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ジュニア向け乱歩風探偵小説「嘲笑うサンタ」第11話から


第11話 まるで、世間から取り残されてしまったようなアパートでした。
 心の浮き立つようなクリスマスソングも、この路地までは届いてはきません。
 「なんだか、おっそろしいなぁ」
 祐介君がぶるっと体をふるわせます。
 「だいじょうぶだよ、悪い人じゃないからさ」
 健太郎君が言いますが,女の子の香ちゃんは怖くなったのでしょう。
 「でも・・・もう、こんなに暗いのじゃ、きっと、あたしのママ心配してるわ」
 「サンタにさらわれたんじゃないかって?」
 祐介君がちゃかしますが,その声は少しふるえていました。
 健太郎君は少しあきれてしまいました。ふたりといったら,まるで弱虫の子供です。小林
少年なら目を輝かせているでしょうに。
 しかし、あたりはすっかりと夜の闇。たしかにお母さんは心配しているかもしれません。
 「ぼくんち,今日はごちそうなんだけどな」
 祐介君が言います。そうだ、というように香ちゃんがうなずきました。
 「でもさ、あのサンタのことはどうするんだよ」
 「あしたじゃ,ダメ?」
 「でも、ここまで来たんだからさ、やっぱりいこうよ。あのサンタ,きっと悪いことを考
えてるにきまってる!」
 健太郎君の剣幕に,二人は思わず口をつぐみました。それほど健太郎君は真剣だったので
す。
 「わかったよ」
 祐介君が肩をすくめます。
 三人が階段を上がると,ぎしぎしといやな音がしました。まるで,何か得体の知れないも
のが歯軋りするようなその音に,三人は首をすくめます。
 「ねえ、お兄さん」
 汚れたドアを健太郎君の拳がたたきます。
 「ぼくだよ、健太郎」
 しかし応えるものはありません。お兄さんはいないのでしょうか。
 「いない、みたいだね」
 「なんだよ、ここまできて」
 「しょうがないわよね、いないんだから」
 「でも、まあいいや。早く帰ろうぜ」
 ガッカリした3人でしたが,その表情は以外と明るいものでした。まるでなかなかに目覚
めることのできない夢から,やっとぬけだせるというように。
 と、そのときです。
 スウ,とアパートの狭い廊下に風が吹き込みました。そして、あの歯軋りするような,床
のきしむ音が聞こえてきました。
 「おい、近づいてくる」
 祐介君がつぶやいたのとほぼ同時でした。ゆっくりと角を曲がってそれは姿を現したので
す。
 「サンタだ!」
 そう、それはサンタでした。赤い帽子に赤い服,白い髭がだらりと伸び,表情は全くわか
りません。
 香ちゃんは悲鳴を上げると,そのままその場にしゃがみ込んでしまいました。祐介君は目
を見開いたまま,がくがくと言葉も出ない様子です。
 (こんなとき,少年探偵団ならどうするだろうか)
 健太郎君は小さな体をかがめると,えいやっとばかりにサンタに向かって突進しました。
 これにはサンタも驚いたのでしょう,二人はもみ合うように狭い廊下を転がります。
 どうだ!」
 健太郎君はサンタの髭をつかむと,思い切り引っ張りました。乱歩の二十面相ならば,こ
れはつけ髭に間違いありません。  そして、それは正しかったのでした。  べりべりと音がして,つけ髭がはがれ落ち,サンタの顔が目の前にあらわれると,驚きの
あまり健太郎君は息をのみました。
 お兄さん!」  そうです,そこにはなんと名探偵のお兄さんが目を回してひっくり返っているではありま
せんか!
 あの、気味の悪いサンタの正体はお兄さんだったのでしょうか?
 「やっつけたの?」
 おっかなびっくり近づいてきた香ちゃんが,サンタのポケットか! ら何かを見つけて拾い
上げました。
 <クリスマスケーキ大安売り!>
 「これって、駅前のケーキ屋のチラシじゃないか」
 「二十面相と、ケーキ?」
 「これって、間違えたんじゃないの?」
 「・・・そうだよ,まったくひどいんだから」
 その声に振り返ると,お兄さんが頭をさすりながら起きあがるところでした。
 「近頃の子供はサンタが嫌いなのかい? それともプレゼントを強奪するつもりだったの?」
 「いや、その・・・」
 ようやく健太郎君も気が付きました。これはお兄さんがアルバイトのために扮装していたの
です。
 「まあいいさ,僕に用があるみたいだから」
 お兄さんは立ち上がると,ドアを開けます。
「話は中できこうじゃないか,ね、少年探偵さん」 (May 20 三ツ木)

