「任務?」

「そうだ」

綱手の用件というのは任務の依頼だった。





―――悲しみへの旅立ち――――





それも密書の輸送というBランクの任務である。

「さほど危険じゃないけど、急ぎの仕事らしくてね。お前の足なら明後日までにつく事は可能だろ?」

「けど単独任務?オレ一人?」

通例こういう任務は二人組みで行うものなのだ。
それを単独でなどというのは聞いたことが無い。

「あいにく他のめぼしい上忍達には別の任務が入っててね。ネジにもさっき入った。」

「サスケ・・・・ヒマそうだったけど」

「おや?おかしいねぇ。呼び出しの鳥が行ってるはずなんだけど」

「あ、そうなんだ・・・・(汗)」

どうやら呼び出しに応じた所を鈴鹿の罠にハマったらしい。



哀れなり、サスケ(合掌)



「まあ、この位の任務ならアンタなら一人でも大丈夫だろ、アタシだって伊達にアンタを火影候補に推薦してる訳じゃないんだし。晩飯食ったら、すぐに出発しな。」

「ばあちゃん・・・・・・・」

ばあちゃんじゃないって言ってんだろ!!と恒例の強烈綱手様デコピンがかまされる。

そうなのだ。

ナルトは現在、火影候補の一人に推薦されている。

四代目の嫡子であり、星宮家の最後の一人・・・・となれば、家柄的にはもちろんの事、実力的にも申し分ない。

支持者も多くなった。

しかし、未だに九尾に対する怨みを持ちつづける者達が彼を認めようとはしない。

上層部もまたしかり、だ。

綱手は忙しい火影の仕事の合間をぬって、疲れるだろうにそんな人々を相手に説得を続けてくれている。


期待されていると思う。

こういう時が一番嬉しく思う。

早く全ての里人が認めてくれるといい。

そう思いながら彼は荷物をまとめる為に家に帰った。







家といってもナルトが帰ったのは昔住んでいたボロアパートではない。

「死の森」のすぐ近くに隠れるように存在している星宮家の屋敷だ。

ナルトは四代目の息子であることが発表されたと同時に、星宮家の当主としてこの屋敷と四代目の全財産を相続した。

そして今、この家を使っているのはナルトと・・・・

「あれ、ナルト君、任務なの?」

ナルトの可愛い恋人、ヒナタだ。

彼女の実家である日向家ではナルトと付き合うことに対して相当モメたらしい。

しかし、最終的には宗主であるヒアシが認めてくれたので今ではこの家で半同棲状態の暮らしをしている。
家事は大体当番制。

今日はナルトが食事当番だ。


「うん、急に入ったんだ。ちょっと晩飯手抜きになるけどいい?」

そう言いながら、ほうれん草の御浸しを作り、味噌汁を作る。

あらかじめ炊いておいたご飯を鳥のササミとマッシュルームで炒めて梅干しとシソで味をつける。

卵を4,5個豪快に溶いてフライパンで焼く。

そのまま、卵で焼き飯を包んでいく。

今日のメニューは和風オムライスだ。

カツオで出汁をとったソースを上にかける

うまい具合に卵は半熟で焼き飯の上に乗っており、スプーンですくおうとすると、ぷるんっと震えた。



居間で慌ただしく食事をする。

「・・・・・やっぱり缶詰よりも生のマッシュルームの方が旨いな」



オムライスを味噌汁で掻き込みながらも、味のチェックを怠らないのが流石というべきか。



「じゃあ、すぐ出かけるんだ・・・・」



食事が終わってすぐに出掛けるというナルトに、玄関まで見送りながらも、ヒナタの眼は曇りがちである。
ドベと呼ばれていたころとは違い、彼は今や大勢が認める出世頭だ。
当然、入る任務も命の危険性の高いものが多くなる。
だから不安なのだ。
こうして見送るたび、もう帰ってこない気がして・・・

