『テーマ館』 第13回テーマ「もしも・・・」



 「もしも・・・」      しのす


 たけしくんは「もしも」という言葉を教えてもらって上機嫌です。誰にでも
使ってみたくなりました。
 それで食堂でカレーを食べているお兄さんの所に行きました。
 「ねえ、おにいさん、もしもスプーンが曲がったらどうする?」
 お兄さんはカレーを食べる手を休めて、「カレーが食べにくくなるな」と言
いました。
 たけしくんは満足して玄関で水撒きしているお母さんの所に行きました。
 たけしくんが行ってしまってお兄さんが再びカレーを食べようとした時、ス
プーンがぐにゃっと曲がりました。

 「ねえ、おかあさん、もしもシロウがしゃべったらどうする?」とたけしく
んはシロウの頭をなでながらお母さんに話しかけました。シロウはたけしくん
の家で飼っている犬でした。
 「そうね」とお母さんは優しく笑いました。「楽しいでしょうね」
 たけしくんも笑うと、裏庭で草むしりしているお父さんの所に行きました。
 「お母さん、お腹空いたです」
 たけしくんが行ってしまうと、シロウが大きくのびをしてそう言いました。

 「ねえ、おとうさん、カマキリ虫が大きくなったら怖い?」
 たけしくんは目の前にいるカマキリ虫を指さしながら聞きました。
 「そうだな、でもおとうさんがやっつけてやるよ」
 たけしくんは心強く思って、裏の戸から外に出て、隣のお兄さんのところへ
行きました。
 たけしくんが行ってしまうと、お父さんは立ち上がって体の向きを変えまし
た。そこに巨大なカマキリが立っていました。

 「ねえ、おにいさん」とたけしくんは隣のお兄さんに話しかけました。
 「何してるの?」
 隣のお兄さんは縁側でSFを読んでいました。
 「『地球最後の日』、読んでるんだ」
 「へえー」たけしくんは目をキラキラ輝かせると、聞きました。
「もしも地球が最後になったらどうなるの?」

<11月29日(土)03時38分06秒>