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(C)2003
Somekawa & vafirs

『美容師を始めて○十年…』

上畠典子

長年同じ店で働いていると常連客との距離が近くなり、いつの間にか当たり前の会話ばかりが続く。
今日は暑いですね、又は寒いですね。
と言うと今年は暑いねー!寒いですねー!去年は忘れたけど。

なんだかお店にいる間決まった会話の繰り返しで更に髪型もいつも通りみたいで…
毎回、同じ会話に始まり変わらない会話でおわる。
いかんな〜。

理美容室に行けばだいたいシャンプーの時にはほとんどのお店では
お湯加減いかがですか?→はい。
痒いところはありませんか?→はい。
(関東と関西での応えは違いがあるらしい)
気持ち悪いところはありませんか?→はい。
(関東と関西での応えに違いがあるらしい)
お疲れ様でした〜。

前からこれでいいのかな?
「はい」と言いやすい様に聞いているのでは…??
と思い込んだらだんだん変に思えてきて、変えてみた。

今日のお湯加減はいかがですか?自分で言いながら可笑しな聞き方だ(笑)と思ったら
「良いお湯だわ〜何処の湯?」(まじか!)
温泉水ではありませんがね…

聞き方を変えて
痒いところはありますか?「はい」
えっ!(あるんかい!)
「昨日から背中痒いんだわ〜。」(お家まで持ち帰りください)

気持ち悪いところはありませんか?
「こんなに気持ち良いのに悪いなんて聞く?」
(はっ!)
(じゃ)気になるところはありませんか?
「そうね〜仕上がりかしら?」(はっ!)
(やるなぁ…ふぅ〜・)

シャンプー終了
お疲れ様でした!
「なんでこんなに気持ちが良いのに疲れるの?」

(じゃ)いかがでしたか?
何処の湯だっけ?(こらーっ!)

また始めからですかー!
いつも通りでいいか…ふぅ。

では、今日はどのようにしましょう?
「切り抜き持って来たけど…顔は違うけど…なる?」
今の髪の長さとボリュームやパーマが必要か考えながらも、分からないので、このスタイルのどこが好きか聞いてみた。

この後よーく聞いてみると切り抜きのスタイルになりたいのかと思えば、どうも前髪とトップの部分が好きな感じで、横や後ろや襟足の長さはどうでも良いらしい。

なーんだ〜。
お客様がしてみたいヘアスタイルは、そのスタイル全部じゃない時もあるんだ!

それでもそのスタイルを中心に進めていくと「顔もこうなったら良いんだけど〜。」
(またまた私に何を言わせたいの?)
「ん〜それは別の医院にお越しください。」
「紹介して〜」(やるな〜)

帰り際に「次どんなんなるぅ?」

面白いな〜。
お客様も何気に楽しみたいのかしらと。
何か期待されている様だわ。

会話もヘアスタイルも、大きな変化ではなくとも、ちょいちょい流れを変えてもびっくりしないんだな…と。
結局、自分が勝手にいつも通りがお客様には安心、信頼と思っていただけかと。

長年のお付き合いでも、方向変えると知らなかった個性に出会えますね〜。

個性といえば、年配の女性でたまには男性にもありましたが、髪の色が一部分紫色とかグリーンやら赤やらに染めた方を見かけたことはありませんか?

悪くはないし、似合っていない(言い難い)ことないですけど、もしその色の注文をされた場合私はもう少し薄くした方がステキ!と言うだろうな。
でも、お客様がどーしても紫にしてー!とか緑色にしてー!と頼まれたら、お受けします。
が、必ず私の店でしたとは誰にも言わないで下さい。とお願いするな〜。

お付き合いが長くなると、いつもの様に、と言われると、変化をつけてもまた元のいつものスタイルに戻る。
これは好みという事か、似合うということか。
しかし、いつもの、といっても長年お付き合いしていくと、お互い見た目にいろいろと変化してきている事を告知する事を任務かと思いますが、そこは柔らかくアドバイスしなきゃ、と思いますか。
いががなものでしょう?

話を戻せば、「いつも通り」たまには工事中で迂回路してみても良いかと思います。

お後がよろしいようで。

 
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