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(C)2003
Somekawa & vafirs

金沢 BAR <主のひとり言>

餅とストーブ

先の年末、長年使っていた石油ストーブが壊れてしまった。
点火するとしばらくして勝手にバチンと切れてしまうのである。
冬場我が家というか、僕には絶対居間に必要なものなのだ。
過去に一度修理した事があり、また今時一万円前後で売っているはず、という事で近くの家電へいくと、予定の値段のものは全部売り切れている。
ようするに先の震災による「停電でも使える」ということで予想以上に売れたらしい。
しょうがないので残っている物から選んだわけだが、それも現品限りということだった。
とにかく必要なもの、予定の倍以上の値段だったが買ってきた。

家に帰り早速点火。
デザインも含め、意外と気にいったのでよしとしよう。
ところで何回も必要、と書いたが居間にはエアコンもあるが、残念ながらエアコンでは湯は湧かないし、スルメも焼けない。
そして何よりモチが焼けない。

僕は餅好きなのだ。
雑煮も好きだし、キナコ餅もよい。が、ゆっくり餅を焼きたい。
むかし聞いた言葉がある。
「魚は殿様に焼かせ、餅は乞食に焼かせろ」と聞いたものであるが、さて何故か?
ようするに魚は片面をしっかり焼き、一回だけひっくり返し、もう片面を焼くだけなので、常に満たされている殿様はせっつかない。
どっかと座り、「どれどれ、そろそろひっくり返そうかのう」とまあ実にゆったりと構えるのである。
それに比べ乞食は腹が減っている。
とにかく早く食いたい。
そこで、「まだ焼けないか〜まだか〜」と独り言をつぶやきながら、余裕なく何回もひっくり返すのである。
餅はちょこちょことひっくり返した方が綺麗に焼ける、という事だそうである。
なるほど、上手く言ったものだ。

僕もそうであるが、ストーブにのっかている餅を見ながら「まだか〜」と胸の中で叫びながら、何回もひっくり返している。
やがてプクーと膨らんでくる。
そのたんびに、ある種の満足感と、ヤッターという達成感を感じるのは、ひょっとして僕だけだろうか・・・。
そしてその焼きたてを皿に薄くしいた醤油に付けると、微かに醤油が焼けた、いい匂いがする。
むかし囲炉裏や火鉢で焼いていた頃は、醤油を付けてもう一回香ばしく焼いたものだが、ストーブでは残念ながらそれはできない。
ともあれ砂糖などいらない。
生醤油が一番だ。
そして両面にいい香りの付いた柔らかい餅を口にほうばる。
う〜ん・・・これが美味いし、いつまでも飽きないのである。
我が家では(僕は)毎年一月いっぱい、もしくは二月までほぼ毎日食べている。

さてその餅であるが、それなりの量が必要になってくるわけだが、なんと有難い事にもう何年?・・・二十年にはなるだろうか、毎年一月二日になると常連のS氏が持ってきてくれるのである。
今年もドサッと頂き、一月の中頃にまた頂いたので、今年も二月まで食べられそうである。
ほんとに有難い。
S氏には感謝してもしきれないので、もう感謝しない事にした・・・とはもちろん冗談の冗談、今日も香ばしい醤油の香りのするモチをほう張りながら、S氏「佐津川」氏に感謝に、感謝している。

と、石油ストーブも僕にとっては「愛らしく大事なもの」なのである。

<主のひとり言>  毎・月半ば更新いたします。