ナルトが帰宅して目にしたのは異様な光景だった。 ルシファードが腹を抱えて、震えながらうずくまっていたのだ。 「ルシファードさん?どうし… 「ひ〜、わ、笑い死ぬ……!」 体の具合でも悪いのかと一瞬心配したナルトだったが、その心配は不要だったようだ。 「なに?またコノハ・ヘブン?」 少し引き気味にナルトが尋ねた。 ナルトが「また」と言ったことからわかるように、ルシファードは以前にも今回のように笑い発作を起こしていた。 いつもその原因はコノハ・ヘブンという雑誌だ。 里で、特に女性に大人気らしい。 一部の男性にも好評らしい(ルシファードを代表として)。 里で人気の高い芸能人や忍者の写真を含む記事があったりと、娯楽雑誌の一種なのだが、小説――オリジナルな話もあるが、実在する人物をモデルとした話が読めるという点で他の雑誌と趣を異にしていた。 しかも、その小説のジャンルにはいわゆるボーイズ・ラブとか、耽美と評されるものが多々含まれていた。 普通の男性なら抵抗のある内容だと思われるが、ルシファードには違っていた。 彼はこう言う。 「ありえないからこそ、現実と、作者の妄想の産物の差が笑える」と。 「まあ、そんなところなんだけど。例のイルカ先生×オレの話が書き下ろし付で単行本化したって、その単行本を受付の子にもらったんで、せっかくだから読んでたらいろいろとおかしくってさ〜」 「へ、へえ〜(汗)」 「なんか、オレ、イルカ先生と結婚しちゃってるし、誰だよ!?みたいなオレの両親登場してるし、ハネムーン行って、オレとカカシ先生の浮気疑惑があったり…た、たまんねえっ…!」 可笑しかったのを思い出したのか、再び爆笑して床を叩くルシファード。 「…。あのさ、ルシファードさん、イルカ先生の様子は大丈夫だったてば?」 いつだったか、コノハ・ヘブンの存在と悪ふざけするルシファードのことで悩んでいたイルカのことを思い出し、ナルトは心配しながら尋ねた。 「ん?なんか白くなってたな…。イルカ先生、真面目だからなあ…。小説の中ではなかなかいい性格だけど。ちょっとからかい過ぎたか…?」 「…!」 案の定。今度は何をしたんだ、ルシファードさんっ! 「からかうって…?」 冷や汗をかきながらナルトはルシファードに尋ねた。 「ああ。単行本のここにあらすじ書いてあるだろ?」 そういって、ナルトに見せる。 「とりあえずあらすじでオレとイルカ先生が結婚することはわかったから、ちょうど通りかかったイルカ先生にも本を見せて、こう肩を組んで耳元で、『あなた、ハネムーンはどこにする?』って囁いてみた」 ↑ 因みにルシファード、今の行動をナルトに対して実践しました。 で、再現されたナルトはたまらない。 低音のやけに色っぽい声を注がれた耳をギュッと押さえ、顔を真っ赤にしていた。 通常では考えられないくらい心拍数が上がっていた。 (やべえ。オレ、忍者失格!?こんな動揺するなんてっ!) 内心慌てるナルトをよそに、ルシファードが続ける。 「そのあとイルカ先生、真っ赤な顔して風のように急にいなくなってさ。去り際、『平常心、平常心。人の噂も75日。…75日って、いつから数えて75日!?』って言ってたかな。それにしてもさすが忍者。人間離れしてるよなー。あ、上忍の人も驚いてたから、イルカ先生が特別足速いのか?」 「イルカ先生……(゜д ゜;)」 イルカ先生は苦労人…。 |