第42回テーマ館「悪魔」



「悪魔の子守唄」 しのす [2001/11/06 06:26:32]


夜の闇に包まれた山村の元庄屋の家。
もじゃもじゃ頭に袴姿の探偵の金谷は
人形のように座布団に座っている老婆に
子守唄を唄うように頼んだ。

「ひとつ、火元を消し忘れたら
火事になって起きられぬ」老婆はくごもった声で唄い出した。
それはとても子守唄とは思えぬ陰惨なメロディーだった。
金谷は背筋に凍るものを感じながらも事件について話した。
「最初の犠牲者釜田由紀さんは、
火をつけられて殺されました」
「ふたつ、深い溝があり
そこに落ちたら起きられぬ」
「二人目の中林晴彦さんは溝に突き落とされて殺されました」
「みっつ、水に落ちたなら
息ができなく起きられぬ
・・・」
「三人目の久保田道元さんは溺死しました」
老婆が子守唄を唄い、探偵が唄と対応した事件を
告げた。そうしたことが続いて、やがて…

「・・・
ひゃくいち、尺八吹きすぎて
首を折ったら起きられぬ」
唄い終わった老婆は首を垂れて動かなくなった。
「高峰梅子さんはこのように子守唄を唄いすぎて
首を垂れて死んでいました」
金谷は老婆に向かって手を合わせた。
「こうして101人が殺されたのですが、
犯人はこの村に伝わる子守唄に見立てて
村人達を殺していったのです。
僕がもっと早くこの子守唄の存在に気が付いていたら
犠牲者は少なくてすんだのですが。
しかしとうとう犯人が判明しました。
犯人は、木田さん、あなたです」
「しょ、証拠があるのか」
「…だって村人で残っているのは、もうあなただけなんですよ。
そうなると犯人はあなたとなります」
「しまった。殺しすぎたか」と木田は叫ぶとぐっと舌を噛み切って死んだ。
「ひゃくに、百人殺した犯人は」木田の死を確認した金谷探偵は陰鬱に唄った。
「舌を噛み切り起きられぬ」

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