「好き、なんだ・・・・」 それは少々唐突だった。 まあ、人気のない所に呼び出した上、さっきから顔を赤らめ「あー」とか「うー」とか言ってばっかりとそれらしい素振りはみせてはいたのだが。 それでも彼女にとっては充分過ぎるほどに唐突だった。 「・・・・・・え?」 「だから!好きなんだよヒナタ!!」 どうしよう。 どうしよう。 返事しなければと思うのにうれし過ぎて声が出てこない。 やっとの思いで搾り出した答えは。 「ど、どうして?」 泣きたくなるほど間抜けなものだった・・・・・・・ 「どうしてって・・・・・・」 彼はその言葉に少々困惑したように(当たり前だが)それでもぽつり、ぽつりと自分の気持ちを正直に話してくれた。 「いつの間にか誰よりも守りたい存在になってたんだ・・大切・・・なんだ・・守らせてくれないかな、ヒナタを・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・」 「ヒナタ?」 黙り込んでしまった彼女の顔を覗き込むと ぶわぁ 彼の好きな不思議な色の瞳から涙が溢れ出た。 「ヒ、ヒナタ!?」 断られるとか、嫌悪の眼で見られるとかは、まだ覚悟していたがまさか泣かれるとは思ってなかった。 そんなに嫌だったのかと思いっきり慌てだす。 「ヒナタ、ゴ、ゴメン!!嫌だったなら謝るから・・・・・・・・」 「ヤじゃない・・・・・・・・」 「え?」 「嫌じゃない・・・・・・・あたしも・・・・あたしも好き・・・・いいの?あたしで・・・・・いいの?」 「ヒナタ・・・・・・」 彼女の思わぬ、嬉しいお返事に顔がさらに火照ってくるを止めようがない。 「・・・・・ちがうよ、ヒナタでいいんじゃない。ヒナタがいいんだ。」 「ナルト君・・・・!」 抱き合う二人。 「でもね・・・・」 しばらくそうしていて、彼女がポツリと漏らした。 「ん?」 「守られるだけじゃイヤ。あなたを支えられるようになりたい・・・あなたの柱でいたいの・・・・」 ―――――――――平和の日常―――― 「まさかあんたとヒナタが付き合うなんてねーー」 呑気な調子で呟きながらお茶を啜っているのはかつてのスリーマンセル仲間であり、今や幻術専門の特別上忍として名を馳せている春野サクラ。 「・・・・・・まさかここまで大変身しちゃうとはね〜」 そうのたまう彼女の前で乾いた笑いを漏らしているのは旧姓うずまきナルトこと星宮ナルト。 アカデミーでも指折りの落ちこぼれで、万年ドベのままであろう・・・・・と思われていたのは昔の事。 二度目の中忍試験に合格してからというものの、急激に成長しだし、輝かしい実績を残した後にとんとん拍子に上忍となり、次第に仲間も増えた。 いまやナルトに心酔しない若い忍は皆無だ。 それだけではない。 外見も同い年の少女であるサクラよりも低かった身長が現在では180cmまで伸び、顔付きも木の葉の若い女子人気を日向ネジ&うちはサスケと3分するほどの美形に成長した。 今や町を歩くだけで女性がみんな振り返る・・・・とかサギだ・・・とかは某友人の弁である。 「ファンクラブの子達、みんな泣いてたわよ〜。このサギ師Vv」 「サギ師ってなにさ・・・・(汗)そっちこそ、人のこと言えないんじゃない?『幻惑の花』さん?」 何で勝手に作られたファンクラブを気にしないといけないのさ・・・・・と内心思いながら、最近やっと片思いの実った男泣かせな彼女を有名な二つ名で呼び、反論する。 が、彼女は 「その2つ名ってあんま好きじゃないのよね〜、大体あたしが幻術専門で名が『桜』ってだけで安直すぎやしない?」 おだてに乗るような人間ではなかった・・・・・ 「まあ、2つ名なんてそんなもんじゃない?