「ネット作家の受難」



『「ひろしくん」
「わっ」
ぼくは後ろから声をかけられて、びっくりした。
こんなくらい夜道とあっては、しかたがないだろう。
・・・』

私の名前は、篠澄夫。とても有名なネット小説家である。
インターネット上で活躍しており、私のファンもかなり多い。
最近私が投稿しているのは『小説の匣』というホームページのテーマ
小説だった。
毎月テーマが決まっていて先月のテーマは『戦慄』。
忙しい私は月末投稿を目指して小説を書いた。
しかし。しかーし。コンピュータが投稿直前に突然沈黙した。
私は『戦慄』という名作をハードの中に残したまま、パソコンを修理
に出した。
修理からパソコンが戻ってきたのが、月初め。
私はこの名作を投稿できず、ショックに打ちひしがれた。
何万というファンの皆様にも申し訳ないことをしてしまった・・・

今月は『野望』というテーマだった。
私は忙しさからまた月末に書き始めた。
『「お前は特別な人間か?」
と、突然カール・サンダースの人形が話しかけてきた。
・・・』
これまた傑作が生まれた。今度こそファンに喜んでもらえることだろ
う。
しかし。しかーし。突如襲った39度の高熱と、ひっきりなしの激し
い咳。
私は仕事(小説以外の本職というか副職)も休んで3日3晩ベットで
横たわるだけだった。
熱が少しでも下がることを祈るだけだ・・・

そして。何とか熱はさがった。私はすぐに『小説の匣』につないだ。
が、しかし。しかーし。もうすでにテーマは更新されているではない
か・・・
テーマは『受難』だと〜ぉぉぉ。月が変わってまだ2日だろ〜。更新
が早いぞ・・・

私はついに悟った。私の素晴らしい小説をネットに載せるのを妨害し
ている奴がいる、と。
誰なんだ。お前は、いったい、誰なんだ・・・