| マンガびとの館 | |||
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| ■楳図かずお +++『漂流教室』(小学館)+++ | |||
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□恐怖のスタンダード 15年ぶりくらいにこの作品を読む。ずいぶん昔のことなので、ひさしぶりに読み返すとさすがに、小学生だったころの読後感とは少々印象が違っていた。そりゃそうか。 大雑把にいって子供のころ読んだときはすごくこわかった。今、読むとそうでもないのだが、そのころのぼくは、どうしてこわかったのだろう? で、楳図である。ぼくは正直、楳図は好きではない。それは好みの問題なのでしょうがないが、いわゆる「恐怖マンガ」と名のつくジャンルは、ほとんど読まないのである。もちろん「理由などなく」だ。それはともかく、楳図は恐怖マンガの第一人者である。このひと以後、エピゴーネンを数多く生み出してきたが、それには理由がある。 そもそもエピゴーネンを生み出すには、模倣すべき、なにかわかりやすい事柄が存在する。しかし「数多く」生み出すのは、そう簡単なことではない。多くのマンガ家が模倣するのわけだが、その中には達者な人材もあれば、スキルの低いひとだっている。しかし楳図マンガは、そういう技術力のレベルを問わず模倣されていったし、そしてそれらはすべて「楳図マンガのエピゴーネン」たりえた。そこからなにがいえるかといえば、楳図は恐怖表現を、ある一側面において記号化してしまった、といえる。 たとえば、今ではすっかり、楳図のパロディとして定番になってしまった「あの顔」がそうだ。 目の下や口のしわなどを陰影で描く、アレだ。楳図のあれは「なにかものすごい恐怖を見てしまった」という記号になってしまってたのである。記号として成立してしまったからこそ、誰もが気軽に利用できるようになったし、読み手もそう理解しているからこそ、パロディとして通じるのだ。 しかし、楳図マンガの恐怖は、もちろんこれだけに終わらない。大枠のスタンダードとして「恐怖の記号」としての表情がある点はすでに述べた。そして、そのバリエーションには「毛のはえたオノマトペのデザイン」や「闇としての墨ベタの面積の広さ」などがある。しかし、これらの絵的な側面を模倣しても、それだけではギャグやパロディとして成立するかもしれないが、実のところ楳図マンガの再現はできないのだ。楳図の表情のパロディは、これまで多くのマンガ家が利用してきたが、そこには楳図マンガのもつ、恐怖やなんとも筆舌しがたいニュアンスといったものは、得られない。楳図マンガには、もうひとつの謎があるのだ。 それはコマの分割である。 楳図は、ひとつの動作を通常の3倍、4倍ものコマを使って執拗に追いつづける。それらのコマのアングルは、ただアップ、ロングを無意味に繰り返しているだけように見える。ディテールを追うわけでもなく、具体的ななにかを物語るわけでもない。ただ、繰り返すだけだ。そのコマ数には、明確な意思をまったく感じない。ただ、むやみに多く、そして繰り返すのだ。 では、これらのコマは無駄だったのだろうか? もちろん、そうではない。実は 動作の無為の分割こそが、恐怖のスイッチになっている。焦らされる間が、楳図マンガに独特ニュアンスと恐怖を、生み出しているのだ。 ためしに、楳図のパロディを使ったマンガを見て欲しい。理にかなったコマ構成では、楳図流の恐怖は生まれてこないことが、よくわかるだろう。楳図の再現は、 恐怖の表情ではなく、コマ構成のレベルにあるのだから。 漂流教室は、いわゆる恐怖マンガではない。しかし、怖い。それは絵が怖いし、さらにはコマの執拗な分節からくる時間の間によって恐怖を助長するからである。
これはうまい!! □ウメズを理解しない男 子供のころに読んだ記憶とかなり違っている。というか、忘れた(笑)オチなんて、全然おぼえてないや。 翔くんたちって未来にのこったんだなぁ。なんか、意外だ。読んでるあいだって「オチは現代に帰る」ってことが前提だったからなぁ。だからオチがどうなるか、なんてまったく気にならんかった。 だいたいこのマンガって「状況の設定の特殊性」で驚かせるタイプなわけだし、まさかラストにあんだけリキ入ったメッセージを聞かされるとは夢にも思いませんでしたマル でも、話のパターンとして「おとな」がドンドン死んでいくってのは、わかりやすくてよかった。なんせ楳図マンガでいうおとなは「合理性のメタファー」だからな。怪虫騒動とか起きる話に「合理性」があったらまずいもんなぁ。なんせこれは「恐怖マンガ」じゃなくて「冒険ロマン」の夢物語なんだし。 でも、そのわりには翔ちゃんたちって、現実社会に戻らないのはおもしろい。「たくさん悲しいこともあったけど、ぼくたちは成長しました」とか言ったりする「大団円によるカタルシス」系のオチじゃなくて、もっと強力な試練をあたえてるし。でも、楳図さん自身は「現代社会に帰るより、全部ぶっ壊れた世界でいちから築き上げるほうがすがすがしいじゃない?」って思ってるんだろうなぁ ぼくには、それがいちばんすごい。
2000/04/10 |