『写輪眼のカカシ』なんてまんまだし」 「ぷぷっ、そうね」 言い忘れ(書き忘れ?)ていたが二人がいるのは上忍詰め所である、『人生色々』 昔はナルトもサクラに惹かれていたこともあったが、今ではそんな甘い雰囲気など微塵もなく、ただの茶飲み友達と化していた。 今もサクラはナルトが最近の趣味で作ったというお菓子を目をキラキラさせながら見ている。 ストロベリータルト。 ルビーのように真っ赤に熟れた苺をびっしりと並べた上にカラメルソースと水飴でコーティングされ、艶やかな光を放つタルトはプロでもうっとりする程の出来栄えだった。 「ん〜にしてもこれおいし♪ナルト、てんさーいvv 私の嫁さんになりな!」 「ははは。遠慮しとくよ、今はヒナタ一筋だしv」 番茶で洋菓子というのはイマイチな気もするが、そんな事も気にならない程ウマイらしい。 「失礼します。あら、星宮上忍、春野さん、おはようございます。」 「あれ、鈴鹿おはよ。随分遅かったじゃない?てゆーかサクラでいいって言ってんデショ。おんなじ特上なんだし。」 そうサクラから説教されている薄茶の長い髪をアップで纏めたキリリとした表情が特徴のこの女性は特別上忍の『黒金鈴鹿』 しかし、彼女は木の葉の忍ではない。 木の葉より西に位置する『鋼の里』出身の忍である。 鋼の里は古来より良質な鉄や銅,、その他様々な金属が採れ、その精錬技術も発達していた。 だが、それだけなら大して注目もされず、弱小な里で終わるだけであっただろう。 しかし、この里には強みがあった。 武器の製造技術である。 特に長年この里が取り組んできた銃火器の発達は凄かった。 火縄銃を初めとする銃の種類は他国にももちろんあったが、命中精度が悪い上に威力が小さく、結局の所、忍達の間では起爆札や忍術のほうが良いとされ、使われることは全くといっていいほど無かった。 銃というものに触れたことすらない忍もいる。 しかし鋼の技術者達は諦めなかった。 弾頭と銃身の造りを極端にし、上部に ついに人の手で作られた武器が忍術と台頭する時代が来たのである。 これは『施条銃』と名づけられた。 そしてその見事なまでの実用性・殺傷性は五大国諸国を震撼させた。 そこで木の葉の火影、綱手は鋼の里に対して、同盟を申し入れたのである。 その同盟条約締結に至るまでには、ナルトの多大なる活躍があったのだが・・・ その話はまた次の機会に。 ともあれこの同盟は鋼にとっても非常によい話であった。 いくら実用性のある武器が多数存在するといっても、火影のような名のある忍がいるわけでもないし、極めて小規模な里であるため、数で攻められれば勝ち目はない。 だから大里である木の葉の申し入れは大変ありがたかった。 ともあれ、二つの里が交わした条約の内容はこうだ。 ・ 鋼の有事の際、木の葉は可能な限りの軍事的、経済的支援を行う事。 ・ 代わりとして、鋼は木の葉の技術力向上の為に何名かの技術者を送り込む事 その技術者の一人としてやってきたのが、鈴鹿である。 鋼でも指折りの技術者であり、忍としてもそれなりに優秀だった鈴鹿は思ったよりすんなり、彼女は木の葉に馴染んでいった。 仕事も早いし、礼儀正しいので人気もある。 今はサクラと大変仲良しだ。 銃以外の火器にも詳しく、木の葉の技術開発機関は良い人材が来たと喜んでいたのだが・・・・・・ 「鈴鹿ぁ――――――!!!」 どんがらがっしゃん!!! ド派手な音を立てて、飛び込んできたのは――――― 「さ、サスケぇ?」←(注:ナルト) 「あら、うちは上忍、何か御用ですか?」 肩をいからせているサスケと違って鈴鹿は冷静そのものだった。 