「きゃー遅くなっちゃった〜!早く帰らないと〜二人ともきっとお腹空かしてるわ」 急いで家路を急ぐヒナタ。 何故こんなに急いでいるのかというと、今日も例によって同僚の書類ミスが原因で残業になってしまったのである。 しかも今日はヒナタが食事当番。 星宮家において掃除や洗濯等、他の家事はさておき食事当番は絶対であり前もって言っておかない限り変更はあり得ないのである。 以前、ナルトが遅くなった時、夕飯の材料を買い込んで帰ってきたのに既に早く帰ってきたヒナタによって夕食が準備されていたのを反省しての事である。 しかも今日は葛葉も来ている。 ナルトは兎も角彼女はきっと腹の虫を鳴らしながら怒っている事だろう。 焦りながら彼女は必死に夜道を走った。 ぷ〜ん その時どこからとも無く良い香りがしてきた。 キョロキョロと辺りを見回すと、路の一角に小さな屋台が。 「・・・・・・おでん屋?」 めずらしい、と思った。 確かにこの季節といえばおでんか鍋だがこの道は偶に暗部が通る事もある為、店を構えるような豪気な店主は滅多にいない。 他所から稼ぎに来た人だろうか、と考える。 だがここは渡りに船だとヒナタは思った。 (ここでちょっと食べてみて〜美味しかったら買って帰って夕飯コレにしよう!) 手抜きかも知れないけど待たせるよりはマシ。そう考えながら屋台に近づいて行くと屋台の影から、大き目の皿を沢山抱えた影が出てきた。 「え!?」 異常に良い自分の眼で見たその影の顔に驚き、思わず声を出す。 と、その声に反応して影がこちらを向く。 ・・・・・やっぱり見間違いではない。 「狐!?」 思わず上げてしまった大声に狐・・・・・顔つきから見てまだ仔狐のようだ・・・・は驚いてしまったらしく、奥の方に引っ込んでしまった。 「おや、お客さんですか・・・・」 その奥から別の影が出てきた。 「いらっしゃい。外はお寒かったでしょう。どうぞ席のほうへ」 そうヒナタに勧めるのはやっぱり狐・・・・ただし、今度は大人で眼鏡を掛け、如何にも「屋台の親父さん」といった風体をしていた。 「あ、はい・・・」 先程は驚いたが、葛葉のお陰で多少免疫が付いていたのか、その屋台の主人らしい狐のほんわかとした雰囲気に安心したのか、ヒナタは勧められるままに席に座った。 「どうぞ」 ことりと主人が差し出した皿にはがんもどき、揚げ、竹輪、餅巾着などが美味しそうな湯気を立ち上らせていた。 その良いに匂いに迷うことなく箸を付けてぱくつく。 「美味しい!」 思わず声に出してしまう。 美味しい。 文句なしで。 具を噛む度にしっかりと染み込んだ出汁が口の中に溢れ、その出汁も昆布から丁寧に採ったのであろう事が夫婦(?)揃って料理好きなヒナタには分かる旨みがある。 「特にこのお揚げの煮た奴、美味しいですね!」 「はっはっは、そりゃあ狐ですからね、揚げ物はねぇ」 主人は朗らかに笑っていた。 ぴょこ 先程の仔狐が奥から顔をのぞかせた。 最初見たときはびっくりして気が付かなかったが、父親のと同じ服装がとても愛らしい。 「さっきは大声出してゴメンね。びっくりしたでしょ?」 謝るヒナタにふるふると首を振る子供。 どうやらヒナタの荷物が気になるらしい。ちらちらと紙袋の方を見ていた。 「?」 ごそごそと探ってみるが、大したものは入っていない。 と、ある物を取り出した時、子供の目が輝いた。 「これ?」 それは端の欠けた蝶の形をあしらった置物だった。 元々詰め所に置いてあったものだが、誰かがぶつけて欠けてしまった為棄てるのもアレだと思ったヒナタが持ってきたのである。 キラキラと子供は眼を輝かせて置物を見つめていたのでヒナタはそれを差し出した。 「あげる」 「え!?いいの?」 「ええ」 子供は手渡された置物をぎゅっと抱きしめて嬉しそうにヒナタに礼を言った。 その無邪気な仕草にヒナタの方も思わず笑みが零れる。 主人の方も礼を言うためか屋台の中から出てきた。 「ありがとうございます。お代の方はコレでということでどうでしょう」 その主人の言葉にヒナタは慌てた。 「え!そんな悪いですよ!