第12話 一方その頃例の血で書かれた現場で今度は犬の惨殺死体が発見されていた。
 発見までの経過は近所の子どもが不思議なサンタを見つけたといって裏路地に入りそこで見
つけたらしいのだ。この子にいうには(まだ幼稚園児だったので正確なことは言えないが)どう
も、サンタというよりピエロのような格好をしていて手にはたくさんの風船が握られておりそ
れが異常に目を引いたらしいのだ。
 発見されたとき犬の頚動脈からまだ鮮血が勢い良く吹き出て辺りをさらに赤く染め上げ、あ
の赤文字おも消し去っていた。
そして、次なるメッセージ・・・「復讐」壁に浮き上がっていた。
もちろん、少年探偵団はこの事を知らない。(June 20 jna with penny)

第13話 健太郎君は今まであったことを一生懸命に話しました。
 サンタのこと、袋が動いたこと、サンタが入った家には何もなくて壁に「今宵恐怖のベルが
鳴るMerry Christmas」と書かれていたこと(お兄さんは健太郎君が書いた文字を見て、「こよ
いきょうふのべるがなる」と読みました)、そして「ノベルがなる」という本を買ったこと、
大人の人に読んでもらうことにしたこと、そしてお兄さんを選んだことを話しました。
 お兄さんは話を聞き終わると「ヤア素敵素敵」と笑いました。「ところでその家がどこにあ
るのか、わからないのかい?」
 健太郎君はこれで何度目かになりますが、サンタが入った家の場所を思い出そうとしました。
しかし駄目でした。怖くて走って逃げた後すっかりと忘れてしまったのでした。
 「うむ。」とお兄さんは頭を傾げると「ノベルがなる」を取り上げてぱらぱらとめくりまし
た。「単に漢字を飛ばして読んだだけなのだから、この本には関係ないはずだが・・・」
 「でも」と健太郎君が反論しました。「壁の字がダイニングメッセージなら関係あるかもし
れないです」
 お兄さんは本から視線を健太郎君に向けました。健太郎君は恥かしくなりました。
 「ふむ、ダイニングメッセージね。」お兄さんは本を閉じました。その大きな音に香ちゃん
は飛び上がりました。「あ、ごめんよ、驚かして。でもね、被害者がダイニングメッセージを
書いたにしては長すぎるメッセージだし、無意味じゃないかな。ところで死体は見たの?」
 「し、死体・・・」健太郎君は現場を思い浮かべて、大きく頭をふりました。
(July 31 しのす)

第15話 「死体ねぇー。」 祐介が腕を組んであたまをかしげる。その様子はまるで本物の探偵のようだ。
「絶対にないよ。見えなかった、そ、そう、僕たちは見なかった!」
健太郎は手を震わせか細い声で言う。
「おい、おい、お前、恐いのか?」祐介が指をつついていった。
「・・・こ、恐く・・・!何だよ、お、おまえこそ恐いんじゃないのか?」
お兄さんと香ちゃんはいつのまにか奥へ行って、お茶を入れている。
「ねぇ、ほんとに死体なんかあるのかな?」
「ははは。いってみただけサー、ははははははは。」
そういへば、
祐介と健太郎は居間で取っ組み合いを始めた。
それを二人は、お茶を入れながら見ていた。
(Dec. 2 jna with penny)

