日向ヒナタ。
よくわかんないんだけど、オレのことを見てることが多い変なやつ。
オレのことが嫌いなのかと思ったら、なんか違う感じで。
他のやつらがオレを見るときの特徴的な冷たい目では少なくともない。
初めのうちは監視してるのかと思ったけど、それも違うみたいで。





* * * 彼女のイメージ * * *





アカデミーの授業が終わった放課後。
ナルトには今さら毒にも薬にもならない授業で、退屈すぎて疲労が溜まる。
まあ、ほとんど寝に来ているようなものだが。

授業が終わり次々と人が減っていく教室。
帰り際にナルトを睨んでいく奴、馬鹿にしたような視線を送ってくる奴。
そっちは慣れっこな視線で今さらどうとも思わないが……

またか……。
ホントに何のつもりなわけ?
ヒナタの視線を感じて内心で溜息をつく。

視線がまとわりついて鬱陶しいから、何か用?って話しかけたら何故か赤くなって俯いた。
「ナ、ナルトくん……あ、あの、えっと……」
顔を赤くしたままモジモジと呟くヒナタ。

あまりのテンポの遅さにちょっとイライラする。
オレはそんなに気が長くないんだけど。

「その、用ってほどの用は…ないんだけどね…」
「でも、オレのこと見てなかった?」
そうちょっと不審そうに尋ねると、ヒナタはおどおどしながら視線を泳がせる。
「えっ…あの、め、迷惑だった…?」

上目使いで泣きそうになりながらそう言ってくるものだから、まるでいじめているような居心地の悪さを感じる。
オレには弱いものいじめをする趣味はないっての。
里の奴らと違って。

「別に迷惑じゃねーけどさ。」
本当は結構鬱陶しいんだけど、悪気はないみたいだし譲歩してやることにした。
「用ねえんだったら、オレは帰るってば。じゃあな、ヒナタ」
そういってヒナタに背を向け、アカデミーを後にした。


ナルトが去った後、ヒナタは真っ赤になってボーっと立っていた。
今日も一緒に帰ろう、一緒に修行しようということに誘うことは出来なかったが、ナルトから初めて話しかけてもらえた上に挨拶されて、ヒナタはその喜びを噛みしめていたのだった。



そんな彼女の思いを知るはずもない、ナルトの日向ヒナタに対するイメージ。
『危害はないが、トロくてちょっと鬱陶しい。』










中忍選抜試験。
第一の試験。試験管はサディストのイビキ。
試験内容は表向きは筆記試験。
内容は下忍程度に解けるものではなくて。
というか、上忍でも全部わかるやつはいないだろうなあ…というもの。
手裏剣の軌跡とかもさ、戦闘中そんな小難しいこと考えるわけねえし。
感覚で体が覚えるもんだしさ。
解けない問題をわざと出して、カンニングを誘い、情報収集能力を見る。
これが試験の目的の一つ。

これだけわかってても、ドベがそんな器用なことをやるわけにはいかなくて。
わかってる問題も解かず、カンニングもしない。
ただ焦ってる演技をするだけ。
あのサディストのことだからこれだけで終わるはずじゃないって思ってたし。
最後の問題で何か仕掛けがあるんだろうし、ま、いいか、って。
演技してる見かけとは逆に、かなり楽観的なことを考えていた。

そんな中で、隣の席のヒナタは、
自分も処分されるかもしれないのにカンニングさせてくれようとしたり。
(まあ、本当はそんな必要性ないんだけど。)

「ナルト君に…こんなとこで消えてもらいたくないから…。ホ…ホラ…新人は私達9人だけだし。この先不安も多いから…ね…」
いつものように何故か赤くなりながら言ってきたヒナタ。
“オレ”を他の皆と同列において話をするのがちょっと嬉しかった。





第三の試験、予選
キバとの戦いの後、傷薬をくれたヒナタ。
あいかわらずモジモジしてて顔も赤くて、だったけど。
里人からは傷や毒はもらっても、まともな薬を好意でくれるってことはなくて。
だから、ヒナタはオレのことを『狐』とは見てない。
同じ人間だと思っている。
そんなことを自然に感じることができた。



『ヒナタはトロかったり、顔が赤かったりと変なやつだけど、ちょっといいやつ』








そして、第三の試験、予選。
ヒナタ VS ネジ 。

自分で自分を変えたい。
そんなヒナタの思いを全面否定するネジ。


「人は決して変わることなど出来ない!」


「落ちこぼれは落ちこぼれだ…」


「変えようのない要素によって人は差別し、差別され、分相応にその中で苦しみ生きる」


「自分を変えるなんてこと絶対に出来ない」





聞いててイライラする。
オレもあがいてる一人だから…。

望みもしねぇのに狐の器になって。
里人から嫌われて。
死を望まれて。

だからこそ、オレはそんな周りの望みに逆らって。
死ね?ふん。なら、オレは絶対に死んでやらない。
嫌でもオレの存在を刻み付けてやる…!


そして、そんなことを言っているネジ自身も。
自分だってあがいてるくせに。
変わりたいと思っているくせに。


だから


「出来る!!!人のこと勝手に決めつけんな、バーカ!!!
 ンな奴やってやれ、ヒナタ!!」

本心からヒナタを応援した。


ヒナタの眼つきが変わった。
いつものオドオドしたものじゃなく、
自分の信念を持って、まっすぐ前を向いた目だ。

「まっすぐ、自分の言葉は曲げない。
 私も、それが忍道だから…!」





試合には負けたけど、ヒナタ、お前すごく格好よかったよ…!

本選で、この借りはオレが必ず返してやるから。

だから、絶対に死ぬな。
生きろ。

そして、今はゆっくり休んで……。




ヒナタは
『やる時はやる、格好いいやつ』







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ナルヒナ書こうかどうしようか考えてた時に
WEB拍手でナルヒナを希望してくれた方がいたので、
読んでくれる人がいるなら書いてみようかなあと思い、書いてみました。
どうでしょう?
って、続くし、この話じゃまだ全然ナルヒナじゃないんで何も言えないっての。
まあ、続きをどうぞ。

2004/1/13