
二階堂蘭子がやっと登場。素晴らしい推理力を見せます。でもまだ人狼城に着いていないんだよね。
「人狼城の恐怖第二部」(二階堂黎人)人狼城のフランス側でも正体客が次々と殺されていく。人狼が乗り移っているのは誰なのか?
「ヒドゥン」のような話で相変わらず派手に人が死んでいきます。ちゃんと収拾着くのかなと心配しながらも廊下消失トリックはあまりにも…

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