一楽の平凡な一日。


9:00
一楽店主のテウチと、看板娘のアヤメが店にやってきて、店内と店舗周りを掃除する。

正式な営業時間は11:00からだが、特例もある。

「おっちゃん、おはよう!ラーメン1つよろしく」
ナルトがその特例の1人。

「霧で妖しい動きをしている奴がいるって?」
ラーメンをズルズルと食べながらテウチに尋ねるナルト。

「さすが、ナルトだな。情報早ぇじゃねえか」
「おっちゃんには敵わねえけどな」
「ははは。そりゃ年季が違うからな。負けてたらこの商売できねえよ。ほら、これに詳細を記しておいた」
スッと、封印のされた巻物をナルトに差し出すテウチ。

「サンキュー、おっちゃん。じゃあ、これ」
ナルトが代わりに差し出したのは、知る人ぞ知る砂の特産品で、幻のと言われるほど希少価値の高い銘酒。
その名も『男泣き』。
飲めばあまりの美味さに泣かずにはいられないとか…。

「おお!ナルト、でかした!」


実は一楽で売っているものはラーメンだけではない。
テウチの独断と偏見で選ばれた人間に対してのみ、メニューにはない『情報』も売られているのだ。

ラーメン一楽、店主テウチ。
趣味はラーメン作り。
実は、数年前まで暗部の情報部隊長を務めていたのだ。
現在は脱サラ…もとい、暗部は引退して表向きはラーメン屋1本で生活しているのだが、情報部隊長の習性だったり、依然として繋がっている方々にあるツテだったりのおかげでテウチが持つ情報量は絶大だった。
それはもう学校の7不思議や主婦の噂話から、里の存続に関わるような重要機密までたっぷり。
テウチはその手持ちの情報を、それを必要としている気に入った人間に提供しているのだ。
だから、商売というよりはテウチの好意。
そのため好意に対して返すものはお金ではなく、テウチが喜ぶ物だったり、違う種類の情報だったり、追加オーダーだったり、店の手伝いだったり色々だ。

また、会話から分かるように、テウチはナルトが実はドベではなく、こっそり暗部に所属していたりすることももちろん知っている。


11:00
看板娘のアヤメが店の前に暖簾を掲げる。

「今日のスープもいい出来だ」
自信に満ちたテウチの表情。
ラーメン一楽、営業開始。


12:00
もっとも忙しいお昼時。
ラーメンのどんぶりも客と調理場を行ったり来たり忙しいが、『情報』も飛び交っている。

客の会話の様子を、ほんの一部だけだが覗いてみよう。


「アスマ上忍、紅上忍と付き合ってるらしいぜ」
「へえ〜」
「なんだって!オレ、紅さん好きだったのに!」
「マジかよ!?ご愁傷様〜」
「あのビュリホーなお身体も熊のものかー。がく〜ん」
「…お前、身体目当てかよ……」
「お前も男ならわかるべ!?ボン!キュ!ボン!は男の夢!」
「……。まあ確かに。」
「…アスマ上忍と言えば、オレ、この間あの『写輪眼のカカシ』とアスマ上忍はできてるとかいう話も聞いたんだけど…」
「おいおいおいおい!それ面白いな!マジかよ!」


「特上の不知火さん、今度大きな任務があって、その結果次第で上忍に推薦されるらしいわよ」
「わお!出世じゃん!チェックしとかなきゃ」
「好物でも差し入れる?」
「何好きなんだっけ?」
「確かカボチャの煮物じゃなかった?」
「差し入れに『カボチャの煮物』はちょっとね〜」


「コノハ社の売り上げがさ〜」
「ヤバイよなあ…。ボーナス出るかなあ?」
「あの人が来てからIT関係、独占状態だからなあ…。でもさあ、いい仕事するんだよなあ、確かに」
「受付の方にいるえらい美形のやつだろ?まいったよ、オレの彼女が夢中でさ。半分追っかけ状態だよ。ちくしょう!仕事ができて顔もいいなんて反則だろ」
「うちも奥さんがさ〜。何度クナイを投げてやろうかと思ったことか…」
「おいおいやめとけよ。暗部の護衛付いてるらしいぜ?」
「げっ!!命拾いしたぜ…」


人気忍者・高給取り忍者の近況や恋愛事情から、企業の人事異動・運営状態、等等。
多くはちょっとした話の種だったり他愛のない情報、つまりトリビアだが、使いどころや他の情報と合わさることで中々な情報に化けることもある。
次々とラーメンを作りながら、テウチは情報収集にも励んでいた。
何人もの訴えを同時に聞き、見事に聞き分けたと言う逸話がある聖徳太子もびっくりな耳である。


14:00
昼時も過ぎ、一休み。
店の裏手で軽くストレッチ。

ん?

テウチの細い目が鋭く光った。

「そこのお前、上手く化けちゃいるが、手配書『と-0105』の雨隠れの抜け忍トモゾウだろう」

テウチがそう指摘した瞬間。
トモゾウがテウチの額目掛けて手裏剣を投げた。
普通のラーメン屋の主人ならそこで人生が終わっていただろう。
しかし、テウチは元暗部。
人差し指と中指で挟んで、軽々と手裏剣を受け止めた。

驚いたのはトモゾウ。
殺す気で投げた手裏剣がラーメン屋に受け止められたのだ。
そりゃあショックだろう。

お前一体何者だとトモゾウが問おうとした時、テウチの首が軽く左に傾けられ、空いた空間から何かが猛スピードで飛んできてトモゾウのこめかみに当たった。
ゴン!と鈍い音がして、トモゾウが昏倒。
カランと高い音を立ててトモゾウを昏倒させた物体も地面に落ちた。
一楽の烙印が入ったお玉だ。

「やったねv」
「アヤメ、お前は商売道具をなんだと……」
「いいじゃない。それにこの間お父さんだって菜箸で磔にしてたでしょ。その前は包丁で、『またつまらぬ物を斬ってしまった…』とか言ってたし」
「……。さて、コイツを引き取りに来てもらうか」


14:30〜17:00
休憩と仕込み。


17:00
そろそろ夕食時に向けて忙しくなる時間帯。
夜のラーメン一楽営業開始。


18:00〜20:00
任務を終えた下忍の子供たちが上忍の先生と食べにくることもしばしば。

お、今日はアスマ先生のところの子達か。

「やった〜!アスマのおごり〜!おじさん!特製チャーシュー1つ!」
「僕は特製ネギチャーシューを特盛りで!!それからチャーハンと餃子!」
「え〜と、この、一番高いラーメンで」
上からいの、チョウジ、シカマルである。

「おいおい、お前ら、ちょっとは遠慮しろよ」
影でこっそり財布の中身を確認するアスマ。
彼が頼んだのは店で2番目に安いラーメンだった。

「ちくしょう。昨日金下ろすの忘れてたぜ。やべえやべえ」
と小さな呟き声が聞こえた。

生徒思いの先生にはチャーシュー1枚サービスだ。


22:00
閉店。
今日もいい一日だったな。

アヤメを一足先に家に帰し、片付けと明日の仕込みの準備をして、一服。

トントン。
静かに扉をノックする音。

「…。おう、入れ」

「こんばんは。テウチさん」

「よく来たな。イタチ」
笑顔で向かい入れる。
「本日最後のラーメン、食べるか?」




ラーメン一楽には毎日色んな客が来る。

以上、平凡じゃないラーメン屋のある平凡な一日。





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具体的なネタの内容までもらっておきながら、UPまで時間がかかってしまいました。
ほとんど貰ったネタのまま(爆)ですが。

47474hit申告&リクエスト、ありがとうございました!

2004/6/21