『テーマ館』 第28回テーマ「森/海」


母なる海 投稿者:しのす  投稿日:08月08日(日)16時12分58秒


       波が逆巻き、揺らぎ、うねった。
      たぎり、しぶき、荒立ち、激した。

      僕らは荒れ狂う海を陸地の観測基地から観察していた。
      「Now it's time!」とマーク・ライン教授がつぶやいた。
      海水は急激に空に向かって巨大なドーム状に上昇を始めた。それはまさに青い水で
      出来た山が現れたかのようだった。
      空に届くかと思われた次の瞬間、ドームの天井が割れると共に中から何万というブ
      ルーの球体が空に向かって飛び出していった。その球体の中にはそれぞれブルーの
      海水が入っていた。
      何万という球体は大気圏を突き抜けると宇宙に向かって飛び出していった。

      「・・・まさにうみの苦しみか」と僕は思わず日本語でつぶやいた。
      しかし十数人の研究員の中には他に日本人もなく、誰も反応しなかった。

      2614年、僕らは「生命の全ての源である海」のある惑星を発見した。その海は海水
      を球体の中に保存して宇宙に向かって生み出す。その球体が宇宙を旅してたどり着
      いた惑星で条件があえば新たな命を生み出すというシステムだった。
      あの球体の中のいくつかが無事に惑星にたどり着き、その環境に適合して新たな命
      を芽生えさせていくのだろうか。
      我々の地球の時のように。