が、今川焼きを持って行った場所はわかりきっている。 あの男の家に違いはない。 彼が幸せならそれでいいと思う。ただ、多少面白くないだけで。 しかしそれが今、自分がここにいることとどう繋がるのかは、本人にも不明だった。 「ん、フロイラインは?」 「あいつのところへ行っていて、おそらく今日は戻らないだろう」 倉庫の一角。 の隣には昼間、実に奇妙な時間を一緒に過ごした相手−−−金子光伸がいた。 なかなか上等な酒を飲んでいるようだ。 「飲むか?」 「いや・・・俺はあまり飲めない」 の身体は基本的に酒を受け付けないのだ。 今までも、何度かと一緒に飲んだが、最初の一、二杯で完全に酔い潰れてしまった。 いつまでも平気な顔をして酒を飲んでいられるが信じられなかった。 どうやら、今隣にいるにいる金子も、いわゆる、ざるというやつのようだ。 先ほどからかなりの量を飲んでいるように思う。 「そうなのか。で、それはなんだ? 大事そうに抱えているが」 今川焼きの袋を差して、金子が言う。 「ああ、さっき買ってきたんだ。しかし、お前はそれだけ酒を飲むところを見ると・・・」 「そうだな。普段は食わんが・・それを、俺にくれるつもりでここまで来たんだろう?」 嫌味でも何でもなく、普通に言われたものだから、も素直に頷いてしまった。 こういう台詞は、昼間のようにもっと嫌味に言われるかと思っていただけに、拍子抜けする。 「一つ貰おう」 出された手に、袋から出した今川焼きを一つ乗せてやる。 そして、自分も一つ口に入れた。 「ほぅ、お前は白あん派なのか?」 少し驚いたように、金子がを見た。 「え?」 「なんだ、店が間違えたのか? ほら、白あんだろう?」 金子は、かじった今川焼きを蝋燭に近づけ、色が見えるようにしてに見せた。 は大きな目をぱちくりさせる。 自分が買った今川焼きは全て黒あん・・粒あんだったはずなのに。 が間違えて持って行ってしまったのだろうか。 そこまで、考えたとき、は身体に異変を感じた。 身体が・・・異様に熱い。 「あ・・・・・っ」 「どうかしたか?」 白あんを見つめたきり、黙り込んでしまったを、訝しげな視線で金子が見た。 「いや・・・その、身体が・・・いきなり熱く・・・」 「?」 「あぁ・・・おかしい・・・」 が自分の身体を抱くようにして、ぶるるっと震える。 その様子を見て、金子が何かを察したような顔をした。どこかで見覚えのある情景だ。 もしや・・・? 「・・・・その今川焼き、買った時からずっと持っていたか?」 「・・・は?」 「いいから答えろ」 「いや、夕飯と・・・風呂へ行っている最中は部屋にあったが・・・」 話している最中も、身体の奥がじわじわと熱にやられていくような気がする。 は辛そうに眉を寄せた。 妙な気分だ。辛いのは辛いのだが、嫌な感じではなく、むしろ何かをどうにかすれば快感になりそうな・・・。 しかし何をどうすれば楽になるのかが、わからない。 「ふむ」 「?」 「どうやら、お前は一服盛られたみたいだな」 「何?」 「犯人はか? まさかな。 ・・・となると、月村教授か・・・それとよく似た薬を、俺も知っているからな」 の大惨事を、据わった目で見ながら金子は何やらぶつぶつと喋っている。 何の薬なのかはわからないが、楽になる方法を知っているのなら、早いところ教えて欲しい。 「で・・・、どうすれば・・?」 「ふむ」 考え込むような仕草の金子。 じろじろと、不自然に込み上げてくる熱に犯されていくを見ながら、何やら呟いている。 「よく見れば、結構可愛らしい顔をしているな。多少身長が高いような気もするが・・・肌もかなり綺麗だ。うむ、悪くはないだろう」 「何、言ってる・・・?」 「服を脱げ」 「は!?」 「お前が盛られたのは、媚薬だ」 「何故・・・」 「そんなこと、俺が知るか。とにかく、楽になりたいなら黙って言うとおりにしろ」 「・・・・・・・」 にわかに信じがたいことを、金子は言っている。 しかし、世の中にそのようなものが本当にあるということは、この間のの一件で目の当たりにしているから間違いないだろう。 何よりも、この身体の熱が、金子の言うことを疑いようもない真実だと言っている。 身体の中心・・・つまり自身が熱くて熱くて仕方ないのだ。 「どうした、一人で脱げんのか」 呆れたように笑いながら、金子の手が伸びてくる。 「あっっ!!」 「やはりな。これは、相当難儀な部類と見た」 の中心を服越しに掴むと、やわやわと刺激し始めた。 「な、な、何するっ・・・・・・ぁ!!」 「大人しくしてろと言っただろう?」 「こんな・・・あっ・・・・やめ・・・」 服越しに、擦られているだけなのにもう限界が迫ってきた。 