2004ミステリ感想(1月・2月)
2月
「零崎双識の人間試験」(西尾維新)零崎双識と出会った女子高生伊織は殺人鬼の本質に目覚めていく、のか…。
ミステリではないのだけれど(ミステリ的な場面もあるけど)、格闘技小説のようで面白いです。身体で戦うだけでなく、言葉による戦いも熾烈を極めています。ラストも突発的でいいかも。番外編だけど、正編が読みたいです。
「銀杏坂」(松尾由美)北陸の古都、香坂市で次々と起こる不思議な事件。幽霊、予知、生霊、超能力が事件にからみ、必ず二人の刑事が事件にかり出される。
まさに地元金沢を舞台にしているミステリなので、楽しめました。金沢は幽霊の似合う町かと言われたらそうでもないのですが、情感たっぷりに描かれていてうれしくなりました。不思議な現象はあるけれど、それがそのまま事件の解決にならないのが良いです。最後の二話が感動しました。
「二度のお別れ」(黒川博行)
お勧め!
銀行強盗事件が、一転誘拐事件になった。一億の身代金の争奪をめぐって犯人と警察の戦いが始まる。
なかなか緻密に考えられたミステリです。大阪弁が使われていてとてもコミカルですが、とてもトリッキーです。
「僕と先輩のマジカルライフ」(はやみねかおる)月1万円の学生寮、そこの住人は変わり者ばかりだった。新しい大学生生活はミステリアスな事件との遭遇だった。
長曽我部先輩の設定がもう少しわかりにくいのですが、霊力がある春奈と超真面目のぼくのコンビは楽しいです。ぼくが謎を解いてさらにもう一つの謎を先輩が解くという設定がいいです。カッパのカータンには大爆笑しました。
「幻夜」(東野圭吾)
お勧め!
「白夜行」の続編。阪神淡路大震災の後、伯父を殺した男と家族を亡くした女。二人は運命を切り開いていく。
新海美冬の悪女ぶりが強烈ですごいです。ここまで全てに対して権謀術数の限りを尽くして自分の運命を切り開いていくのには驚きを通り越して悲壮さを感じます。さらにいつ破綻するかということではらはらし通しでした。是非続編を期待したいです。
「夜想曲」(依井貴裕)同期会が開かれた山荘で三晩に渡って起きた連続殺人事件。真相は送られてきた原稿の中に隠されている。
読者への挑戦がまたくせ者で、解決はできるけれど…。しかしなかなかよく考えられていて驚かされました。ただ三晩連続の殺人はつらいかも。しかし依井さんの新作が待ち遠しいです。
「ジェシカが駆け抜けた七年間について」(歌野昌午)
お勧め!
過酷な女子マラソンの世界。マラソンの最中に監督が殺された。犯人は分身なのか。
やってくれた、という感じです。よく調べましたね、驚きです。途中の「ハラダアユミを名乗る女」は気の利いた中編のようで、さわやかでした。
「刹那の魔女の冒険」(関田涙)雪の別荘で移動した死体。文化祭のお化け屋敷で殺された死体。現実と虚構が入り交じり、二通りの読み方が選べる。
Bから読んだので本格ミステリとして読めましたが、Aから読むと驚きました。シリーズ物でこのような展開とはすごいかもしれません。お薦めはしませんが。
「七人の迷える騎士」(関田涙)白雪姫をモチーフに行われる密室の死。1年前の犯人の予告が実行されているのか。
意外だけどやはりアンフェアでしょう。そこまでいろんなトリックを擁して殺人を起こさなければならないのか、疑問です。ラストもすっきりしなくて…。
「九時から五時の男」(エリン)スーツ姿で9時から5時まで勤めるキースラー氏には、妻にも言えない秘密があった。いつものように仕事先に行くと彼は…(表題作)
10編の奇妙な味の短編が並んでいます。最後の「倅の質問」が一番痛烈なオチかたで、気に入りました。シンプルだけどブラックです。
1月
「シャッターアイランド」(ルヘイン)シャッター島に精神を病んだ犯罪者が集められている。その中の一人が謎のメッセージを残して行方不明に。
袋とじだったので、思わず買ってしまいました。名前から真相が途中でわかってしまいました。アンフェアだと思いますが、外国にも折原一みたいな小説があることに驚きました。(何冊かはあったけど)
「無法地帯」(大倉崇裕)
お勧め!
幻のプラモデル「ザニガリラー」を求めて怪獣好きのやくざと食玩コレクターの探偵とオタク青年が争奪戦を始める…
食玩とかフィギュアとかオタクな話で笑ってしまいました。3つの視点から話が進み、どたばたスプラップコメディが繰り広げられますが、その中にも殺人があり、伏線が張られていてちゃんとミステリしています。
「ヘビイチゴサナトリウム」(ほしおさなえ)中高一貫教育の学校の屋上から女子高生が墜死した。さらに国語の教師も墜死する。教師によって書かれた小説に謎が隠されていた…
視点が変わりすぎて少し読みづらかったです。不思議な味のミステリです。
「水晶のピラミッド」(島田荘司)人工的に作られた水晶のピラミッドとその横に立つ塔。塔の最上階の部屋で密室の中でみつかった死体。御手洗潔が不可能犯罪を解決する。
単行本を持っていてずっと読んでいなかったのですが、1100枚が一気に読めました。怪物、過去のエジプト、タイタニック、そして現在の密室殺人と様々な物がちりばめられ、全てが一つの真相に収束します。島田トリックの炸裂に笑いました。余韻のあるラストも良かったです。

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