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(C)2003
Somekawa & vafirs

『北陸新幹線』

端野威輝

北陸新幹線が開業して、1年半が経過した。

せっかく、「飛行機克服キャンペーン」を実施していたというのに、克服宣言ができない状態で、飛行機に乗る機会が激減した。
コスト面も含め、会社は新幹線利用を推奨した。
当然のことだと思う。
実際、金沢駅から乗り換えなしで東京駅にたどり着ける。
しかも、早い。
開業前は10時に客先を訪問できなかったのに、開業後は、東京駅に近い客先なら9時に入れてしまう。
また、東京駅20時が金沢に帰る限界だったのに、21時でも帰れるようになった。
もはや、都内で1泊して翌朝移動で帰社というパターンは、全く無くなってしまった。

そんなわけで、ほぼ毎週のように北陸新幹線を利用するようになった。
飛行機なら、やれマイルが貯まるだの、ステイタス獲得だのというおまけがあるのだが、新幹線にはそんなものなどありゃしない。
開業前なら某社の「スーパーフライヤー」になるところだが、今は中途半端な「乗り鉄」状態で、お得感すらない日々が続いている。

新幹線の車内は想像していたよりシンプルで、変に「北陸=伝統工芸」みたいな押しつけ感がなく、個人的には気に入っている。
九州新幹線のように、木製のひじ掛けやテーブルみたいな感じじゃなくて、本当によかった。
シートも、まだ新しいからというところはあるが、座り心地がよく、快適だ。
最初は乗車時にときめいていたが、最近は当たり前感が強くなってきている。
それでも、全くときめかない飛行機よりは、遥かにましではある。

岩手県や関東地区の客先訪問など、最近は金沢〜大宮間を北陸新幹線で頻繁に往復している。
片道2時間である。
週に1回往復として、年50週で往復4時間とすれば、年間200時間を北陸新幹線の中で過ごす計算になる。
そういえば、いったい私は北陸新幹線の車内で、何をしているのだろう。

<睡眠の確保>
打合せのための資料を出張前に準備するため、金沢からの移動時は睡眠不足の場合が多い。
車内の進行方向最後尾の座席を確保し、シートを目いっぱい倒して、ひたすら眠る。
気が弱いので、後ろに人が座っていると、シートを軽くしか倒せず、睡眠を継続できなかったりするため、最後尾の座席確保は非常に重要だ。
シートはそこそこ倒れるし、揺れも少ないように思えるので、意外と眠れる。

<ただ、ぼんやり外を眺める>
言葉の通りの状態だ。
ただ、金沢〜高崎間はトンネル区間が多く、景色を楽しむところが少ない。
高崎〜東京間は、上越新幹線時代から見飽きているし、別に景色は楽しくない。
結局、ぼんやりと外を眺める区間は、ほとんどない。

<仕事>
北陸新幹線は、各席毎にコンセントがあり、パソコン作業での電源に困らない。
朝金沢から移動、夜東京方面から移動の場合、平日は席が結構空いている。
膝にパソコンを置いて、両ひじかけを占有して、場合によっては隣の席のテーブルを倒してマウスを操作して…意外と快適に仕事ができたりする。
ただ、金沢〜高崎間の携帯やネットワーク接続の状態は最悪で、早く改善してほしいと思う。

<酔う>
主に関東方面からの帰りということになるが、やはり状況が許せばビールを飲みたくなる。
サンダーバードやしらさぎで車内販売がなくなってしまったが、北陸新幹線は車内販売がある。
でも、時間が許せば乗車前にちょっとしたおかずを買って、ささやかな1人宴会を催したい。
特に、大宮駅はエキナカが充実しているので、乗り換えのタイミングでおかずを確保し、乾きものだけの寂しい状況を回避できている。
仕事終わりの達成感と、新幹線の心地よい揺れで、ビールとおかずがおいしく感じられる時がある。
やるせなさや悔しさが充満し、酔うことができない時もある。

北陸新幹線が開業して、1年半…様々な想いを胸に乗車した、過ぎ去りし日々…様々な想いを胸に乗車するであろう、これからの日々…私だけに限らず、 様々な人と様々な想いを乗せて、北陸新幹線は走り続ける。

<ロブロイストの日々>  毎・月始め更新いたします。