* * 一夜の過ち? あ〜、よく寝た…… と思って、いのは目を開けた。 見えるのは見慣れた自分の部屋の天井……と思いきや、目に入ったのは見慣れない天井。 寝ているベッドも自分のものではない。 自分のベッドよりもずっと寝心地がいい。 きっと、高いんだろうなあ……って、今はそんなことは関係ない。 ……もしや…… おそるおそる隣を見ると、 あー!やっぱりいいいい! 金髪の男の裸の背中が見えた。 ダレ!?……もしかしてヤッちゃった……!? 慌てて、でも男を起こさないように気をつけながらそっと布団の中を見る。 下着は着てるけど…… 体の感覚を確かめる。違和感はない。 「よかった〜」 ヤッてないっぽい。ホッとして思わず声に出た。 「何がよかったの?」 びくっ。 心地よい低さの声。間違いなく男の声。 もしかしなくても、隣に寝てた人よね。そして、この家とこのベッドの主。 ぎぎぎっと音がしそうなぐらいぎこちなく首を回して男の方を見た。 「おはよ、いの」 腕枕をして笑みを浮かべながら男が私の方を見て挨拶してきた。 「…おはよ」 たぶん引きつってる気がするけど、この場では精一杯の笑顔を浮かべてなんとか挨拶を返す。 男は金髪碧眼でかなりの美形。 …サスケ君と張れるぐらいの美形なんて久々に見たわ。 こんないい男いたかしら。 ……ん〜、なんか見たことがあるような気もするような。 「何がって……」 ヤッてなくてよかった、なんて言えるはずもなく、 「それは、おいといて!」 ちょっと頬を上気させながら言った。 「あなた、どこのだれ?どうして私がここにいるの?」 むくりと男が上体を起こして、にやにやしながら自分の顔を指差した。 「見覚えない?」 「見覚えあったら聞か……」ないと言いかけたところで、男の頬に走った3本の特徴的な痣にようやく気づいた。 「あ〜〜〜!!もしかして、ナルト!?」 がばっと起き上がってナルトを思わず指差した。 「当りだってばよ、いの」 にっこり笑ったナルトにいのはドキッとする。 すごい久しぶりに見るけど、ナルトってこんなにカッコよかったっけ!? ナルトの顔を見てボケッとしているいのだったが、ナルトの行動に悲鳴を上げそうになる。 あ、ちょっと、そのままの格好でベッドから出ないでよ!朝からそんなもん見たくない……って、なんだ、ズボンはいてたのね。 動揺したいのの気配を感じたのか、ナルトがいのの顔と自分の格好を見てニヤリと笑った。 「いのってば、もしかしてオレが裸だと思った?」 「な…!」 言い返したいのは山々だが、図星なため顔が紅潮し、言わずとも答えを示してしまった。 「…エッチv」 その時のナルトの表情があまりにも色っぽくて、いのは言葉を失ってしまった。 半分放心状態のいのに、ナルトがきれいに畳まれた服を手渡した。 これは、私の…… というか、このデザインの服を男のナルトが着たらかなり怖い。 だから間違いなく自分の服。 「今の格好も個人的には嬉しいんだけど、そろそろ服着たほうがいいかと思って」 イタズラっぽくナルトに言われて、はたと自分が今どんな姿をしていたか思い出した。 下 着 姿 。 「あ゛」 慌てて布団を引き寄せる。 あーもう恥ずかしい…! 「なんだったら、シャワー使う?昨日入ってないんだし、気持ち悪いんじゃない?」 う、確かに。 ナルトの申し出はありがたかったし、他意はないんだろうなって思うけど、ねえ? 「遠慮しとくわ。これ以上迷惑かけられないし、帰ってから入る」 「そう?朝食ぐらいは出すから、食ってけよ」 「でも、悪いし……」 と言ったところで、グ〜っと情けない音が…… 「ぷっ。体は正直だってばねえ。はい、朝食決定!着替えたら、リビングに来いよ」 そう言ってナルトが部屋を出て行った。 うう、情けない。恥ずかしい。何もあんなタイミングよくお腹鳴らなくてもいいじゃない…! そう考えながら、いのは着換えを開始したのだった。 着換えを終え、リビングに行くと、香ばしいトーストが焼ける匂いがした。 「もうすぐ完成だから、そこに座ってて。コーヒー?紅茶?」 「ごめん。ありがとう。コーヒーお願いします。」 簡単な物だけどね、と出されたのは、 カリカリに焼けたトースト、ふわふわのスクランブルエッグ、キャベツの千切りにトマトを添えたサラダ、そしてコーヒー。 「……美味しい」 自分だけだとトーストにドリンクだけという日が正直多いので、こんなに栄養価の高い朝食は久しぶりだった。 「ところで、ナルト。今さらだけど、私どうしてあんたの家にいるの?」 「昨日のこと、全然、覚えてない?」 「……店でお酒飲んでたことは覚えてるんだけど、途中からもう全然……」 「へえ〜」 何か含みのある笑みを浮かべるナルト。 う、嫌な予感……。 「もう、大変だったんだってばよ?聞きたい?」 「う、オネガイシマス……」 そして、ナルトから聞いた内容は…… ……い、言えない。 とりあえず、しばらく、お酒は控えよう。 飲む時はお酒の量をもっと考えよう。 それだけは硬く決意しました。 はい。 今回のことがあってから、同期というだけでこれまでナルトとはそこまで親しくはなかったけど、たびたび食事したりすることが多くなった。 もう、恥ずかしい面はさんざん見せちゃった後だから、下手に気取る必要もなくて、かなり自然体の私でいられた。 今の私とナルトの関係は“友達以上、恋人未満”といったところかしら。 私の中でナルトっていう存在は日に日に大きくなっていて、もう、初恋だったサスケ君よりもずっと大きい存在になってる。 ナルトって本当いいヤツなのよ! ちょっと意地悪なところもあるけど、そこがまたいい! だから、ナルトが私の中で特別になるのも当たり前で。 目下の目標はナルトの特別になること。 ナルトと親しくなって初めて知ったけど、老若男女問わず、意外にライバルが多くて苦戦中かも。 でも、負けないんだから! 待ってなさいよ、ナルト! |