| マンガびとの館 | ||
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| ■ちばあきお +++『キャプテン』(集英社)+++ その1 | ||
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□はじめに 【wat】 今回から始まりました、「漫画トーク」。毎回、漫画評論系サイトのオーナー様をゲストに迎えて、熱い議論を繰り広げていこうと思います。というわけで、第1回目の記念すべきゲストは、「マンガびと」管理人のhisさんです。よろしくお願いします。 ※編注 この企画は、懇意にしていただいている漫画批評さんからはじまりました。マンガ評論系のサイトを運営する管理者との対談という企画だそうですが、栄えある第一回のゲストに私が選ばれました。ヤホ(笑) そういうわけで、ホストはぼくではありませんので、完全に受身のマグロモードになってます(笑) 漫画批評のwatさんがどんな展開に導いてくれるのか楽しみでした。 ちなみに、この対談のログは漫画批評さんの方ではすでに公開中です。 【his】 よろしくお願いします。 【wat】 さてさて。今回の題材ですが、hisさんからの熱い要望があったようなないような(笑)。ちばあきお『キャプテン』でお送りしたいと思います。 【his】 あったようなないような・・・気のせいです(笑) ※編注 実はかなり折衝しました(笑) まぁ、そう、おおげさでもありませんが、9月のあたまにwatさんから依頼があって、それから一ヶ月ちかく話し合いましたから。チョイスにはそれなりに気を使いました。 ここでどういう流れだったか、すこし書き出してみましょう。
「あのやりかけの幻の企画「帯ギュ」トークをもう一度」とのこと。 ぼくはもちろん断りました(笑) 「帯ギュ」はもういいです。 その後 ぼく『夏子の酒』藤子Fモノなどなど wat『I's』『じゃじゃ馬グルーミン☆アップ』などなど ってな感じでいろいろと提案しあい、結局、ちばあきおものに落ち着きました。 漫画批評側のチョイスの基準は「漫画批評で扱っていない作品」。これは当然ですね。それ以外の、例えば 『I's』なんかをやりたい、というのはおもしろいです。残念ながらぼくは単行本を途中までしか持っていなくって、なおかつ、今後揃える気もないのでお断りいたしましたが、でもおもしろい素材だと思います。 いわゆる、名作然とした作品ではなく、こういう快楽原則に忠実な作品を選ぶのは、漫画批評はマンガを大衆娯楽として捉えている、そういう姿勢の表れだとぼくは思います。そういう姿勢はぼくは好きです。 【wat】 なんだか1回目に相応しいかなりの名作でありますが、hisさんはこれ初めて読んだのはいつ? 【his】 ぼくは、小学校の時ですね。 【wat】 ああ、やっぱり。僕も小学生の時。 【his】 イガラシ編のあたりだったと思う。 【wat】 ああ、なるほど。『月刊ジャンプ』で読んだ訳ですね。 【his】 いえ、アニメでやってた影響で読みました。 【wat】 そっちか(笑) 【his】 月ジャン」読み出すのはもうちょっとあとでした。『やるっきゃ騎士』のあたり(笑) 【wat】 で、僕は今回ジャンプコミックス版を買いそろえてみたんですが、1巻の初版がなんと1974年4月! 【his】 74年ですか(笑) 思ったより古いですね。 【wat】 僕は生まれてないです。 ※編注 ぼくは生まれてましたが当然リアルタイムでは読んでません。 【his】 アニメは見てないですか? 【wat】 見てないですねえ。 【his】 キャプテンのアニメは『あさりちゃん』の裏番組だったんですよ。 【wat】 ふーん。 ※編注 あっさりと切られてしまいました(笑) 『キャプテン』がアニメでやってたのは小学校3、4年生のころなんですが、ぼくはこのころあまり野球には興味なくって、『あさりちゃん』のほうがよほど大事な時期でした。 『キャプテン』との出会いはこの後。放映終了後、友達から単行本を紹介されまして。 それがまぁ、おもしろいのなんのって。 呪いました。『あさりちゃん』なんかが好きな自分を。なんで『キャプテン』を観なかったんだ、と。 □古典と現代、整合性と作家性のはなし 【wat】 hisさん、何年生まれでしたっけ? 【his】 ぼくは73年、早生まれです。 【wat】 ああ、そうなんですか。なるほど。 それでというかなんというか、やっぱり全てが古い。で、今回もう一度読みかえしてみてですね、この作品って「古典」として見るべきなのか、「現代」の視点で見るべきなのか迷っちゃう所があったんです。 【his】 えーと、そうすると、たとえば『ドラえもん』なんかはどっちに分類しますか? ※編注 ここでのこの質問は、古典と現代との線引きの話ができると具体性を帯びてくるだろうなぁ、とまぁ、そんな程度の質問です。 ただ、何年もずっとかわらないパターンで娯楽を提供できる『ドラえもん』や『サザエさん』のようなエンドレスな物語と”時代性”そのものが作品の面白さとシンクロしてしまうようなものと、ここで区別できるとわかりやすいとは思いました。 【wat】 うーん、そのあたりはまた微妙は話になってくると思うんですが……。例えば時代背景なんかはいいと思うんですよ。ただ、表現技法とかそのあたりはやっぱりその後の進化がめざましかったんで、いろいろな問題点があって。 【his】 うん。 【wat】 例えば最初の方。谷口が入部するときに最初に話しかけるのが、多分後の丸井だろうと思われる人物。でも、このあたりかなり曖昧になっていますよね? 【his】 曖昧、というのは? 【wat】 この人物が後の丸井だという証明がないというか。あくまで憶測でそうだろうと推測するだけ。 【his】 あー、でも丸井だよね。コイツって(笑) 証拠なんてないし立証できないけど、絶対丸井という自信はある、という感じ。 【wat】 でも、この丸井っぽいのの次に、谷口に「こんな所で着替えをするな」というような注意をするチビは、このあと登場しないし。 【his】 そうですね。 【wat】 だから、なんだかこれはミスのような気がするんですけれど、時代背景的にこんなレベルは許されていたのかもしれないし。 ただ、時代背景をどの程度情状酌量していいものかはすごく判断が難しいと思うんです。 【his】 watさんはわりと「ミス」という表現をしますが、それって、いつもおっしゃる、物語としての完成度の問題において「不完全である」という意味での「ミス」ですよね。 ※編注 ここらへんの問題はけっこう根深いものがあると思います。 物語の整合性を重視するwatさんと作家性を重視するぼく。本来は対立項ではないんですが”どちらをより重視するか”という対立はやはりあるのかもしれません。対立といえばおおげさですが(^^; 【wat】 大まかに言えばそうですね。でも、例えば「辻褄が合わない」といった事も含みますから。よくあだち充先生が、トビラであやまっているような。 『H2』の「誕生日間違えた!」とか(笑) 【his】 はいはい(笑)。『モンキーターン』で事実誤認があったり、とか。 【wat】 『帯ギュ』の「女子はなかった」とか(笑) 【wat】 それと、技法的にはしょうがない面が結構ありますよね。 【his】 技法的に、とおっしゃいますと? 【wat】 例えば、最初の頃はトーンがないとか。 ※編注 >技法的にはしょうがない面 これは「古典と現代」にかかります。 でもね・・・ あとで気がついて訂正してますが、最初のころからトーンって使ってるんですわ(ワラ 【his】 トーンは2巻くらいですか? 【wat】 いや、どのくらいだろう……15巻かな?