「脱がないと汚れるぞ」 そう言われてしまえば仕方がない。 は、思い通りに動いてくれない手を必死に動かし、服を脱いだ。 「だいぶ焼けていたんだな、ここはこんなに白かったのか・・・」 感心したように金子が言う。 「ああっ・・・あっ」 今度は直に握られて、扱かれた。 「や・・・・ア・・・・・・っ・・・んっ」 両手で口を覆う。 「声、出した方が楽だと思うが?」 扱く手を早めてやると、の身体がそれに合わせて跳ねる。 「あっあっあっ・・・・・あぁ・・・も・・・・出る・・・っ」 「あぁ、出せよ」 「あーーーーーッッッ」 手の中に放った。 息が荒く、どうしようもないくらい触れられているところが熱い。 これではまたすぐに勢いを取り戻してしまいそうだ。 流石に、そこまでみっともない姿を晒したくはない。・・・例え今更だと言われようとも。 は自身を握る金子の手を払いのけた。 「も、いい・・・」 「辛いくせに、無理をするな」 「金子・・・本当だ、もう、大丈夫だ・・から」 「嘘を吐け。だったら、ここはどうしてまたこんなになってるんだ?」 信じられなかった。 の中心はもう既に勢いを取り戻しつつあった。 情けなさ過ぎる自分自身に、愕然とする。 「そん・・・な・・・」 「いいか、それは薬のせいだ。別に感情がどうのこうのという問題じゃない。だから、自己嫌悪に陥ることはない」 どこか諭すように耳元で囁く。 もう、それだけでもの身体は更に熱くなり、達してしまいそうになる。 「ああっ・・・かね・・・こ・・・」 もういっそ、この薬の勢いに任せてしまっていいだろうか。 の中でそのような思いが芽生え始める。 いや、芽生えていたのは、もっと別の感情で・・・ここに来る前からだったような気もする。 薬のことに関しては何も知らなかったが、ここに来てしまった理由は、 今川焼きを一緒に食べる相手を探していたわけではなく、失恋の傷心を慰め合う相手を求めていたのだ。 「光伸で、いい」 やはり、お見通しなのか? 熱に浮かされた頭で、がぼうっと考える。 「光伸・・・」 声に出して名前を呼ぶと、今度は身体ではなく胸が熱くなった。 今の自分はどうかしている。の口元が少し緩んだ。 「」 今度は名前を呼ばれる。更に胸の内が焦がれてしまうのではというくらい熱くなった。 ・・・欲しい。 一度覚えてしまった欲望は、なかなか止められない。 は光伸を勢いよく押し倒した。 「・・・つぅ・・・」 「あんたが、欲しい・・・」 「・・・言ってくれるな。今、俺も同じことを言おうと思ったんだ」 がたんという音がして、今度は逆にが組み敷かれた。 「く・・・ぁ・・・」 「薬に感謝すべきだな。欲しいと言っても、俺はされる気など毛頭ないからな」 そう言って、自分の指を舐めて濡らすと、有無を言わさずの中に挿入した。 きつく締められる。 「力を抜かんと、後で痛い目に遭うぞ」 「あ・・・あ・・・・・・・・」 男同士で、することを、今まで想像しなかったわけではない。 想像上ではいつもを組み敷き、する方は常に自分だったにとって、この状況はとんでもないことだ。 薬を盛られたとはいえ、自分がされるとは。 「やめ・・・・ああっ」 「往生際が悪いな。さっさと抵抗をやめて大人しくなれ」 「いや・・・だっ」 「ほう。それじゃ、少し泣いてもらうことになるが?」 くいっと、とある一点で指を曲げられた。 の目に火花か散った。 身体が、弓反りになる。全身に電気のような衝撃が走った。 「ああああああああ」 「効果的面、だな」 「やめ・・・・あっ!!あっあっ!!!」 何度もその場所を執拗に弄ぶ。 ついにが、抵抗らしい抵抗も出来なくなった。 「もぅ・・・あ・・・・ぅ・・・・・あっ」 自分の口から出る喘ぎは、既に自分のものではないようだ。 背後からは、余裕の笑みを感じる。 は、悔しかったが、逆らう術はなかった。 「のこと、忘れたいのだろう?」 「・・・・・」 「入れるぞ?」 「・・・・」 散々柔らかく解された場所に、熱く硬いものが当たった。 びくっとするに、光伸は優しく言った。 「今なら、まだ間に合うが・・・どうする?」 「・・・・・・・・い・・い」 小さな声で、が言う。本当に、蚊の鳴くような声で。 「本当に、いいんだな?」 「・・・・何度も、聞くな・・・・あっ」 一気に貫かれた。 「はぁ・・・・・・っ」 信じられない圧迫感。 痛みはさほど伴っていないが、やはり精神的な敗北感はある。 しかし、そんなことも、すぐに考えていられなくなった。 光伸がぎこちなくだが腰を動かしてきたのだ。 「悪いな、男は慣れていないから・・・暴れなければ、優しくしてやれると思うから、間違っても暴れてくれるなよ?」 