『テーマ館』 第17回テーマ「3つのお願い」



 「オチが見え見えな『3つの願い』」   by しのす


悪魔がやってきて「魂と引き替えに3つの願い事を叶えます」と言うなんて、
小説の中の出来事と思っていたが、実際に俺の前にそいつは現れた。
哀愁漂う中年のサラリーマンという感じだったが、矢のようなしっぽは、男が悪魔
だという証拠だった。
俺は死んだ後の魂なんてどうでもいいので、話に乗ることにした。
「そうだな、1つ目の願い事は俺を大金持ちにすることだ。そして2つ目の願いは
俺をどこかの国の王様にすることで、最後は・・・」
俺は3つ目の願い事を何にするか一瞬迷ってから、「長寿だな。不老不死って願い
は困るんだろ?」
「あの、僕は本人の願い事は叶えられないのです」と悪魔はぼそっと言った。
俺は悪魔の言う意味が理解できなかった。「は? 本人の願いが叶えられない、
って? そりゃまたいったい・・・」
「あなたの魂と引き替えに、3つの願い事を叶えるのですが、その願い事は、
他人の事に限ります」
「・・・?」俺は言葉を失った。自分の魂と引き替えに他人の事を願うなんて
お人好しがどこにいる? こんな変な話は聞いたことがない。例えば・・・。
その時俺はいい考えがひらめいた。
「じゃあ、例えば同じ職場の麗子さんをお金持ちにしてくれというのでもいい
のか?」
悪魔は微笑するとうなずいた。「それで結構です」
「じゃあ、同じ職場の星野麗子さんを大金
持ちにしてやってくれ。そして女王
のような高い地位にする。最後の願いは彼女の幸福な結婚だ」
「わかりました。願いは叶えます」そう言い残すと悪魔は消えた。
俺はにんまりした。俺は麗子と密かにつきあっていて、結婚も間近だったのだ。
彼女が金持ちになるということは、俺もなるということだ。
俺は悪魔を出し抜いたという幸せな気分で、祝杯をあげた。

俺は、翌朝朝刊を見て我が目を疑った。
「現代のシンデレラガール!星野麗子さん、ナ○○国王女に!!」
記事を読むと、訪日中のナ○○国の王子が麗子を見初めて、プロポーズしたそ
うだ。確かに麗子は、幸せな結婚をすることになりそうだ。俺は悪魔の微笑を
思い出すと、新聞をまるめて床にたたきつけた。

(投稿者:04月07日(火)20時06分52秒)