【his】
谷口の金成中戦ではトーン貼ってませんか? 「やつらピッチャーが投げると同時に走ってる」というセリフのあるページあたり。
【wat】 おおうっ、貼ってる(笑) 気づかなかった……。 【his】 松下が「おれは満足だね たとえ負けたとしても」といってるコマがたぶん最初じゃないかな。 【wat】 ホント、ここだけ何故かトーンですね。前後はそうじゃないのに……。 【his】 トーンの試し貼りって感じですかね 。 【wat】 うーん、かもしれません。で、結局最後までトーンはすごく少なくて。全国大会で、外野が芝だったりするとたまに貼るくらい。 【his】 基本的にはほとんど使いませんよね 。 【wat】 そうそう。だからすごいですよ。全部カケアミ(笑) 【his】 いいですよね。金成中のユニフォームとか全部手描きだし(笑) 【wat】 ドットだもんなあ(笑)。まあ、だから例えば「月刊連載なのに、背景が白い」とかいまだと言われちゃうんだろうけど、そんなことはないと。 【his】 言う人は言うよね。 【wat】 『キャプテン』に関して? 言いますかねえ。 【his】 『キャプテン』では言わないだろうけど、たとえば『幽遊白書』後半で(作者の)冨樫(義博)氏がアシスタントつかわないで、ひとりで描いてた回があったでしょう? 【wat】 はいはい。 【his】 あれ、かなり非難されたんだけど。それこそ「雑だ」とか「トーン貼ってねー」とかって今も言われるよね。 【wat】 いわれましたねえ。 【his】 この辺の感じ方、というのかな 。 【wat】 hisさん、どっち派なの? 【his】 ぼくなんかには、結構みんな絵にこだわってるじゃん、てな感じで。 【wat】 あれはあれでいい? 【his】 ぼくは、ぜんぜんOKなんですよ 。 【wat】 ふーん。 ※編注 ここらヘンの話題はちょっと危険でしたね(笑) 反省してます。 ちなみに、ここも「整合性」と「作家性」、どちらの立場を尊重するかで分かれます。 【his】 出してきたものがすべてなんだから。基本的にぼくは批判しない。 【wat】 なるほど。で、話が戻るんだけど、個人的に「時代」を感じるのが「差別用語」(笑) 【his】 なにかありました?(笑) 【wat】 特に青葉の部長が言いまくり(笑) 【his】 はい!きました!! 「めくらめ!」「きちがいか!」ですね(笑) 【wat】 そうそう(笑) あと、体罰のオンパレードとかね。あのあたりは、古き良き時代のスポ根で、いいかんじだなあと。 【his】 部長ね(笑) 【wat】 あのキャラクター、面白いと思うんですよ。 【his】 部長って、かなり重要ですよね 。 【wat】 ねえ。墨二に監督がいないぶん、とくに。 【his】 そう! 基本的に、墨二の野球には大人がいないんですよ。 【wat】 近藤のとーちゃんくらいで 。 だからこそ、各キャプテンの存在感が目立つと思うんですね。 【his】 あれは、近藤が子供だからでてきたキャラだと。 ※編注 墨二の野球には大人がいない。 今回の『キャプテン』で、ぼくが事前に用意した数少ないネタのひとつがコレだったんです。瞬殺されましたが(笑) 墨二や、のちに谷口君が進学する墨高のは監督がいないんですよね。でも相手のチームには大人の監督が大抵いるんです。ちばあきおは、大一番であればあるほど、大人対少年野球の対比を使ってくる。ここらへん、つめて考えるとおもしろいと思うんですけど。どんなもんでしょ? □物語を印象付ける、擬音のはなし 【wat】 あと、表現として時代を感じるというか面白いというか、とにかく選手がダイレクトキャッチした後って、かならず効果音が「ゴロゴロ」(笑) 効果音の表現は結構重要だと思うんですよ。 【his】 あれは、かなりウケがいい表現のようですね、「ゴロゴロ」。なぜ「ゴロゴロ」が重要だとお考えですか? 【wat】 なぜでしょうねえ……、なんというか、キャッチの瞬間ではなくその後の様子を描くことで、結果よりもプロセスを描いているような気がするんです。 【his】 はいはい。西部劇の「ニヤリ」と同じ効果ですね。 【wat】 基本的にこの作品の主題は「努力」だと思っているので、それが一番顕著に表現されているような。 【his】 「がんばる、がんばる」を表現すると「ゴロゴロ」になる、と。 【wat】 あ、そうだ。他の面白い効果音、応援団の「ワッセ、ワッセ」。 【his】 「ワッセ」いいね(笑) 【wat】 いいですよね。本物は絶対に「ワッセ」とは言わないもん(笑) 【his】 でも、なんかいいリズムですよね、「ワッセ、ワッセ」って。