第14話 取っ組み合いはつづき,10分後にやっと収まりました。
「あ,あの…」
という,またかぼそい,女の子の声がしました。
「やあ,聖名子ちゃん」
お兄さんは手でおいでおいでをして,聖名子ちゃんを呼び寄せました。
「聖名子ちゃんはね,近所の小学5年生なんだよ。君らのパートナーにこの子を
入れてあげてくれないかな」
聖名子ちゃんは,よく整った可愛らしい顔立ちをした,おとなしそうな子でした。
お兄さんは,この聖名子ちゃんに,すべてを話しました。だんだん聖名子ちゃんの目に,
怪しくも不敵な光が広がってきました。
話し終わったとき,聖名子ちゃんの顔はすっかりといつもの落ち着きを無くして,
興奮と嬉しさの入り交じった真っ赤な顔をしていました。
聖名子ちゃんは,みんなを呼び寄せました。
「なるほどね。さっき、あたしあるところへいってきたの。それがたぶんあなたたちの
いったところだと思うわ。」
みんなはごくりとつばを飲み込み,聖名子ちゃんの話に聞き入りました。犬の惨殺事件,
「復讐」の文字のこと…そして聖名子ちゃんは自分自身の推測をもはなしました。
その内容は,実に驚くべきものでした…       (Dec. 19 やすい)

第16話 「まず,あなたたち,「ダイニング・メッセージ」じゃなくて
「ダイイング・メッセージ」よ。そこんとこ頭に止めといてね。
犯人(多分そうだと思うわ。もちろんサンタのことよ)は,まず誘拐を企てたんだと思うわ。
だってそうでしょ?季節に合った服装で,しかも大きい袋を持つ。サンタしかいないじゃないのさ。
これはひょっとすると,どえらい事件になってるのかもしれない。あたしたちだけじゃ手におえない
と思うわ。でもね,ある程度の推測ならついてるのよ。それはね…」 (Dec. 19 りょう)

第17話 聖名子ちゃんはゆっくりとみんなの顔を見回して、もったいつけてから言いました。
「……犯人が誘拐しようとしているのは子供よ」
「そんなこと僕にだって分かるよ! あの袋に大人を入れて運ぶのはいくらサンタだって……。
君の推理はそんなものかい?」
ひょうしぬけした健太郎君が早口でまくしたてるのを、聖名子ちゃんはニヤニヤしながら聞いて
いました。もうさっきまでのおとなしそうな表情はかけらもありません。
「待ってよ。ちゃんと続きがあるのよ。あわてんぼうさんね」
健太郎君は聖名子ちゃんに子供あつかいされてムッとしながら聞き返しました。
「何だよ。続きって」
「それはね……」
聖名子ちゃんは急にまじめな顔になると言いました。
「犯人が誘拐しようとしている子供はこの中にいるのよ」(Jan. 16 玉生洋一)

第18話 「えー!」
みんなはいっせいにブーイング。
「『犯人はこの中にいる!』」って言うなら判るけど、誘拐しようとしてる子がいるって、どういうことだよ。」
祐介君は少し怒って言いました。
「これだから素人さんは駄目なのよねー。」
 聖名子ちゃんは自慢げにフフンと鼻を鳴らして言いました。聖名子ちゃんのお姉さんぶった態度にムッとした健太郎君は、もう話すのがいやになって、プイと横を向いてしまいました。でも、本当はそれが誰なのか知りたくてウズウズしていました。
「一体それは誰なの?」
 かわりに香ちゃんが聞いてくれてほっとしたのもつかの間。聖名子ちゃんが言いました。
「それはね。」(Nov. 30 ユゴリ)

第19話 「わ・た・し☆」
「はあ!?」
またもブーイングである。
「何考えてるんだお前?」
「これだから女は・・・」(Mar.15 るむるむ)

第20話  「ここに、私がきたのもなにかあるかもしれないじゃない!!」
聖名子ちゃんは、自信満々に、いいました。
「だけどなぁ-。」
「お兄さん?どうしたの?」
「それが・・・・」
プルルルルル・・・・・・・・・・
「電話だ!!」(Sep.10,00 かりん)

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