『テーマ館』 第20回テーマ「勘違い」



 「手紙」   by しのす


      下駄箱の戸を開けると差出人のない手紙が入っていた。
      ピンクのかわいらしい封筒だった。
      志郎は思わず周りを見回した。近くにだれもいなかった。
      そっと封筒をひっくりかえして裏を見た。
      しかしそこには差出人の名前もなかった。
      ただ閉じ口にピンクのハートのシールが貼ってあっただけだった。
      志郎ははやる心を抑えながら、封筒の口を開いた。手が少し震えていた。
      ピンクの便せんが1枚出てきた。

      『あなたのことがずっと前から好きでした。
      同じクラスになってあまり話をしたこと、なかったけど
      いつもあなたのこと見ていました。
      口では恥ずかしくて言えないので、
      あなたに手紙を書きました。
      是非付き合って下さい。
      貴美子』

      貴美子といえば、修学旅行の夜男子が投票して志郎の学年で一番人気があった女の子だった。
      志郎もかわいい、と思っていた。
      だから志郎はショックを受けた。
      その時丁度同じクラスの行雄がやってきた。
      志郎は極力冷静を装って、行雄に手紙を渡した。
      「お前にラブレターだよ、穴田(あなた)行雄」

(投稿日:07月11日(土)11時13分11秒)