かみさま イタチに抱きしめられると安心した。 嬉しくて、ちょっとあったかくて。 そしてちょっとドキドキする。 イタチの笑顔を見ると嬉しい。 そんなに大きく表情が動くわけじゃないけど。 普段はきつい印象の目が優しくなる。 僅かに目じりが下がり、口角が微妙に上がる。 もっと笑ってほしいと思う。 オレに…… イタチと会う前は知らなかった。 こんな気持ち。 でも、ちっとも嫌じゃない。 ナルトに会って自分でも驚くことばかりだ。 自分にはこんな一面もあったのかと感心する。 他人から見た自分の評価はこんなものだ。 さすが“うちは”の次期跡取り。 写輪眼も使えるし、忍として才能も申し分ない。 しかし、 まだ子供なのに、表情がない。 特に笑顔になることはない。 人間味がない、心まで忍。 容赦のない、冷徹な人間…いや、暗殺機械。 そんなオレがナルトの前ではどうだ? 穏やかな気持ちでいるオレがいる。 守ってやりたいと思う。 心も身体も。 雨、風に打たれ、ボロボロになっている子猫。 生きるために人間に人間の側にはいるが、信用はしていない。 飼われてはいるが、野性を捨てていない。 そんなイメージ。 初めて会った時、ナルトの目が“オレ”を見ていた。 火影様からの紹介で口ではカッコイイとか言っていたが、目は“それがどうした?”と語っていた。 ナルトは“うちは”イタチではなく、“オレ”をまっすぐ見ていた。 それが無性に嬉しかった。 オレはナルトを守る。 これは絶対。 でも、同時にオレもナルトに守られている。 「よくできたな、ナルト」 クシャリと手触りの良い髪に指を通し、ナルトの頭を撫ぜた。 今日の授業はクナイの扱いについて。 ナルトは護身用にクナイを持っていただけあって、簡単に説明し1度実演しただけで基本的な動きは見事にしてみせた。 自己流だけあって構えに変なクセが付いていたが、指摘すればすぐに修正してみせるという柔軟さを持っていた。 「…当然」 生意気そうにも聞こえるナルトの反応だったが、ナルトが猫のように目を細めて気持ちよさそうに頭を撫ぜられているのを見て、イタチも目元を緩ませた。 2人の間に流れる穏やかな時間。 2人が会えてよかったと思う。 今日も2人で過ごせたことが嬉しいと思う。 こんな穏やかな日が続けばいいと思う。 続いていくようにと、祈った。 |