がんばってる感じす るもん。応援ですら。 【wat】 なんか、この作品の応援って、ちっとも具体的じゃないんだけど。でもいい。あ、ヤジは具体的か(笑) 【his】 丸井とか近藤のヤジね(笑) 【wat】 そういえば、実際に応援をがんばっているトピックがありましたね。運動部員とかが 【his】 イガラシ編だったかなぁ?じい〜ん ってやつ。 ※編注 「古典と現代」という対比ならこのヘンの話が一番しっくりきますね。 時代の古さって、どんなものが定型になってるかででてくると思うんですが、擬音はそれを図るのにピッタリです。 □キャラクターの話 【wat】 キャラクターの話に入りたいんですが、まず、歴代キャプテンについて。 多分、一番好きなのはって聞いたら、誰もが間違いなく谷口かイガラシになると思うんですが、hisさんは? 【his】 谷口くんかな。たぶん 。 【wat】 僕は最近、丸井が結構好きで。でも、やっぱりイガラシかなあ。 【his】 なんか、「歴代ガンダムでなにが一番すき?」って話と同じかと(笑) なんか、日によって違うんですよ。一番が。 【wat】 そうですね(笑) で、谷口君なんですが、この人がいわゆる墨二の「がんばる」カラーを作った人でありますから、当然カリスマ性は高いわけで。そんでもって、結構情けなかったりする訳なので、僕なんかは「ああ、キャラクター作りが上手いなあ」と感心してしまうんですね。 【his】 ぼくは、よくわかんないんですよね。谷口くんのなにがよいのか。好きなんだけど、魅力をあまり説明できないんです。 【wat】 ああ、それはわかる気がする 。 【his】 キャプテン』連載の経緯なんですが、もともとちばあきおさんは「様々なキャプテン像を描くオムニバス形式で」ということで連載を開始したそうですね。 その第1話が「谷口君」だったと。ところが、担当の谷口氏の薦めで(笑)、谷口キャプテンでずっと行こうということになったらしいです。 そこでね。オムニバスでやっていく、という形式を変更してまで谷口君を続けた理由ってなにかと。よく考えると結構、思い切った決断だったんじゃないかなぁ、とも思ってしまうわけです。 とにかく、谷口君のキャラの魅力が、第1話にして充分に発揮できている、と。そういうことですよね、きっと。 【wat】 でもそれなら、さっきのミスというか、齟齬の理由はよくわかりますね。「読切」の予定なら、丸井のキャラクターなんて考える必要性もなかったわけで。 【his】 あ、はいはい。そういうことです。それよりもwatさんのいうとおり、谷口君のつくりだした「がんばる」カラーが、第1話に凝縮されている、という予測がまず成り立ちますよね。 そういう観点で、第1話を見ていくと、結構おもしろいんですよ。全部読まなくても第1話を読めば、半分くらい、理解できそうな(笑) 【wat】 谷口がキャプテンになったのが唐突な気がしていたんですけれども、実はそうではないと。 【his】 いや、唐突は唐突でしょう(笑) 【wat】 でしょうか(笑)。ともかくですね、僕は唐突だったにしても、その後の3人のャプテンともども、その「がんばる」をこれでもか、と裏付けているわけです。その裏付けがなんともまた、いい。 この点が、僕が「プレイボール」より「キャプテン」が好きな理由だったりするんです。 【his】 はい。よくわかります。 【wat】 で、谷口以外のキャプテンなんですが……、僕が最近丸井がいいなあと思うのは、谷口をひきずって、それでも自分のチームを作り上げなければならないという、あの、情けなさというか微妙なところが妙にリアリティがあるところ(笑) 【his】 イガラシの誘導訊問にひっかかったようなシーンとか、いいですよね。 【wat】 いいですね(笑) 【his】 すごいミジメで(笑) 【wat】 ああ、いいやつだなあという感じもあって(笑) 【his】 たぶんみんな言うと思うけども、4人のキャプテンがそれぞれ個性的でありながら、一貫したテーマで描きつづけて、ひとつの作品としてまとまりのある仕上がりになっている、と。 【wat】 そうですね。僕がその点で上手いなあと思うのが、近藤。 絶対に一番「ものを考えていない」存在であるわけじゃないですか、彼が。 でも、「将来の墨二」を考えたのは、彼だけ。まあ、とうちゃんのアドバイスがあったわけですが…… 【his】 さっきもでましたね、近藤茂太さん。 ・・・つづく
2001/10/20に行われたチャットのログを編集しました
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