「あ・・・ああ・・・っ」 薬のせいもあってか、すぐに達しそうになる。 悔しいから、我慢しようと試みたが、光伸の腰が淫靡に動くと、その考えもすぐさま吹き飛んでしまう。 「我慢せずに出せ」 言われたとおり、光伸から与えられる快楽に、素直に全身を委ねた。 絶頂は近い。 先ほど指で虐められたそこに、光伸自身が当たると、は簡単に果てた。 その余韻に浸る間もなく、次の快感が与えられる。 「ちょ・・・待って・・・くれ・・・・ああっ」 「待たん」 の腰を高く抱え直すと、後ろからじわじわと犯しにかかった。 その体勢は、の弱いところに深く突き刺さる。 「ああっ・・・・・いやだ・・・っ・・・そこ・・・・やめっ光伸っ!!」 叫ぶと、ぴたりと光伸が動きを止めた。 そして繋がったままで、意地悪く聞いてくる。 「本当に?」 「え・・?」 「本当にやめてもいいんだな?」 「あ・・・・」 弱点に触れるか触れないかの、ぎりぎりのところで腰を緩く揺すりながら。 今のに、耐えられるわけがない生殺しの拷問。 「そんなに嫌なら、すぐに抜くが、それでいいんだな?」 もう一度問う。 今度は、ほんの少しだけ弱点を突いた。 「あ・・んっ! や・・・・や・・・・やめないで・・・くれ・・・・」 気が付いたときには泣きそうになりながら、哀願していた。 このままやめられたら、狂ってしまいそうだった。 それがわかって聞いている光伸は、本当に悪魔ではないかと思う。 「ふ・・・可愛いじゃないか」 そういうと、の絶頂を促すように腰を突き動かしてやる。 何度目かの波が、を襲う。 「あ・・・ア・・・」 「、可愛いよ」 男にこんなことを言われても、全然嬉しくはない。 ・・・はずなのに、どんどんと熱くなる身体を、は止められない。 そして、また精を放つ。 その瞬間、自分の中で暴れていた何かも大人しくなった気がした。 どうやら光伸も、果てたらしい。の中で。 「・・・・・・・・・・・」 ぐったりとしたに、器用に服を着せていく光伸。 抵抗らしい抵抗は一切しない。されるがままの。 「少々悪ふざけがすぎたな・・・。すまん」 「・・・・何故謝るんだ?」 光伸が、薬を盛られた自分を助けてくれたことには変わりはない。 多少その手口が意地悪かったとしても。 「しかし、お前の中にはまだ・・」 がいただろう? そう言いたいのだろう。 昼間は散々人の傷口を開くようなことを言ってくれたような気がするが、 何故だか今は妙に言葉を濁す。 ・・・やはり、どこか自分と似ているのかも知れないと、は思った。 だとすると、光伸も・・・。 「光伸」 「なんだ?」 「少なくとも、さっきお前を中に感じていたときはお前のことしか考えていなかったぞ」 「・・・・・・」 きょとんとした光伸の顔に、は吹き出した。 「なんだ、その顔は」 「いや・・・・お前がそんなことを言うとは思わなかったから・・・その、つい・・」 蝋燭の明かりではよく見えないが、光伸の顔が少し赤くなったように見えた。 それは、先ほど大量に飲んでいた酒のせいかも知れないが。 「あぁ、それにしても、男にされるってのはこんな気分なのか」 開き直ってしまえば、さほどのことではないように、には思えた。 何だかんだと言いつつも、光伸のやり方が優しかったからかも知れない。 ・・・・・・・・・いや、違う。確かに、それもあるだろう。 しかし、もっと根本的なところにある本当の理由をは既に気が付いている。 そしてそれは、きっと光伸も気が付いている。 互いに気が付いていて、その部分を黙っているだけなのだ。 「一夜の夢ってことにしておけ」 気を遣ってなのか、嫌味なのか、遠まわしに別の意味を含んでいるのか・・・・。 どうとでも取れるような言い方をして、光伸は眠りに付く体勢に入った。 「光伸・・・」 「・・・」 返事は返ってこない。寝てしまったのだろうか。 はしばらくその、普段より少しあどけない光伸の寝顔を眺めていたが、 小鳥のさえずりが聞こえ出したことに気が付くと、その耳元にそっと唇を寄せて小さく言った。 「・・・有難う」 そして、頬に軽くキッスをする。 それは友情の印。今は、そこまで。 まだほんの少し熱く、気だるい身体をなんとか起こして、そっと倉庫を出る。 は清々しい、朝の冷たい空気を吸った。 ふと、に対する未練のようなものが浄化されていることに気付く。 もちろん大事な存在であることに変わりはない。 しかし、これからは本当に友人として見る事が出来そうな気がした。 「金子光伸・・・か」 自分にしか聞こえない呟き。 それには、本人すら気付いていないところで、優しくどこか嬉しそうな響きが、確かにあった。 <<<前 戻>>> |