2992hitお礼  


うずまきナルト。
あんなやつ、初めは大嫌いだった。
うるさいし、やたらからんでくるし(…まあ、からみ返してるが)。
…ファーストキスまで奪われたしっ!

アカデミー時代の成績はドベのドベ。
下忍になってもいつもウスラトンカチなミスばかりでやっぱりドベ。
ドベのくせに目標だけはでかくて。
二言目には『オレは火影になる!』なんて言いやがる。

口先だけのやつ。
そう思っていた。


でも違うことに気づいた。
ナルトは強くなる努力をしていたし、信じられない速度で強くなってる。
オレだってもちろん修行はしてる。
以前よりは強くなった実感もある。
でも、ナルトの成長の速さは異常なほどだ。
ナルトは強くなってる。
口先だけじゃない。
オレのナルトを見る目が変わったのがわかる。


それからは気が付いたらナルトを目で追っていることが多くなった。
だから、ようやく気が付いた。
ナルトを取り巻く里の環境の異常さに。

里の大人たちから向けられる憎悪と言ってもいいくらいの冷たい視線。
あからさまな無視。

なぜこれまで気が付かなかったのか不思議なくらいだ。

ナルトは、いつも元気に笑っていたから。
まるで悩み事なんてないって顔をして。
だからあの笑顔に安心して。
オレはナルトを全然わかっちゃいなかった。

ナルトを守ってやりたい。
そう思った。
そして自覚した。



オレはナルトが好きだ。



仲間や友達としてとは違う感情で。
…抱きしめたいとかそういう意味での『好き』。










今日は下忍任務がなかったので一人、演習場で修行をした。
ナルトを誘いたい気もしたが、そうすぐ素直になれたら苦労はない。
日も暮れてきて、そろそろ買い物をして帰ろうと里の商店街に向かった。

今日の夕飯は何にしよう。
家に投函されていたチラシの内容を思い返す。

…今日は牛肉が安かったな。
手っ取り早く牛丼にするか。あとはサラダと味噌汁でいいか。

と普段のクールなイメージのサスケからは想像しがたい、所帯じみたことを考えながら歩いていた。

視界の端に金色とオレンジで構成された人物が写る。
ナルトだ。
見間違えるはずがない。
思わず顔がほころぶ。

ナルトも買い物にきたのか、と手に提げた袋からわかった。
袋から見えるのはカップラーメン、カップラーメン、カップラーメン…と牛乳。

ちっ、ウスラトンカチが。
栄養偏りすぎだろ。
だからいつになっても身長伸びないんだよ。

そう思いながらサスケはナルトに話しかけるべく、ナルトのいる方向へ歩き始めた。
と同時にナルトに向かって石を投げようとする老人の姿をとらえた。

危ない!そう思った瞬間足にチャクラを集中し、一気にナルトの前に移動した。
投げられた石を受け止める。
忍びでもない里の住人、それも老人の投げた石を受け止めるぐらいは雑作ない。

しかし、石を受け止める瞬間に見たナルトの表情が気にかかった。


一瞬だけだったが、いつもの表情からは思いもつかないそれ。

あきらめ。

憎しみ。

悲しみ。

孤独。

色んな思いを秘めた冷たい目。





「オイ、ナルト…。」
話しかけると、ナルトが驚いたような表情で目を見開いた。

「あれ!?サスケ?どうしたんだってば?」
まるで何もなかった、知らなかったというように振る舞うナルトに戸惑う。

さっきの、あの表情。
知らなかったわけがない。
でも、投げられた石を避ける気もなかったようだ。
つまり、サスケが石を受け止めなければ石はナルトにあたっていた。

どういうつもりなのか、ナルトを問い詰めようとしたサスケの言葉は遮られた。
「何故邪魔をする!お前なんか、お前のせいでわしの孫は……」
醜く顔を憎悪で染めた老人がナルトを罵倒する。


何故そこまでナルトが憎まれなくちゃならない!
ナルトがあんたの孫に何をするっていうんだ!


頭に血が上り老人に向かおうとしたサスケをナルトが服の端をつかんで止めた。

そして、さらに続けようとする老人を、近くにいた里の男が止める。
「おい、じーさん!やめとけ。」
そう言って男は老人を連れて行く。
そして一瞬だけこちらを一瞥した。
老人を止めた男だったが、この男のナルトに対する視線も冷たいものだった。


どいつもこいつも…
ナルトに対してのみ里人から向けられる理不尽な感情に怒りが湧く。


くいっとサスケの服が引かれた。
「サスケ、行こう」
「でも、ナルト…!」
「行こう」
ナルトは強引にサスケの手をつかみ歩きだす。
有無を言わせぬ様子のナルトの様子に、サスケはうなずき、その場を後にした。
ナルトに止められ冷静さを取り戻すと、その場にいても不愉快になるばかりで易はないと簡単に判断できたので。










ナルトに手を引っ張られながら歩き、サスケとナルトは里の郊外に来た。
あたりに人気はない。
サスケはさきほどナルトが一瞬だけ見せた表情の意味が気になっていた。
そして、避けられたはずの石をなぜ受けようとしたのか。
何事もないように振る舞ったのか。