「そんな顔しないで。単独任務だけど、簡単な奴だからすぐ戻ってくるよ」

「うん・・・・・」

頷きながらも彼女の瞳から不安の色が消えないのを見て、ため息をつく。

「そんなに心配?」

「・・・・・・・・・」


「じゃ、おまじないしてもらおっか☆」

「え?!・・っん・・・・////」


悪戯っ子のような表情になって、ナルトが一歩、ヒナタに近づいて唇を掠めるようなキスをした。

「ナルト君っ・・・・・・////」

顔を真っ赤にしたヒナタが自分の口元を掌で覆う。

「続きは帰ってから☆」

Vサインをしながら走り去っていく彼を見送って、ヒナタは玄関に座り込み、ポーっとしてしまった。

日が暮れても気づかないくらいに。





* * * *





「ホントにあっという間だったてばよ」

そう、本当に一日で手紙を届け終えてしまった。

勿論、Bランクだけあって忍の襲撃はあったが、そこは木の葉で1、2位を張るナルトのこと。
何の問題も無く叩き潰してきた(惨い)

強いて言うならば、届け先のじじぃがやたらと失礼なオヤジで、怒りを堪えるのが大変だったということくらいか?

しかし、それも終わり、今は森の中を走り抜けている。



ズキッ

(ちちうえ〜v)



「痛っ!?」

今、何かが頭に響いた・・・?


そして何故か一瞬、激しい頭痛がナルトを襲う。

しかし、すぐに治まった。


「・・・・?」


周りを見渡してみるが、誰もいない。

先程響いた声は・・・・

「気のせいか?」

気を取り直して再び走り出した。





「この分なら夜までには帰れるかな?」



早く帰ってヒナタを安心させてやりたい一心で焦っていたナルトは、自分を冷たく見据える一対の光に気づかなかった。




「・・・・・この事態を幸運と感謝すべきなのか・・・・それとも余計な事をと天を呪うべきかしら?」





******





「・・・・・・?」

「ヒナタ?どうしたの?」

書類を書く手を急に止めて、何かを探すように虚空に視線を彷徨わせたヒナタを同僚は怪訝な顔で見た。

「あ、ううん。なんでもない」

「そ?ならいいけど。ダンナがいないから寂しいのかと思っちゃった。」

「ダ!?ダンナって・・・・・・////」

「えー、結構皆言ってるわよ?恋人にするならサスケさん。旦那にするならナルトさんかシカマルさんだって」

「えええええええ!?知らなかった・・・・」

「あたしも知らなかったわねぇ・・・・・」

「え!?」

「サ、サクラ・・・・」

「で、恋人にするなら誰って?」

「あああああ、忘れて頂戴、プリーズ(?)」

「無理v」(にっこり)

「ヒナタちゃ〜ん!助けて〜〜!!」

じゃれあっている二人を眺め、ヒナタは乾いた笑いを漏らしながら、さっきふっと感じた感覚を思い出した。

(冷たい殺気・・・?いえ、怒りの混じった、悲しみ・・・)

いずれにせよ嫌な予感がする。

(ナルトくん・・・・・?すぐ帰ってくるよね?)

何が起こっている?







さあ、彼らは出会う。
其の邂逅は彼らを絶望の淵へと再び叩き落とすのか。
それても新たな未来を築くのか。
それは・・・・・まだわからない



ポタリ

ポタリ

イタイヨ

ドウシテ?

ドウシテ?

タスケテ

マダシニタクナイヨ

イキテイタイヨ

タスケ・・・・・





* * * * *

おまけSS


ネジ「・・・・・・・・・」

鈴鹿「・・・・・・・・・」

ネジ「・・・・・・・・・暇だな〜」

鈴鹿「・・・・・・ヒマですね〜」

ネジ「お前はいいよな。俺なんて序章の最後あたりしか出番が無かったぞ?」

鈴鹿「何言ってるんですか。あなたには後編で重要な役割が残されているじゃないですか。私なんてギャグですよ!?ギャグ!!ギャグ専門!!全く・・・・鋼じゃ『射撃クイーン』と呼ばれていたこの私が・・・・・」

ネジ「射撃クイーン?」

鈴鹿「・・・・何ですか?その疑いの眼差しは(ジャキン)」←ワルサーを構えた!!

