『テーマ館』 第13回テーマ「もしも・・・」



 「もしも小説がかけなくなったら」     しのす


  今回のテーマは「もしも」だった。
  「もしも」をテーマに小説を考えなければならない。
  まず考えたのは、殺人をからめた話だ。

  友人二人が居酒屋で話をしている。
  「もしも君が紀代乃の殺人犯だとしたらどうする」と一人が話し出し、
私はびっくりする。
二人と同じ大学のサークル仲間女の子が殺されたのだ。現場は彼女のア
パートで、時間は夜。
彼女のことを考えると不用心に戸を開けるような女の子ではなかった。
となると顔見知りの者の犯行と考えられる。
  で、二人はいろいろ話し合うのだが、書き方としては私が怪しいよう
に書いていく。
そして最後友人が私を犯人だと論理的に手がかりによって指摘する。気
まずい沈黙の中、テレビから犯人が捕まったというニュースが飛び込ん
でくる。

  しかし途中の、『論理的に手がかりによって犯人を指摘』というのは
むずかしい。
一応『書く機械』と言われている私だが、苦手な分野に入る。それでミ
ステリ好きというからあきれられる。
しかも、この話はありふれた物で新味はない。

  「しのす、まだ?」
  そう言われても困る。また別の話を考えないと・・・。
  「えっと、もう少し待ってください」

  次に考えたのは、「もしも、し、亀よ」というオチの話だったが、先
に言われてしまった・・・。
  「もしもコンピュータが存在しなかったら」という話も考えたが、そ
したら今の発展はなく、インターネットも便利な機械もすべて消えてし
まって・・・というオチも今一つだ。
  「もしもお前が俺だったらどうする?」という友達の問いに「すぐ自
殺するね。そんなんでよく生きてるな」という話も、くだらないし・・・。
  むむむ。そうだ、今の状況を「もしも小説を書けなくなったら」とい
うので書いてみてはどうだろうか?
小説でなくて、エッセイかな。面白いかも・・・

  「ユタカ、どうした、そんな怒った顔して」
  「だってお父さん、『しのす』がなかなか小説書いてくれなくて・・・」
  「ふむ。"Creating Instant NOvels System"
は『書く機械』としては古い型だからな」
  「遅いし、つまらないし・・・」
  「じゃあ、この広告の"Unbelievable Books
Instructing Kit"でも買うか」
  「うん『UBIK』は早くて独創的だから人気だよ。みんな持ってる
んだ」
  「そうするか。もしも小説をかけないのなら、小説作成ロボットはお
払い箱だ」

<12月05日(金)17時53分38秒>