「何か御用ですか?じゃねぇ!しれっとしやがって!!俺の家の前に罠しかけやがったのお前だろ!?死ぬかと思ったぞ!!」 そういえばところどころ、プスプスと焦げているような・・・・ 「あら、よく私だってわかりましたね――――。ま、エリートなんですからそのくらいよけられるかと思ったんですが・・・・」 「追尾機能つきの大国火矢(火薬に火をつけて飛ばす武器の一種:推進用の火薬と爆発用の火薬があり、前者が無くなると後者が爆発する)なんて仕掛けられるのはお前くらいだし、あんな大量に降ってくるもん避けられるか!!ボケ!!」 そう、鈴鹿はサスケを毛嫌いしていた。 なぜかというとあれは鈴鹿が初めて三人と会ったときのこと・・・ サスケが鈴鹿を貶める発言をしたのである。 普通の相手だったら、泣くか怒るかだっただろう。 が、鈴鹿は普通の相手ではなかった。 サスケは知らなかったのだ。 彼女が有能な技術者であると同時に鋼の里でも1,2を争う名射撃手でもあるいうことを・・・・・ 泣きも怒りもしない代わりに、彼女は黙って愛用の拳銃『ワルサーPPK8mm口径』をぶっ放したのである。 ちなみに拳銃は施条銃と同時に中距離・近接戦闘兵器として開発が進められてきた。 サスケはかろうじて蜂の巣にはならなかったが、壁に貼り付け状態になってしまった。 その時は綱手が大爆笑しながら「女に負けたなんて皆に知られたら恥ずかしいだろ?」と言ったので事なきをえたのだが・・・・・・・ それからというもの事あるごとに実験と称したイヤガラセをしているのである。そして怒るサスケに対して「『エリート』なんですから大丈夫でしょ?」と黙らせてしまうのだ。 ほら今も・・・・ 「あら、そんなに気に入られましたのならもう一本残ってたので、使いましょうか?」 「気に入ってない!断じて気に入ってない!つーか点火するな!てゆーかそのうすら笑いは何だ!?」 シュ・・・とマッチの火が音を立てて大国火矢に点火され、悲鳴をあげながら逃げていく彼をナルトはちょっと気の毒に思いながら見ていた。 「サスケ君も素直に謝ったらいいのにね〜。鈴鹿だって悪い子じゃないんだから謝ったら許してくれるでしょうに」 あれは、もう怒っているというより面白がっているだけだと思うけどなぁ・・ 「つーかサクラちゃん・・助けなくていいの?」 「面白いからもうちょっと見てようと思うの」 「さ、サクラさん?」 それは子供の時分には『サスケく〜んv』とか言って騒いでた人の言うセリフだろうか? 奇妙なものでも見るような顔付きでナルトはサクラを凝視した。 「いいの。サスケ君もいい加減女を怒らすと怖いんだって事を学習するべきよ」 付き合うことになっても相変わらずそっけない彼氏へのささやかな報復のつもりなのだろう。 (俺はもう十分学習しましたってば・・・・) 憧れていた少女は彼の中では今やコワイ女性ランキングに入ってしまっていた・・・・ ちなみにその中には言うまでもなく綱手が入っていることを明記しておく。 「ナルト」 「あ、ネジ」 疲れたように溜息をついたナルトに話しかけたのは現在は上忍のネジ。 昔は冷たいという印象のあったネジだが木の葉崩し以降、その性格はかなり丸くなり柔拳にも磨きをかけ、今ではナルトと公私ともにコンビを組むようになっている。 「火影様が呼んでいた。」 「ばっちゃんが?分かった行ってくる」 この時は、誰も気づいていなかった。 もちろん火影執務室に急ぐナルトも。 この綱手の呼び出しが、大いなる事件の幕開けだということに・・・・・・・ あとがき・・・ ・・・・・はい!おもいっきり序章です。 ここでのサスケはナルトとあんまり喧嘩しません。 