皇紀2670年 12月10日 クマのクー君の話

ボクはツキノワグマのクーと言います。 

 普段は山の中で暮らしています。

  今年は天候不順で、好物のドングリやブナの実が余り成りませんでした。

   山の中を毎日毎日歩き続けて探しましたが、くたびれるだけで、食べ物が手に入らない日が続きました。

    いつもの年なら、腹一杯食べてオデブに成って山の家に籠もるのですが、お腹がすいて冬眠することも出来ません。

 

 それで山から下りて食べ物を見つけることにしました。

  と言うのも、時々遊びに下りた所で、ヒトが捨てた美味しいものがあるところを知っていたからです。

   ヒトにとってはまずいものらしく、沢山人が居るコンクリートの建物の外に、パンという美味しいものが有ると言うことを知っていたからです。

 

晩秋の朝早くにその場所に行ってみたら、なんと柿の実が一杯有りました。

 人が住んでいる所の庭先ですが、誰も食べないらしく、熟れた状態の柿の実が一杯有りました。

  人が起きだす前に、食べさせていただくことにしました。

   1本の木に登り、食べ終わると、次の木へ、そしてまた次の木へと。

    しかし、日が昇ってくるとヒトが出てきましたし、クルマという恐ろしい機械も走りすぎていきます。

     これでは危ない。しかし、まだ一杯柿の実がなっている木がある。

      ようし、夜になるまで茂みで昼寝でもしていようと、柿の木の傍のヤブに潜んで、寝ていました。

 

やがて、人が一杯集まってくるわ、工事も行われる。これでは身動きが出来ない。 

  満腹になった私は、ヤブの中でぐっすり寝込んでいました。

   うつらうつらしていると、なにかいやな音がする。

    でも起きると見つかるからそのままタヌキ寝入りならぬクマ寝入りしていました。

     と、突然私の寝ているヤブの上に食べ残してある柿の木が倒れてきました。

これにはびっくりして飛び上がりました。

 そしたら目の前にチェンソーという恐ろしい機械を持ったヒトが立っていました。

  ボクもびっくり、ヒトもびっくりで、お互いに気が動転しました。

   次の瞬間、ヒトはチェンソーでボクの体を切りつけようとしました。

    これにはボクもびっくりして身を守ろうとしました。

      チェンソーの歯はボクの硬い毛皮の性で止まってしまいました。

そこでボクは反撃を試みました。

  先ず人の足に噛みつきました。

   次にチェンソーを持っていた手も手で払いました。

    むろん、ボクはヒトを傷つけるつもりはありませんでしたが、大きな木まで倒してしまう恐ろしい機械を操るヒトに対して身を守ろうとしただけです。

 

ヒトは大声を出し、近所のヒトも集まってくる様子でした。 ボクは仕方なくカキを諦めて山へ逃げることにしました。

 何とかヒトの来ない山奥まで無事に逃げ帰ることが出来ました。

  本当に怖い経験でした。 噛みついたヒトには謝りたいのはやまやまですが、ボクが見舞いに行くことも出来ません。

   誰も食べない柿の実を分けて欲しかっただけなのです。

    寝ぼけていた状態で突然木が倒れてきたので、パニックになってしまったのです。 申し訳ありませんでした。

     心よりお詫び申し上げます。 お元気になられるよう祈っています。  

                      クマのクー君より                             クー君の友達

 

有るところでクマが集落に近づかないように、屋敷の回りにある柿の実をもいでしまうようにとの行政側から防災無線で要請がありました。

 年寄りがほとんどで、高い柿の木からもぐこともままなりません。

 しかももいだ柿も、誰も食べるわけではないので、柿の木を根元から切り倒してしまうことにしました。

 今回は、倒した柿の木の傍でクマが潜んで寝ていたという偶然が重なり、

 クマも驚き、ヒトも驚いてしまい、双方がパニック状態となり、不幸にも人も怪我をしてしまいました。

 こんなことがないように来年は山に沢山実が成って欲しいものですね。

                               解説   管理人