元々私のものじゃないし・・・・・」 しかし主人は笑って大きな包みを差し出した。 「いいえ、十分ですよ。それよりもお土産をどうぞ。待っていらっしゃる方がいるのでしょう?」 「え。あ!ナルト!」 思わず包みを受け取ってしまい、しかも主人に言われた言葉にハッとして家の方向を見てしまった。 「姉さんによろしく」 「え?」 振返った時はもう屋台はそこに存在していなかった。 「・・・・・・・・・」 夢だったのか、とは思うが、自分の手にはまだ暖かなおでんの包みが・・・・ 「いけない!早く帰らないと!」 今度こそ彼女はダッシュで家に帰り着いたのであった。 「ヒナタ〜遅い〜」 「あははは・・・・仕事は終わったの?(ぐ〜〜〜〜)」 待ちくたびれた葛葉はもはや怒る気力も無い様子で畳にへばり付いていた。 ナルトも葛葉ほどではないにしろ、腹の虫がなっている。 「ごごごご御免なさい!あのコレ!」 慌てながら包みを差し出すとバッと葛葉は立ち上がった。 「 嬉しそうにいそいそと包みを開け始めた。 「葛葉さん、やっぱり知ってるんですか?姉さんによろしくって言ってましたけど・・・・・」 「ああ、弟なのよアイツ。ナルトにも前に言った事あるデショ?」 「ああ、弟がおでん屋やってるって話?・・・うわ美味しそう!」 「でしょ〜アイツの餅巾着、絶品なのよね」 ほかほかのおでんを頬張りながら葛葉はヒナタの方を向いて言った。 「いい奴だったでしょアイツ。父上に似て人嫌いになりきれなかった奴だから」 「お子さんもいい子でしたよ」 そんな冬のあったかいお話。 **おまけSS ヒナタ「今回初登場の柚葉さんです。」 ナル「どうも〜初めまして、ナルトです」 柚葉「こちらこそ初めまして。柚葉です」 ナル「いえこちらこそ」 柚葉「いえいえこちらこそ」 ナル「いえいえこちらこそ」 柚葉「いえいえこちらこそ」 ナル「いえいえこちらこそ」 柚葉「いえいえこちらこそ」 ナル「いえいえこちらこそ」 葛葉「いつまで若い教師と出遅れたPTAみたいな会話してんの(蹴)」 ナル&柚葉「あだっ!?(痛)」 葛葉「さ、帰るわよ。柚葉、今夜は(も?)あんたのおでんよ!」 ナル「葛葉ねぇ・・・・・我侭」 柚葉「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ナル「あ!ゴメン、ホントの弟が目の前にいるのに・・・・・・」 柚葉「いえ、むしろあなたには感謝していますよ」 ナル「え?」 柚葉「今はそんな素振り見せないけど・・・・姉さん、父上が死んでから一時期ずっと塞ぎこんでいて、何も食べようとしなかったんです・・・・食うのが趣味の姉が」 ナル「はは・・・・(苦笑)」 柚葉「暫くしてようやくまともに食べてくれるようにはなりましたけどね。あれだけ元気になったのはあなたのお陰です」 ナル「・・・・・・・(照)」 葛葉「ナルト〜?柚葉〜?何してんの〜?」 あとがき 今回は『弟』に焦点を当ててみました。 柚葉君は友好的でしたけど極めて特殊です。 木の葉に来て一番初めに会ったのがヒナタだった事も大きいですね。 葛葉は以前一族と中が悪いと書きましたが、子供の世話を積極的に焼いていたので比較的年下には好かれています。本狐は気づいていませんが(笑) 柚葉君はその代表格。 それと彼のモデルは『xxxHOLiC』の狐親子です。 |
KUROKUさんからいただきました!
番外編第2弾!
柚葉さんいい人…いや、いい狐だわー。
子狐ちゃんもかわいくてほんわかしましたー。
ストーリーの流れは『xxxHOLiC』3巻のお話が元ネタですねー。
葛葉=侑子さんなキャスティングが絶妙な感じがしました。
なんかすごいしっくりした(笑)
柚葉さん、ほんわかした方ですが、言うことはしっかり言ってくれていかしますね。
葛葉ねぇは食うのが趣味。
フォント強調ですし(笑)。
まあ、本当のことですが。
なんて言ったってナルトに餌付けされてますしね(笑)
あとがきの
<柚葉君は友好的でしたけど極めて特殊です。
ってあたりで、やっぱり後編の本編は波乱万丈なお話になるのかしら?と思いました。
楽しみですvvv
2004/1/5