**青春。


「勝負だあ!カカシ!」
カカシの前に不思議なポーズ(ナイスガイ☆だろうっ!とはガイ談)を付けて立ちふさがるガイ。

すっきりと晴れ渡った爽やかな青空。
真面目な主婦の皆さんなら洗濯日和だと張り切って洗濯機を回すだろう、カラッとしたいい天気だ。
ただいまの時刻は午前9時30分。

ナルト特製の弁当が入ったカバンを持って、里の外れにある丘に向かって歩いていたカカシとナルトは、

ガイに目線を合わせず、ガイの横をそっと通り過ぎた。



久しぶりの休暇にようやく取り付けたナルトとのデートの約束。
カカシはそれを熱血青春馬鹿に付き合ってダメにする気はさらさらない。

ナルトはガイのあまりの濃さに引いた。
朝からフルコース料理をドーンと出されるくらいに重い濃さだ。

だから無視。


「んー、楽しみだねー」
にっこりとナルトに笑いかけるカカシ。
「おう!」
元気に両手を挙げて答えるナルト。

「ねえ、ナルト。お弁当、何作ったの?すっごいいい匂いがするんだけど」
抱えたかばんの中の匂いを犬のようにクンクンと嗅いでカカシが尋ねる。

「それはお昼になってからのお楽しみだってばよ!マジ張り切って作ったから期待していいってばよ!」
ステップを踏むような軽い足取りでカカシの前に立ち、にっこりと笑うナルト。

「カカシ先生、早く行こう!」
弁当を持つカカシの空いているほうの手を掴み、先を進む。

「ああ、行こう」
ナルトの笑顔と自分の手を掴む仕草の可愛さに感動しつつ、カカシは満面の笑顔でナルトが急かすままに歩調を速めた。


こうして青春と言う名の嵐から50m以上離れ、その存在をなかったこととして2人が処理しかけた時。

「ちゃんと、俺を見ろぉぉぉ!カカシィ!」

一度は無視られて、そのショックにドドーンと雷を背負ったガイだったが、すぐに立ち直り、自慢のスピードでカカシの前に回りこみ、至近距離で叫んだ。


「…やだよ。ガイの顔なんて見ても暑苦しいだけでいいこと何もないでショ」
大きな溜息を一つついて心底嫌そうにカカシが答えた。

カカシの対応はガイにとって実につれない物だったが、
(くそう!そうやってサラッと否定して相手にしないぜってポーズがまたナウい感じだ!)
とさらにライバル心を燃やしていた。
もはやガイのカカシに対する一方的な片思い状態である。


勝手に勝負に激しく燃えるライバルを見て、やっぱり何か勝負をして白黒つけないと、逃げられないのかとカカシは半ば諦めた。
こうなったら、いつかみたいにジャンケンか何かで手っ取り早く……
と思ったとき。


「ほへら〜??」
間抜けな声を出してガイが倒れた。

……

寝てる。


「何してんだ、カカシ。さっさと行くぞ」
「う、うん。…もしかしなくてもナルト、ガイになんかした?幻術?」
あのガイがあんなあっさりと術にかかるなんて…。
その事実に驚き、カカシは先を歩くナルトを追いかけながら尋ねる。

「まあな。ちょっと特殊なヤツを。安心していいぞ。見たとおり今回は寝るだけにしといたからな」
ゾクリとするような笑顔で言う。
ガイという他人の目がなくなったので、ナルトはすっかり素になっている。
ナルトはどうやら怒っているようだった。

『今回は』ということは、普段はもちろん寝るだけじゃすまないってことだよね?
あのガイすらあっさりかかった術。
おそらく禁術。
どういった効果をもたらす術なのか詳細は分からないが、確実に敵を眠らせることができるというだけでも任務で使う際の有効性が伺える。
ナルトの能力の高さにわかっていたとはいえ改めて驚く。

カカシは後に置いてきたガイをチラリとみやり、お前、手加減されて命拾いしたよと思った。
今回は(・・・)だけどね。



「でも、ナルト珍しいね」
「何が」

ガイから充分に離れ、今はすっかり元通りの歩調。
何でもないような会話のように話をする。

「ガイの前であんな高等忍術使うなんて。バレたら大変でショ?」
身を守るためにしているナルトの演技。
ガイの性格からして、たとえばれてもどうということはないかもしれないが、ドベのナルトにはありえない行動を人前で取るというのは軽率としか思えない。
カカシの声にはナルトを心配する響きがあった。

「まあ、絶対失敗しない自信があったからだけど」
「自信家だね〜」
ナルトらしいといえばナルトらしいが、もしもと言うこともある。
油断はしすぎないほうがいい。

「それに…」
ナルトを心配して一言言おうとしたカカシだが、ナルトのつぶやきに、声になりかけた言葉を止めた。

「それに?」
「邪魔されたくなかったんだ。……デートなんだろ?」
やっと聞こえるかどうかといった小さな呟き。

「あー、ほら、カカシ!さっさと行くぞ!」
らしくないことを言ってしまったとばかりのナルト。
スタスタと先を進むのは間違いなく照れ隠しだろう。
先を進むナルトの耳が赤いのがわかる。
恐らく顔も赤くなっているだろう。

デートだと思っているのは自分ばかりで、ナルトは仕方なく付き合ってくれてると思っていたが、ナルトも存外楽しんでくれているのだ。
嬉しさに表情筋が緩む。

「ナールト。一人でさっさと行っちゃダメでショ。デートなんだからv」
先を歩く愛しい子どもの横に並び、手を握った。





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036000(俺を見ろぉぉぉ)hit申告&リクエスト、ありがとうございました!
遅くなりましたがようやく完成です。

台詞のお題、ちょっと惹かれていたので楽しかったです。
ただ、公開できるまで話が膨らまず大変でしたが。
ガイの台詞でやるって決めて、
「勝負だあ!カカシ!」→無視→「俺を見ろぉぉぉ!」だけを考えて、そこから前後を付け足しました。
ほぼ行き当たりばったり(笑)。
全編ギャグのはずが後半カカナルでほのぼのでラブになっちゃって書いた自分がビックリです。
カカシ、報われてるじゃん!!

2004/7/8