第44回テーマ館「運命」



運命のいたずら しのす [2002/03/15 06:31:02]


広い公園の真ん中、白い雪の上に死体があった。
不思議なことに死体のまわりの雪には、
足跡はまったくなかった!
死体には打撲の跡が多数(頭部に強打の跡)有り、
胸にはナイフが刺さっていた。
しかし直接の死因は叩き付けられたことによるものだった?
現場付近には巨人が現れるという噂話があった(笑)。

その後調べにより、被害者は公園から3km離れた家に
住んでいたことが判明した。
妻を尋問するうちに、
妻は殺したことを自供した。
寝室にいた夫の頭を殴り殺したと。
しかしなぜ死体が公園にあったのか、不明だと言った。
「死体が歩いたんですか」

さらに尋問を続けると息子がナイフで殺したことを自供した。
しかしなぜ死体が公園にあったのか、不明だと言った。
「死体が失踪したんですか」

その後秘書を尋問すると
秘書は被害者をバルコニーから突き落として殺したことを
自供した。
しかしなぜ死体が公園にあったのか、不明だと言った。
「死体が疾走したんですか」

捜査陣は完全に混乱した。
このような異常な事態は初めてだったのだ。

そこでグリーン氏が登場する。
「人間がやったことです。解けない謎なんてないさ。
簡単なことだったんですよ。妻が被害者を殴った時、
被害者は一瞬呼吸停止したが、死んではいなかった。
息を吹き返したところに息子が来てナイフを刺した。
だがあまりにもきれいに刺したので、
出血が少なく、被害者は死ななかった。
苦しくて空気を吸いたくてバルコニーに行った被害者を
秘書が突き落とした。
しかし、秘書は高所恐怖症で下を見なかった。
下を見ていれば被害者がトラックの上に落ちたのを見たはずだったのです。
トラックは3km走り、そこで急ブレーキを踏んだ。
死体は飛んでいき、公園の木の枝にあたった。
その木の枝がバネのようにしなって、
死体は公園に叩き付けられたというわけです。
このようにして足跡のない雪の上に死体があるという
不可解な事件は完成しました。
巨人が現れるというのは、小さな子どもが大きな大人を
見た、ただそれだけのことだと思います」

これって、すっごい偶然の積み重ねじゃん。
偶然3人の人間が同時に殺人をしようと考え、
偶然2回も息を吹きかえし、
偶然死体を落とした下にトラックがあり(偶然加害者は高所恐怖症でー)、
偶然トラックの運転手は全く事態に気づかず
偶然急ブレーキで死体が飛び(再び偶然運転手は気づかず)、
偶然木の枝にぶつかってバネのようになり、
偶然足跡一つない雪の上に落ちた。
しかも巨人の噂だって?嘘くせー。

「…ぐう、ぜん?」僕は思わずつぶやいた。
「いえ、運命です。運命のいたずらです」
「さすが、グリーン氏、鮮やかな解決です」
おいおい、警察、納得するなー
「じゃあ、僕はこれで。アメリカに行くもので」
おいおい、探偵、アメリカに逃げるなー

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