2003ミステリ感想(7月・8月)
8月
「阿弥陀ヶ滝の雪密室」(黒田研二)新興宗教の教祖を切断して殺し富山県の本部に捨てたはずなのに、上半身は三重県で、下半身は富山県で発見された。教祖は不死身なのか。
タイトルの雪密室が最後に出てくる構成が面白かったです。ミスディレクションも上手でした。Jの謎もわかってきましたが、このままどんどんシリーズが増えていくのでしょうか。
「しずるさんと偏屈な死者たち」(上遠野浩平)入院患者の美少女しずるさんが、病院から出ることもなく「唐傘小僧のようになった死体」「宇宙人に心臓をえぐられた死体」等の難事件を解決する。
ベッドディティクティブですが、病床の美少女というのがみそかも。不可解な四つの事件は、上遠野さん、健闘しています。ただ密室が…だったり、脱出が…だったりするのは…。
「神のロジック人間のマジック」(西澤保彦)荒野の中にあるとされる学校に集められた六人の生徒たち。犯人当ての実習がある学校の真の目的は?転入生が来た時に目覚める邪悪な物とは…
うーむ、少しかぶってます。某作を先に読んだので衝撃度は落ちました。同じようなコトを考える人がいるんですね。ただこっちは結構SFチックでさすが西澤さんと思ってしまいました。「詩人」の仮説が真相かと思いましたが…
「陰摩羅鬼の瑕」(京極夏彦) 鳥の剥製が集められた館「鳥の城」で婚礼の次の朝に四回も起きた花嫁殺し。誰が何のために殺したのか。失明した探偵と壊れた小説家が館に招待されて…
待たされ続けた京極堂の新作です。ザッピングのように同じ場面を異なった人の視点で描くのが面白い試みです。犯人はわかりますが、なぜというのがなかなかわからなかったです。榎さん、壊れすぎ。○○の登場には驚きました。今までの中で一番読みやすかったです。もう一度読み直さなきゃ。
「ウィッチフォード毒殺事件」(バークリー)ウィッチフォードで妻が夫に砒素を与えて毒殺したとされる事件。シェリンガムは彼女が無罪だと断定し、現地に乗り込み、調査を始める。
相変わらずいくつもの推理を組み立てては崩すのが醍醐味です。最後の結論はなかなか意外性に富んでいます。やはりバークリーは面白いです。しかし「お仕置き」は…
「頭蓋骨の中の楽園」(浦賀和宏)首なし死体の女子大生。彼女の死はミステリで予告されていた。彼女の兄も殺されていたが、事件は未解決だった。さらに首なし死体は増えていく。
小説家に関するくだりが作者とオーバーラップしてどこまでが本当かとか思ってしまいました。前二作の内容を忘れていて結末がわかりにくかったです。安藤が名探偵ぶりを発揮する途中まで面白かったんだけど。
「暗い迷宮」(ラヴゼイ)記憶喪失の女性が自分のことを調べるうちに行方不明になる。一方ダイアモンドは飛び降り死体と農夫の自殺死体に疑問を感じる。
いくつもの事件が平行して捜査され、それが結びついてくのが見事です。ダイアモンドの名探偵ぶりもいいですが、大柄で万引き癖があるが賢いエイダがいい味出しています。
7月
「OZの迷宮」(柄刀一)密室で矢をさされて死んだ男、絵の中で溺れ死んだ男、上半身が人間で下半身が馬の白骨死体。そして最後に明らかになる事実。
短編をまとめて長編にしています。途中○○が犯人で、××が死んでというが、心地悪いです。OZって何だろうと考えながら読んでいましたが、そういうことでしたか。しかしだからどうしたと思ったりして。「絵の中で溺れた男」がベストでした。
「屋上物語」(北森鴻)
お勧め!
デパートの屋上の人気のうどん店。さくら婆ァがデパートの屋上で起こる様々な事件を解決する。
人間以外の視点で書かれているのが目新しいです。さくら婆ァの名探偵ぶりも小気味よいです。ただ寂しい話が多いかも。連作短編はやはり北森さん。
「ヒトクイマジカル」(西尾維新)死なない研究のモニターをすることになったいーちゃん。アパートに連れてこられた行き倒れの美少女はマントの下に拘束着を身につけていた…
○○が死んだのには驚きました。キャラ萌のラノベ化していると入れていますが、トリックは面白いです。「ネコソギラジカル」楽しみです。
「捕虜収容所の死」(ギルバート)
お勧め!
第二次大戦下イタリアの捕虜収容所の脱出用トンネルでスパイが死んだ。しかしそれは不可能なはずだったのだが…
戦争物とミステリ物の融合。サスペンスあふれ、しかも伏線の張りめぐらされた本格ミステリです。「大脱走」を見たくなりました。
「死は招く」(アルテ)内側から鍵のかかった部屋でミステリ作家が煮えたぎる鍋に顔と手を突っ込んで死んでいた。それは構想中のミステリと同じ状況だった。
「第四の扉」がすごすぎたので、期待しすぎたかも。設定がすごいのでどういう決着をつけるのかが興味がありましたが。トリックは単純だけどそこまで計画するかという感じです。音は島荘かと思いました。アンフェアではないのかと一瞬思いましたが…
「タイムスリップ明治維新」(鯨統一郎)女子高生が1860年にタイムスリップ。時代を変えようとする敵に対し、現代に戻るために彼女は時代を正しく進めようとする。明治維新は起こるのか。
「わたしが書いたタイムトリップものの一、二を争う」という作者の言葉が一番笑えました。だって二作しか書いてないし。前作は良かったけど、これはいまいちかな。先が読めるし。

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