| マンガびとの館 | ||||
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| ■七三太郎/川三番地 +++『Dreams』(講談社)+++ | ||||
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□しなる顔 その1 「七三太郎、川三番地コンビ」の野球マンガだ。現在も週刊マガジン連載中で、単行本17巻目でやっと地区予選決勝。これまでの彼らの実績(?)からいって、長期連載になること必至の作品である。 このコンビでは、長編『4P田中くん』が有名だ。他には月刊マガジンで『風光る』を連載中で、これもまた、とんでもない長期連載となっている。 ・・そんなことはどうでもいいのだが、ここでぼくが言いたいのは「全部、野球マンガである」ということだ。つまり彼らコンビは、野球で結びついているといえるし、特に作画担当の川三番地は、ここ十数年「いかに 野球というスポーツの運動を絵で見せるか」ということだけに専念してきた作家だ。その密度はハンパじゃなく、濃いと思う。結果として、運動している瞬間をディフォルメすることに特化した稀有な作家のひとりとなった。 たとえば、といてもホント、なんでもよいのだが、例えば。どの作品のどのページでもよいから川三番地の絵を見て欲しい。 たとえば、キャラクターの顔。顔の輪郭が ゼリービーンズのように歪んでいるのはなぜだろうか。
たとえば、野球のユニフォームは空気抵抗を減らす方向で開発されている。しかし、川三番地の描くユニフォームが、土建屋のニーチャンの作業服のようにダボダボしているのはなぜだろうか。 これらは、すべて「野球」を表現しようとした川三番地の行き着いた「最終形態」だと思う。 「歪んだ顔の輪郭」は 野球の曲線運動に反応するがごとく、確信的に歪んでいく。脚腰を軸になされる運動に沿って描かれる曲線のイメージが、顔の輪郭すら支配していくという、いわば動線的なディフォルメだと思う。ベンチにすわった選手の歪んだ顔はしなる運動を感じさせ、座っているだけにもかかわらず、彼らが運動しているようにすら錯覚してしまうのは、そのためではないか。 オノマトペもまた、ボールの軌跡を描くかのようにデザインされている。ユニフォームのダボダボしたゆとりには、運動の柔軟性が現れている。 □しなる顔 その2
これらは、ぼくの個人的な「こじつけ」にすぎないのだろうか?その答えはたぶん、川三番地が他の球技を題材にした作品を描いた時に、はっきりすると思う。たとえば、上記で指摘した絵柄のもつ意味が、仮にサッカーを題材にしたなら、どういう感じがするか。たぶんオノマトペを除いて、顔の輪郭の歪みやユニフォームなどはしっくりくるだろうと思う。野球と同じく透明感のある、流れるような運動に沿った表現をしてくるにちがいない。(ただ、オノマトペに関してはすこし疑問符がつく。これは、あくまでも野球のボールの質量感からきたデザインだろうから、サッカーボールで同じような手法をもちいたとしても、おそらくは印象が変わるだろうから。) とにかく川三番地の描く運動は、すごいと思う。 最後になるが、七三太郎とのかかわりについてすこし述べてみたい。七三太郎は、とにかく理詰めである。行為にはそれぞれ理由があるべきだ、という信念には関心させられる。訓練にはそれぞれの理屈があって、それを正しく理解、租借した上で行われなくてはならない、という考え方は作中、随所に見られる。 このような七三太郎の信念は、ある意味で野球の汗臭さを払拭するものでもある。もちろん、七三太郎は流す汗を否定していない。むしろ肯定しているといってもよいだろう。しかし、それ以上に質を求めていることはまちがいない。ただ「努力に裏付された野球」ではなく、さらに「理屈の正しさに裏付けられた努力」という項目がつくのだ。 このような、七三の資質に呼応するかのように、川の絵は汗のある運動ではなく、ある種、しなやかな透明感を創りだしているのだろう。あの、歪んだ顔も、すべてはそのために生まれてきたものなのだ。 これほど洗練された運動を見られるのは、とてもうれしい。 □しなる顔 その3 いま、『Dreams』という作品自体に全然ふれていないことに気がついたよ。もちろん好きで選んだ作品なんだけどな。 あんまりいうことがないんだけど、この作品のメッセージ性というやつを(あんまりいいたくないけど・・・)あえていうと「いまの若い奴に、中高年以降のいう精神論が役に立たなくなっている」ってことを理詰めで肯定している作品だな。七三太郎もずいぶんなお年だと思うけど、いい人だな、この人は。すくなくともオレと敵対しない。 あと「見た目で人を判断しちゃ、いけないよ」ってのも、しきりにいってるけどどーでもいいや、それは。 ともかく、いいひとだ。 ちなみに、七三太郎はかの有名な「ちば3兄弟」末弟だ。4人兄弟で、長兄ちばてつや、次兄ちばあきお。三男は忘れたけど、マンガの原作を何本かやってたはず。北斗3兄弟に匹敵しますな。
2000/04/09 |