「ナルト、さっきみたいなことはよくあるのか?」
買い物の荷物をそばの切り株に置きながら問いかけた。
「なんのことだってば?」
ナルトも買い物袋を地面に下ろす。
「…石を里の人間に投げられたり、わざと避けずに石に当たろうとしたりということだ。」
「ははっ、オレってばよくイタズラしてっからかな。えーっと、あのじいちゃんの場合は、前に落とし穴作った時にあのじいちゃんの孫が間違って落ちちゃってさー。怪我はなかったんだけどそのことまだ怒ってんのかなあ。でも石が投げられたなんて知らなかったってばよ!いくらなんでもそこまでしなくてもいいよなあ!」
ナルトは明るく話をするが、サスケは納得しなかった。
“あの”表情に説明がついていない。

「ナルト、お前嘘ついてるだろ。今お前が言ったとおりだったとしたら、オレが投げられた石を取った時のお前の“あの”表情はなんなんだ?」
「……あの表情?」
ナルトの表情が微妙に変わった。
サスケは言葉を続ける。
「一瞬だったが、あの目はいつものお前がする目じゃなかった。あきらめ、憎しみ、孤独、そういったものが入り混じった、そんな目だ。」


「……へえ。」
ナルトはスッと目を細めた。
「…つい頭にきてさ。『またか…』って。本当に一瞬だけだったんだけど、よく気づいたな。さすがは“うちは”サスケってところ?」

普段のナルトとはまったく違う表情と喋り方にサスケは驚く。
「ナルト……?お前、一体……。」
「で、サスケはオレの“ウソ”を見抜いて何をしたいわけ?ただの好奇心?」
サスケの言葉をさえぎるようにしてナルトが喋る。
ナルトの口調に多少イライラした様子が混じっていた。


「…オレは、お前が理不尽な扱いを受けるのが許せない。ナルト、お前を守りたい…!」
普段と様子の違うナルトに戸惑いながらも、サスケはナルトの目を見てはっきりと断言した。

そんなサスケにナルトが目を驚いたように見開く。
「…守る?…オレを?なんで?」
ナルトは素で驚いているようだった。



なんでって、ナルトがひどい扱いを受けるのが許せなくて、それはオレがナルトのことを……くそ、勢いだ!言ってしまえ!

サスケは一大決心をした。
かすかに顔が赤らむ。
そんなサスケを見て、ナルトは訝しげな様子だ。





「ナルト、お前が好きだ…。だから、お前が苦しむようなことは許せない。そういったものから守りたいと思う。」





「……は?好き?オレを?サスケが?」



「わ、悪いかよ。」
サスケがさらに赤面する。
そして照れ隠しか、さらに大胆な行動にでた。
ナルトの手を引き寄せ、抱きしめた。



「オレにお前を守らせてほしい…。」



ナルトに囁く。
確かな意志を持って。





慣れないことにやや呆然とし、されるがままだったナルトが正気に戻る。
そして笑いがこみ上げてきた!
「っあははははははっ…!」

突然笑い出したナルトに今度はサスケが困惑する。
抱きしめていたナルトを開放し、顔を赤らめたまま仏頂面になる。
「くそっ。ナルト、何がおかしい!」

「はははっ…!だってあまりに予想外でさ。あの“うちは”サスケが、“オレ”を好きなんてな…!」
“うちは”と“オレ”に含みを持たせてナルトは言った。

「気に入った。」
そういってナルトはサスケの顔を両手で掴んで引き寄せる。
そのままサスケの額当てを目元までずり下げた。

そして……






「えっ!?」






額当てがずらされて顕になった額に当たる柔らかい感触。






ナルトの唇






瞬間的にサスケの顔面の体温が急上昇する。
未だ感触が残る額を右手で押さえながら、左手で目元まで下がり視界を塞いでいた額当てをさらに自分で下げて首にかける。

「ナルトっ!」

「サスケ、オレを守るのは難しいよ?もっと強くならなきゃね。そして、あの目のこと。ヒントはいつものナルトは表面に見えているだけに過ぎない。あはは。ヒントあげすぎ?今のオレは相当機嫌がいい。じゃあな。」


それだけ言ってナルトが姿を消した。
文字通り。
決してドベのナルトにできる動きではない。



「いつものナルトは表面に見えている一面だけ。つまり見えていない隠された部分があるということ。今のがその一端というわけか…。面白い。絶対に強くなってやる。…ナルトを守れるくらいに…!」

そう決意してサスケも帰途についた。







翌日からは一層修行に励むサスケと、いつの間にか親密な関係になったサスケとナルトの姿が見られるようになった。



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大変遅くなりました!2992hitのキリ番小説です。
非常に難産な小説でした。
どうにかしてスレナルでサスナル!を目指したのですが、
スレナルじゃなかなかサスナルにならないんですよ。
スレナルってサスケのこと嫌いなイメージありますし。
おかげでいつまで経っても掛け算な関係にならないっ!
なんとか掛け算ぽくはなったものの、ラブラブ〜とは程遠い感じがするような……。
さらにはサスナルというよりナルサス臭い気が…(爆)
いやいやいや、サスナルですよ、サスナル!(言い切っとけ!)

こんなんでもよかったら2992hitを申告してくれた憂様に進呈したいと思います。
文句・苦情はいくらでもご遠慮なく。
その時は絵を描きます。
絵だと間違いなくラブラブ〜vvvにできますので☆

2003/12/4