2003ミステリ感想(11月・12月)
12月
「月明かりの闇」(カー)
お勧め!
百年前に起こった足跡のない状況での殺人。そして現代にも起こった足跡のない状況での殺人。フェル博士が限定された人間関係の中から真実を探し出す。
トリックは今いちだけど、ダブルミーニングやロマンス、そしてはりめぐされた伏線など、さすがカーです。隠されたある秘密に関してあっと驚かされました。
「サイコトパス」(山田正紀)車でトンネルから出たら首を切られていた運転手、意味のない密室。勝手に送られるミステリの原稿。世界がこわれていく。
うーん、むずかしいです。「近年これにまさる作品はない」と自画自賛されているのには驚きました。中途半端な気がしますが。
「コッペリア」(加納朋子)生きているような人形に恋をした男。そしてその人形とそっくりな女性に出会い…
加納朋子の初長編ということで期待しましたが、様々な人称で語られる人形に対する愛が描かれたこのミステリは途中ちょっとした驚きはありましたが、今ひとつでした。
「重力ピエロ」(伊坂幸太郎)連続放火事件の現場に残されたグラフィティアート。その意味を解読すれば事件は解決されるのか。父と兄と弟が事件解決に乗り出す。
「このミス」で3位になったのがすごいです。村上春樹の初期の作品を思い出すようなエピソードの積み重ねで、それらが伏線になって結末になだれ込みます。新感覚のミステリです。
「殺人の門」(東野圭吾)
お勧め!
不幸の手紙から始まる家庭崩壊。そうさせた憎らしい奴を殺したいが、どうしたら殺人の門をくぐることができるのだろうか。
「白夜行」の流れをくむ時の流れを感じさせる犯罪小説です。読みながら思わずおいおいまただまされるなよと主人公に言ってしまいました。
11月
「流れ星と遊んだころ」(連城三紀彦)芸能マネージャーが出会った美女。彼女との出会いが、もう一人の男との出会いを引き起す。スターを目指して始まる騙し騙されのドラマが繰り広げられる。
めまいがするほどのどんでん返しの連続でさすが連城三紀彦です。今まで読んできたことが逆転していくのはすごいです。
「火の鶏」(霞流一)火を吹きながら飛ぶ鶏の謎。そして白い羽で埋め尽くされた密室での殺人。さらにネギ畑に串刺しにされた死体。次々起こる奇抜な殺人に対するのは奇蹟鑑定人…
登場人物たちのはちゃはちゃぶりには唖然としますが、謎の解決には納得いきました。セリフで例の奴がありましたが、その内容ははあ?という感じでした。
「七月は織姫と彦星の交換殺人」(霧舎巧)目撃した飛び降り死体のそばにあった短冊。それは七夕に由来する殺人事件だった。
惰性で読んでいますが、あまり面白くないです。しおりにははっとしましたが。
「青空の卵」(坂木司)
お勧め!
引きこもりの鳥井。その観察力と推理力で事件を解決していく。事件の解決とともに鳥井の世界は広がっていくのだった。
作者の優しい視線が感じられて、とても感動します。いわゆる日常の謎ものですが、登場人物たちが大切に扱われていて素敵な話です。「春の子供」は感動で泣けました。

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