「秘密」




 「ここだけの話なんだけど、1課の大瀬戸さんと、受付嬢の
沢村さんが結婚するらしいわよ」
 「本当?大瀬戸さんって、我が社の結婚したい男ナンバーワ
ンじゃない」
 「そうそう。意外でしょ。沢村さんって普通の子なのにね」
 「ショックね。あ、春恵、知ってるのかな。教えてあげよう
っと」
 「だめだめ、これは秘密なんだから。誰にも言っちゃだめよ」

 「ね、春恵、あなた口固いわね。」
 「何よ。急に」
 「秘密守れる?じゃあ、あなたにだけ教えるわ。誰にも言っ
ちゃだめよ」
 「う、うん」
 「大瀬戸さんがね、受付の沢村さんと結婚するんだって」
 「う、嘘……。私、大瀬戸さん、いいなぁって思ってたのに。
ショック」
 「でしょ。だからあなたにだけ教えたの。他の人には秘密よ」

 「ね、秘密の話なんだけど」
 「え、なに?」
 「誰にも言ったらダメよ」
 「ああ」
 「大瀬戸さんが、沢村さんと結婚するんだって」
 「沢村?え、受付の女の子?ああ、あの目がぱっちりしたか
わいい娘じゃないか。やるなあ、大瀬戸君も」
 「もう、男ってすぐ女の方に関心が行くんだから。……ね、
私たちもそろそろかしら」
 「え?……大瀬戸君もついに結婚か。しかし結婚は、互いに
縛りあっていやだよね」
 「…………」

 「な、大スクープ。受付に目のくりっとしたかわいい娘がい
るだろ。沢村さん。あの娘、大瀬戸と結婚するんだって。あん
なかわいい娘をゲットして、大瀬戸って奴もたいしたやつだよ
な。でも、これは秘密だから。他の誰にも言ったらだめだよ」

 「これ、誰にも言ったらダメなんだけど、沢村さんが結婚す
るんだって」
 「え、だれと」
 「さあ、1課の誰からしいけど」
 「でも沢村さん、1課の課長と不倫してるとかいう噂だけど」
 「えっ……本当か?あんなかわいい顔して」
 「でもこれは秘密だよ。誰にも言うなよ」

 「なあ、受付の沢村ってかわいい娘いるだろ」
 「あ、ああ、彼女ね。いい娘だよね」
 「これは秘密なんだけど、あの娘、1課の課長と不倫してる
んだって」
 「えっ」
 「人は見掛けによらないよな、大瀬戸」
 「…………」