**忍びの『三禁』


「えーっと。今月の光熱費は、と。……安!まあ、ほとんど寝に帰ってるだけだったしなあ」
忍者専用の私書箱から自分宛の郵便物を受け取って帰宅したナルト。
月末が近づき、増えるのは様々な請求書や、引落し済みの領収書類。
その一つ一つをチェックしていく。
ナルト位の年代だと、そういったことはすべて親が上手くやってくれるものだが、親もおらず一人暮らしのナルトではそうはいかない。

「なんだ?コレ?」
全く身に覚えのない店、金融会社からの請求書に眉を潜める。

『スター☆ダスト・コノハ』
木の葉の花街にある店だな。
カワイイ女の子が多く、良心的な店だと聞いたことがある。
オレは行ったことはないが。

『すまいるコノハ』
最近大きくなった消費者金融会社。
オレは自分の収入だけで余裕をもって生活しているし、こんな会社に用はない。

初めは最近話題の不正請求かと思ったが、ここまで名の知れた店や会社がそんな大それたことはしないだろう。
何はともあれ、とりあえず中身を確認してからだな。
そう考えて封を開き中身を確認すると、ナルトの額に青筋がはっきりと浮かび上がった。

「あんのエロ仙人…!」

請求額は総額18万3千両(注:1両=10円)。
利用者は自来也。
請求先はナルトの裏用の忍番号だった。




ナルトは暗部用の姿に変化し、家を飛び出した。
服装は忍用のものではなく、里の若者が一般的に着るような落ち着いた色の普段着。
目指す場所は『スター☆ダスト・コノハ』
利用日は週末に集中している。
今日も都合よく週末。
日も暮れた。
花街がもっとも華やかになる時間だ。
問題の自来也に遭遇できる可能性も高い。

会って、締める!

ナルトはそう固く決意した。








「今日、自来也という中年で長身の客は来てますか?」
自来也の名前を言うだけでフツフツと沸いてくる怒りを押さえつけながら、笑顔を取り繕い、店の受付に尋ねた。
「申し訳ありませんが、当店ではお客様の情報は……はい。いらっしゃってます。こちらです」
店のマニュアル通りにナルトを門前払いしようとした受付の男だったが、笑顔の奥の殺しきれていないナルトの圧力に押され、幾分営業スマイルを引きつらせながら、自来也の元へナルトを案内した。



「ぎゃはははは!ミナちゃんはかわいいのォ〜vvv」
「ありがとーvでーも、ジラちゃん、イタズラはダメよー」
鼻の下をだらしなく伸ばして、尻を触ろうとした自来也の手の甲をホステスのミナが笑顔でつねった。
「あいたたたv手厳しいのォ〜」
「がはははは!自来也、振られたのう!どれ、ミナちゃん、わしにもう一杯酒を注いでくれんけえのォ」
「もちろんよ、ブンちゃ…」
突然ミナの言葉が止まる。
「どうした?」
不審に思い、ミナの目線を追う自来也。
その先にいたのは、笑顔だが、ものすごい圧迫感をかもし出している変化したナルトの姿だった。


「エロ仙人…?ずいぶんと楽しそうだねえ…?」
「ナ…じゃなくて、ヒスイか。お前も一緒に飲むかあ!?」

「飲むかあ!?じゃない!何なんだ!コレは!きっちり説明してもらおうか!」

自来也の目の前に請求書を広げて見せる。

「…ワシとお主の仲だろうv硬いことは言いっこなし!のォ?」
「ふ・ざ・け・る・な!どんな仲だ!」
「師匠と弟子だーーー!!口寄せと螺旋丸教えてやっただろうが!」
「普通の師匠は女の子のいる店で飲むために、無断で弟子に借金背負わせようなんてしねえよ! 」
「それが、普通だと誰が決めた!現にワシという生きた証拠がおる!」
「胸張って言うことか!そもそも、忍びの『三禁』はどうした!酒・女・金!トリプルで破んなっつったろ!」
「…ふん。そんな古いことは忘れたわい!」
「こっの色ぼけアホ仙人が〜!!」