ネジ「あ、いや・・・その・・・・あ!!あんな所にサスケが!!」

鈴鹿「えっ(キラキラ)ホントだ、丁度良かった、この新作の火器を試してみたかったんですよ〜(ゴソゴソ) この『曲佃珠(きょくでんしゅ)』で!!」

ネジ「食前酒?」

鈴鹿「『曲佃珠(きょくでんしゅ)』です。お酒じゃありません。ナチュラルにボケないで下さい」

ネジ「それで?一体どういう火器なんだ?みたところ張子の玉にしか見えんが」

鈴鹿「これは火薬を詰めた筒を針金で結んで丸くして、それを更に張子の中に入れて大きな丸い玉を作ったもので、使い方はこれに火をつけて高いところから転がして下にいる敵を火攻めにしてしまうというものです。しかも転がす場所がこのような急な坂だと・・・・・(ゴロゴロ)」←火を付けてサスケに向かって転がした!!


サスケ「☆●梶宦掾梏欠求氈ァ※¢□▼←*▽¢紫煤`!?」←(声にならない悲鳴)


鈴鹿「敵には突然目の前に『巨大な火の玉』が現れたようにしか見えないとゆー寸法ですv」←(人差し指立てて説明)

ネジ「・・・・(成仏せいよ・・・サスケ・・(合掌))・・ちょっと酷いんじゃないのか?」

鈴鹿「(くるっ)そういえば本編見てて思ったんですが・・・・」

ネジ「(サラリと話を替えやがったな・・・コイツ・・・)何だ?」

鈴鹿「星宮上忍ばっかりお料理作ってましたけれど、ヒナタさんは料理しないんですか?」

ネジ「いや、そんなことは無いぞ。ヒナタ様も料理の腕は中々の物だ。特に煮込み料理ならナルトより上だ」

鈴鹿「あ、そうなんですか?」

ネジ「うむ。この前ご馳走になったビーフストロガノフは旨かった。」

鈴鹿「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ネジ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

鈴鹿「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ネジ「おい!!何か誤解してるだろ!?」

鈴鹿「小舅だったんですか・・・・・・」←あとずさり

ネジ「激しく違うぅぅぅ!!俺はあの二人を祝福している!!」

鈴鹿「じゃあ、デバガメ?」

ネジ「さらに違う!!全く違う!!全然違う!!」

鈴鹿「(くるっ)あ、ページが無くなってきたので今日は此の辺で」

ネジ「おい!?俺を無視するなぁぁぁ!!!」

鈴鹿「今後の注目株!ナルトを見据える双眸の主とは!?ナルトの頭に響いた声の主とは?見事に当てることができたらあなたは天才!!次回をお楽しみに(勢いはあるが棒読み)」


後書き
なんだか・・・オマケSSの方に力入れちゃった気がします・・・(とことんサスケをイジめたいらしい。)
あ、曲佃珠(きょくでんしゅ)は実際に室町時代に良く使われていた火器らしいです。
実際は忍者よりも海賊などが得意としていた火器らしいですがね。
な〜んて、資料『落第忍者○太郎』でした!(よく考えてみるとスゴいタイトルだ・・・)



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KUROKUさんからいただきました!
てっきり任務はネジと行くのかと思ったらナルトが一人ですか。
まあ、任務自体は楽勝だったみたいなので良し。
ネジは後半に活躍ということで、楽しみに待ってます。

で、サスケ…!
鈴鹿さんとともに、とことんコメディ担当ですか!?
これから任務に向かうっていうのに、先に命ギリギリな目にあってたんですね(笑)

ナルヒナ
ラブラブですね☆
謎な声とか感情もシンクロしてるし、長年連れ添った夫婦以上かも?

謎な声。ナルトの頭痛。
とっても気になる伏線ですね!
続き楽しみにしておりますvvvv

そして、とっても笑いのツボに入ったおまけSS。
本編では出番の少ない小舅ネジ兄さん(違う)の出番がたっぷりで嬉しかったです。

ナルトが作った和風オムライスが食べたい……
2004/2/28