代わりに思いっきりオリジナルキャラの鈴鹿ちゃんに苛められます。 それをナルトは気の毒に思いながらも見ているだけ・・・という設定で。 ちなみにカカシせんせーは全くと言っていいほど出番がない予定です。 ああ、石投げないでっ!(逃走) あくまでも基本はナルヒナで活躍するのはネジ&ナルトということで。(前編でナルト、後編でネジの予定です) ・・・・思ったより長編になりそうです(汗) この二人は木の葉のNo1とNo2と呼ばれています。(サスケ?無視) 追記 あまり関係ないですがサクラの「私の嫁さんになりな!」は私が好きな漫画の某キャラ女性が言っていたフレーズです。まあ、言われた相手は女の子だったんですけどね。 最後に ナルトが別人ですいません。 私の思いつく限りのカッコイイナルトを目指したのですがね〜。 師匠のナルトが『理想の恋人』なら私のナルは『理想の旦那様?』 ここからはキャラクター解説です。 ● うずまき(星宮)ナルト(18) 現在上忍。 中忍試験に受かってから下忍の頃のドベっぷりが嘘のように成長。 現在では自他共に認めるサスケを越す勢いの出世頭。 九尾の器だということで反感を持たれていたが、彼が四代目火影の嫡子であり、滅んだとされていた名家の星宮家の最後の一人だということが綱手によって発表されたこととある事件がきっかけで彼を悪し様に言うものはほとんどいなくなった。(全く消えたわけではない) サクラへの感情が単なる子供の憧れだと気づき、いつも自分を見ていてくれたヒナタへの思いに気づく。 優しい性格は全く変わっていない。が、身長は軽く180cmを越し、木の葉女性陣の人気をネジ&サスケと三分する美形に成長する。 最近の趣味は料理。(野菜も食べるようになってバリエーションが増えた) ● 日向ヒナタ(18) 現在特別上忍。 内気なのは相変わらずだが、最近では人の顔をまっすぐ見て離すようになった。 綱手に師事し、医療忍術を一通りマスターした後に医療班に所属。 忍としての技能も上がったので、縁戚達にならって、髪を伸ばした。 結構、野郎ども(笑)からおモテになるのだが、本人が鈍いのと、ナル君が影で威嚇しているため、全く気づいていない。 ずっと好きだったナルトにまさかの愛の告白を受け、幸せの真っ最中。 現在彼の家(星宮家の屋敷)で半同棲状態。 ● うちはサスケ(18) 現在上忍。 特筆すべき点は無し、しかし話中でよく鈴鹿の実験の被害に合う。 ● 春野サクラ(18) 現在特別上忍 サスケの恋人。同じく特筆すべき点はなし。 だがちょっと逞しくなった? ● ロック・リー(19) 現在特別上忍。 リハビリを終えた後、体術のエキスパートとして名を馳せるようになる。 が、最近射撃に興味を覚えたらしく、(遠距離に対する補助として)鈴鹿に教えをこうている。 ● 黒金鈴鹿(17) 鋼の里から派遣されてきた技術班の忍。 冷静沈着な性格で手先が器用でおまけに的確な判断をしてくれるのだが、いつも新しい火器を造っては人で実験して喜んでいる(オイオイ) あと、時折ぐさっとくる発言をする。 ● 鋼の里 火の国の西に位置する里。 比較的小規模で有名な忍や巨大忍軍がいるわけでもないが、金属の精錬技術と武器の製造技術が高く評価され、木の葉と同盟を結ぶことになった。 その証として黒金鈴鹿を技術者として派遣する。 |
KUROKUさんからいただきました!
小説読ませてくださいって言ってみるもんです。
どうやら長編になりそうだということで、楽しみで仕方がない私です。
このサイトは私本人の作品より、頂き物のほうが豪華な気がします(爆)。
2004/2/22