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「はい、火影様!次の書類です!」

ドサドサドサ!

ひと段落ついたし、少し休むか。
と、デスクワークに凝り固まった肩を回しつつ立ち上がろうとした6代目火影であるナルトの前に再び積み上げられた書類の山。
それを見たナルトはげっそりとした表情でため息をついた。
にっこりと笑う秘書の顔も、「さ、仕事してくださいね」言わんばかりで憎らしく見える。

ちなみに火影秘書は交代制で、本日の秘書は下忍時代にスリーマンセルを組んでいたサクラである。
その日の仕事の内容に合わせて専門的知識・技能を持つものが秘書という名目で火影をサポートするのだ。

「サクラちゃん、まだあるの?」

提出された書類を熟読し、裁可・不裁可の判断をする。
火影の印を押す。
それぞれ専門の部署に書類を送り、指示を出す。

日が昇ったころから、食事の時間もまともに取らずこの作業の繰り返し。
これでも常人離れしたスピードで仕事をこなしているのだが、書類はなくならない。
ため息もつきたくなる。

「今日の書類はこれで終わりね」

「これで終わりって、これもかなりの量だし…今日はってことは明日も…?」

「もちろんv」

「……」

サクラの宣告に、ナルトはがっくりと机に突っ伏した。

6代目火影に就任して3年目。
書類の山、度重なる会議、会談、会食等。
ナルトはうんざりしていた。

「仕方ないわね。ナルト、少し休憩しましょうか」

すっかりやる気が感じられなくなったナルトを見て、サクラは苦笑し提案した。
ナルトもこの提案に反対するはずもなく、凝り固まった体を伸ばしつつ、休憩用のソファーに移動した。
因みにこの休憩用ソファー、度々お泊り用簡易ベッドの役割を果たすこともしばしばである。


サクラが入れたお茶と頂き物の和菓子で人心地ついたとき、ドアがノックされた。
ノックの後、ドアの向こうにいる人物が名乗る。

「奈良シカマル」
「許可」

ナルトの一声で扉がスッと開いた。

「よ、シカマル。お前も食うか?」

入ってきたシカマルにナルトはお茶菓子を勧めた。

「いただくぜ。で、ナルト、めんどくせー仕事は片付いたのか?」

シカマルの問いに対してナルトは無言で書類が積まれた机に視線を向けた。

「げ、まだこんなにあるのかよ」
「これでも今日はあの山を3つは片付けたんだってばよ?」

書類の山に嫌そうに顔を歪めるシカマルに、疲れた様子のナルトが答える。

「ナルトのペースなら今日中に終わりそうよね」
「……やろうと思えばね」
サクラがフォローしようとするが、ナルトのやる気は減退モードである。

「この時期だけはシカマルじゃねーけど、火影なんてめんどくせーもんに何でなったんだと思うね」

「あら。昔からの夢だったんでしょ。『オレは絶対火影になってやるんだってばよ!』って言ってたじゃない。木の葉も変えるって言って、汚職まみれ&偏った仕来りに凝り固まったの老人方をことごとく排除。思い通りじゃない」

「サクラちゃん、それ嫌味…?…自業自得ね…わかってるってばよ…」
サクラの言い方に引っかかるものを感じたナルトだったが、彼女の笑顔の前では何も言えなかった。
いつからだろうか。
彼女の笑顔が殺意を持って放たれたクナイよりも脅威に感じるようになったのは。

「…ごほん。…で、その老人方が見て見ぬふりしてきた山積みの問題が表面に出てきちまったってわけだ。めんどくせー役回りなこった。」

「さらにこの時期は元々いろんな行事やら決算やら……。」

「あー、やめたやめた。デスクワークは元々性に合わないんだってばよ。ってことでちょっくら散歩に行ってくるから!」

言うが早いか、ナルトの姿が瞬身の術で掻き消えた。

「あ!ナルト!待ちなさい!」

「あ〜無理だ、もう。あいつが本気で逃げたら追いつけるやつなんて木の葉にゃいねーよ」

「まあ、仕方がないわね。そろそろキレるころだとは思っていたのよ。ということでシカマル、火影は不在でもやるべき仕事は満載よ。はいv」

「はいvって、もしかして仕事しろって?めんどくせーお断…

「シカマル?(にっこり←飛んで火に入る夏の虫!誰が逃がすもんですか!しゃーんなろー!!)」
お断りだね。とシカマルが言い切る前にサクラが言葉をさえぎり、必要以上に迫力のある笑顔を向けた。

「…謹んで手伝わせていただきます…」







「ん〜いい天気だってばよー」
火影岩も里もすっきり見渡せる高台。
風通しもよく気持ちのいい場所だ。
3代目もよく火影岩が見える場所に出現していたが、今なら3代目の本心がわかる。

絶 対 サ ボ っ て い た 。

歴代火影の顔岩を見て気を引き締めるとかそういうのもあったかもしれないが、絶対に本心はサボリ。
間違いない。
と、ナルトは思った。

まあ、たまには息抜きしないと火影なんてやってられないということらしい。


目的地まで全力疾走。
死角になる的にも百発百通でクナイを当てる。
影分身と体術の訓練などなど。
軽く体も動かして(人によっては軽くどころじゃないが…)スッキリしたナルトはここ最近ハマっている忍術書の解読を始めた。
青空の下の読書は気持ちがいい。
紙の白さが少し眩しすぎるのが難点だが。

ナルトが現在読んでいるのは、火影やごく限られた人間のみが閲覧できる書庫を整理していて、その中でひっそりと隠されていた禁術書だった。
禁術書だから普通はもちろん持ち出し禁止。
…ある意味職権乱用か…?

中身はかの『木の葉の黄色い閃光』と他国からも恐れられた4代目火影が得意とした忍術。
時空間忍術に関するものだった。
あまりに困難な術で、使いこなせたものは4代目以外にはいないという。
伝説とまで言われている忍術だ。
ナルトは4代目が残した忍術を使いこなすことを目指して暗号を解読中だった。

「ええと、ここはこうで…。あ、間違えた。こうか」

時空間忍術の術式を組んでいる途中で異変が起きた。
というか、ナルトにしては珍しく印を組み間違えたその時に。
チャクラをまったく練りこんでいないにもかかわらず、ナルトの周囲にチャクラの渦が一瞬で形成されたのだ。
その瞬間激しい閃光がナルトの視界を白く染めた。



一瞬の出来事だった。
後には何もなかった。
あるのは、風通しのよい高台の風景のみ。





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今の状態では何が逆行物なのかさっぱりですね。
まあ、まだプロローグですから。
逆行(?)はしますが、ストーリーの再構成はありません。
そんな体力ない…(オイ)
あと、この話は全編ギャグでいくつもりです。
むちゃくちゃな話になるので、キレイに完結できる見込みはほとんどないです(何!?)
書きたいこと書いたら終わりになる可能性大です。ごめんなさい。

ラスト、どっかで見たような展開です。
ナルトの消え方が「侵入者!?」のルーシーの現れ方とほとんど被ってます(爆)。
だって、そんな色んなパターン思いつかない…!

2005/4/30