『うっそー』


                by しのす

「次郎、お前にゲームポーイやる」
5人兄弟の一番上の小学3年の太郎は弟に言った。
太郎は小躍りして喜んだ。「ほんと!わーい」
「美樹、お前にはCDレコーダー、やるよ」
「お兄ちゃん、大好きっ」長女の美樹は太郎に抱きついた。
「三郎、お前にはどらえもん全巻な」
「わーい、どらえもんだぁ」
「公恵、お前にはこのミッキーの人形あげるよ」
「ミッキー、ミッキー」
4人の弟と妹たちは、兄を尊敬の眼差しで見上げていた。
「でも、どうしたの、お兄ちゃん。今日はクリスマスだっけ?」
太郎はにやりとすると茶の間にかかった日めくりカレンダーを指さ
した。
「今日は4月1日、エイプリルフールって言うんだ。嘘をついても
いい日なんだって。だから、今までのはみんな、嘘」
「う゛」
4人の弟と妹たちは、凍りついてしまった。
「ひっひっひ、だまされたっ」太郎は大笑いした。

「でも、兄ちゃん」と次郎がしばらくしてから言った。
「今日の朝、母さんが間違えて2日分カレンダーをめくったんだよ」
「え゛」
「そうそう、お母さんおっちょこちょいだから」
「え゛、じゃあ今日は・・・3月31日・・・」
一瞬の沈黙。次の瞬間弟と妹たちは子ども部屋に走り出していた。
「兄ちゃん、ありがとう」「さんきゅー」「ありがと」
「え゛」太郎は呆然と立ちつくした。

しばらくして母親がやってきた。
「どうしたの、太郎?」
「今日、今日は3月31日なんだ。お母さん、カレンダーをめくり
すぎたって・・・」
「何言ってるの? 今日は4月1日でしょ」
「え゛」
「もう。次郎たちにだまされたのね・・・」