第36回テーマ館「モンスター」



モンスター問答 しのす [2000/12/31 03:25:31]

 「久しぶりだな。また新しい話でも書いたか」
「そうなんだ。ちょっと聞いてくれるか」
「いいけど、お前のおかしな顔の子どもや、奥さんはほったらかしといていいのか」
「おかしな顔は余計だろ。お前の顔の方がよっぽどおかしいだろうが」
「なんだって。あ、このケーキ出そうと思ったけど出さない」
「ごめんごめん。でもそっちが先に言うから。おいしそうなケーキだ。食べてやるよ」
「お、食べてやるときたか」
「で話なんだけどさ、(モグモグ)、お前みたいに醜い顔のモンスターがいてさ」
「まだ言うか。おい今口に入れたケーキ、返せよ」
「(うぐぐっ)うまかった。何時間かしたら返してやるよ。こんもりとしたうん…」
「うわー、いらねぇ。シモなやつだ」
「でそのモンスターの話に戻すと、彼女が恋をする」
「モンスターが恋をする、ねぇ」
「で相手というのが人間だ」
「美女と野獣みたいもんか。モンスターが彼女ということは、美男と女野獣か?」
「でもお前みたいに醜いから告白できない」
「またぁ。しつこいな。どうせお前は男前だよ、ハムサンドだよ」
「ハンサムだろ。まあ誰もがそう言うが、俺なんか大したことないさ。
でもキアヌか俺かって感じでファンのHPまである」
「そこまで言うか?やっぱケーキ返してくれ。すぐだ」
「じゃあここで今すぐ、おぇーーー」
「やめろー。吐くな」
「じゃあケーキ返せって言うな。でさ、そのモンスターが魔女に頼むんだ」
「なんだ、恋をかなえてくれってか」
「いや、自分を人間にしてくれって」
「モンスターが人間になりたがるのか」
「中には人間を美しいと思って人間に憧れるモンスターもいるさ」
「自分に自信のない奴なんだ。お前の嫁さんとは大違いだ」
「そうそううちの嫁さんは美人だけど自信過剰でって、何言わす」
「でも昔からツンツンしてたぞ、お前の嫁さん」
「そうそう昔からハリネズミ頭で。ソニックって呼ばれてたぞ」
「呼ばれてない、呼ばれてない。大体お前は嫁さんの子どもの頃、知らないだろ」
「知らない。知ってたら結婚していなかったりして」
「…そんなことはないだろうが、美男美女でお似合いだぜ」
「…高崎、お前って奴は〜。ケーキもう一個食べてやる」
「食わなくてもいい。とにかく話を続けろ」
「で魔女と取引して人間にしてもらう。そして人間に告白して、結婚して」
「めでたしめでたしか。大した話じゃないな」
「ところがハッピーエンドではないんだ。子どもが生まれるんだけど
それが醜いモンスターの子どもだった、というオチがつく」
「うーむ、人間の姿はしているが、実態はモンスターのままだったということか。
なかなかせつない話だな」
「そうだろ。人間の男はびっくりだろうな」
「自分と似ても似つかぬものが生まれてしまったのを見ればそうだな」
「…自分と似ても似つかぬ…」
「…どうしたんだ。急に黙り込んで」
「…高崎、お前、うちの嫁さんと幼なじみだったな」
「ああ」
「お前、あや子と寝たな」
「なんだって!」
「俺もあや子も美形だ。しかし生まれた良一は不細工だ。そしてよく見ると
お前に似ている。だから、良一は、お前とあや子の…」
「おいおい、いきなり何を言い出すんだ」
「お前とあや子の子だろう。だからお前に似て醜いんだ」
「ひどいこと言うな。ちがうよ」
「嘘つけ。お前は、あや子と浮気した。その子どもが良一なんだ」
「…いい加減にしとけよ」
「いい加減もなにも、それが事実だろ。正直に言え」
「…とんでもない話だ。気分を害したから言ってやるよ」
「何を」
「良一は正真正銘、お前とあや子さんの間に生まれた子さ」
「俺もあや子も美男美女なんだぞ。どうして変な顔の子どもが生まれる?」
「だからさ、もう、言ってやるよ。あや子は整形したんだよ」
「整形?」
「良一は整形前のあや子にそっくりなんだよ」


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