「がははははは!自来也!どう考えてもお主が悪いわい!この借金もお主が間抜けなことに結婚詐欺に引っかかったのと、自棄酒が大半じゃけんのォ!まあ、わしも付き合ってたら腹飲んだけん、同罪かのォ!がはははは!」
「はあ!?結婚詐欺!?…ってあんた、誰?」
「ぐ……、ブン太め、いらんことを…」

「ブン太!?もしかして、ガマオヤビン!?」

「おうよ、ガキ!その通りじゃ!ほれ、金を返してやろう!自来也には借りもあるしな、いい機会じゃ!気にするな、さっき博打で当てた金じゃわい!あり過ぎて困っとるぐらいじゃけんのォ!がはははは!」
「サンキュー、オヤビン。にしても、オヤビン、どうしたんだ、その姿?オヤビン、変化苦手じゃん」
「なあに、自来也の影分身とコンビ変化をしとるんじゃ。なかなかいい男じゃろう?がははは」
「確かにね」

ヤクザっぽい強面だが、笑うとなかなか愛嬌がある。
左目の傷跡はそのままだが、それがまたワイルドな魅力になっている。
髪は黒く短く刈られ、軽く後に流されている。
体格は筋肉質な長身で、背中にトレードマークの『蝦』と大きく書かれた半被を羽織っている。
『男らしい』と言うのがぴったりの印象。
女性受けもなかなかいいようで、店の女の子は肩を抱かれてもまんざらではない様子だ。


「ガマオヤビン、こうやってよく飲みに来てんの?」
「最近はな。家で飲むと母ちゃんがうるさくてかなわんけん。酒を控えろ、血圧がどうとか言って」

ブン太の言葉に、ナルトはなんかどっかで聞いたような話だな…と冷や汗を流す。

「血圧がどうした!酒をやめるなら死んだ方がマシじゃい!」
ぐいっと酒を煽るブン太。
「まあ、オヤビン落ち着いて」
「かー!うまい!む。大丈夫じゃ。でな、そうやってわしが怒ると、母ちゃんはもっと怒ってのォ。あ、あれは恐ろしかった…」
その時を思い出したのか青ざめるブン太。
意外と尻に敷かれてるらしい。


「そこでな、ワシがコンビ変化でブン太を人間にして、一緒に飲んどるっつー話よ!」
胸を張って言う自来也。
「飲んだら、解決しねーんじゃないのか?」
血圧上がるんだろ?と不審そうなナルト。
「なに、人間の姿でなら、たら腹酒を飲んでも、元に戻れば1杯程度飲んだに過ぎん!しかも満足度はそのまま!お得だのぉ〜」
「その通りじゃ!がはははは!それにこんなに好き放題飲み食いしとるのに、この間検査に無理矢理連れて行かれたが、全部正常じゃったわい!」
「へえ。なんか反則技っぽいけど、良かったじゃん、オヤビン」
「がはははは!」
「それもこれもワシが思いついた法則のおかげだのォ」
「ああ、オヤビンがさっき『借りがある』って言ってたの、そのことなんだ」





そのあと、ナルトはブン太のおごりで夕飯をご馳走になった。
酒も勧められたが、未成年なので断った。
そのかわり、成人したら杯を交わす約束をしたが。

そして、別れ際。

「じゃあな、オヤビン!エロ仙人!エロ仙人!今回のことに懲りて、少しは忍びの『三禁』守れよな!」

「う、うるさいわい!」
「がははははは!どっちが師匠かわからんのォ!」





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ようやく完成しました。
もうカウンター5万行ってますけど(汗)
とりあえず、自来也とガマ親分は登場してますがどうでしょう?
ドキドキ……

26225hit申告&リクエスト、ありがとうございました!

2004/5/3


オヤビン人間バージョンの絵を見たいとのことだったので追加。
私の画力ではこれ以上強面にはなりません。
ヤクザというよりは江戸っ子な感じになっちゃいました…アレ?

2004/5/29 追加。