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(C)2003
Somekawa & vafirs

金沢 BAR <主のひとり言>

飽きない仕事

さて、バーを営り初めて30数年。
といっても金沢は歴史のある古い町、ホントに歴史ある老舗の店というと、数知れずある。

お客様で釣り道具屋さんに勤めている人が居られるが、その店など、なんと創業430年になるらしい。
・・・ハハーッと頷くしかない。
ひょっとしたら織田信長や秀吉、家康なども小さい頃、その釣り道具屋さんの釣り針、釣り竿で遊んでいたかもしれない。
そう思うと、老舗というよりは歴史のある店、という事になろう。
なんせ430年だ、すごい・・・。

ある料亭など幕末の頃に創業らしいので、ひょっとしたら坂本龍馬が遊びに来たかもしれないのだ。
う〜ん、こちらも歴史を感じざるを得ない。
また喫茶店でも昭和8年に開いた、という店が少なくても2店舗はある。
当時はミルクホールと呼んでいたそうである。

先日「金沢名酒場100」という雑誌が出た。
ほとんどは料理屋さんであるが、老舗のバーとして数件載っていた。
有難い事に我が店も取り上げて頂いたようだが、バーの事、せいぜい3〜40年のようである。
上が上だけに老舗というにはちょっとコッパズカシイ。
とはいえ、それはそれなり、である。

それなりに営っていれば酒場にはいろんな人が来る。
たとえば職業でいうと、土木屋さんになるのだろうが、日本最南端「沖ノ鳥島」。
最近も台湾より、あんなものは島ではなく「岩」だ、と言われていた。
日本は「島」と言い張っている。
その島を波で浸食されないように周りをコンクリで囲む工事が昔行われた。
その工事に携わっていた、という人が一時期飲みに来ていた。
その人も言っていた「あんなものは島じゃない、岩だ」と。
もちろん僕も写真で見たことがあるが、島というにはちょっと無理がある。
というより、笑える。

笑えると言えば、ある若い女性であるが、階段をドタドタと上がって来るとカウンターへ倒れ込むように座る。
そして「もう飲めんぞ」とくる。
毎度のことである。
そして次は「バーボンくれー、オメーも飲め」となるのであるが、酔うと何故か一見乱暴な男言葉になるのであるが、実は目は優しく微笑みながらの言葉なのである。
何杯か飲み、また階段をドタドタと降りて行くのである。

ある男がいる。
来ると必ず決まり文句がある。
「来たくなかったけど、来てやったぞ」とまあ、これまた毎度のことながら、実に素直でない。
しかしいつもスコッチを注文しながら「一緒に飲るか・・」となる。
そしてやがてお勘定となる。
すると金額を示すと「この店タケーなあ〜」と言いながら帰り際「もう二度と来んぞー」と吐き捨て、階段を降りていく。
しかし2〜3週間もすると「来たくなかったけど・・・」となるのである。
いつまでも素直になれない男であるが、それもご愛嬌、酔い良い(よいよい)。

よいよいで済まされない事もある。
これは前にも書いたが真冬の凍りついた日の事。
ある常連の男、ほろ酔いを通り過ぎ、かなり酔っ払い状態で帰っていった。
が、そのほんの数分後の事、その男はまたやってきたのだ。
だがびっくり。
顔中血だらけだったのである。
凍りついた道路で前のめりにずっこけたとの事。
酔っているからだろう、見た目血だらけの割には拭きとってみると、意外にもそんなに大けがではなかったようだ、まずはヤレヤレな事件であった。
ともあれ、顔中血だらけで店にやって来るとは、僕としても初体験であった。

こんどは平和な酔っ払いの話になる。
その男はすっくと立つと「トイレ」といってふらつきながら入って行った。
が、しばらく出てこない。
やがて何やらトイレから声がする。
「おーい、出してくれー」僕はトイレの前に行くと「どうしましたー」というと「カギが掛かっている、出られない」という事だった。
普通トイレは中から自分でカギを掛ける。
しかしそこは酔っ払い、自分でカギを掛けながら、外から掛かっている、と勘違いしたのだろう。
僕は言った「中のドアノブのボタンを押してくれませんか」というとウン、と言いながらカツン、そしてドアは開いた。
ふと彼は気が付いたのだろう。
「オッ、オレ掛けたわ」と言いながら苦笑いであった。

書くとキリが無いので、今回はこの辺にしよう。
酒場を営っていると、いい酔っ払い・楽しい酔っ払い、これからもたくさん会えるに違いない。
飽きる事はない、いい仕事だと僕は思っている。
・・酔い良い・・・。

<主のひとり言>  毎・月半ば更新いたします。