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(C)2003
Somekawa & vafirs

金沢 BAR <主のひとり言>

あれから3年

術後「二年経ち、今思う事」として去年書いたが、その後一年が経ち先月(7月)で三年が過ぎた。一応の節目ということらしく、一通りの検査があった。

幸いにして食道もリンパ節も再発、もしくは転移も見当たらない、ということであった。 ひとまず安心していると、医者が「ただこれを見てください」と言いながらモニターで右肺の写真を見せてくれる。
いろいろな方向から見える立体的で実に診やすい写真である。 それだけに素人でもはっきり分る。 肺の中央部に卵大の穴がポッカリと空いている。
もともと肺というものはスポンジ状のものらしく、それに穴が空くと穴の側面が硬くなる。 その状態が続くとよくないらしい。 ようするにいつかガン化する恐れがある、ということである。
じゃあどうすれば、となると対処方法はないらしく、静かに見守るしかないということであった。 では静かに見守っていると治るのか、となると「治る事もある」とまあ微妙な表現であった。

もともと術後の合併症なのだろうが、膿胸(ノウキョウ)と言って肺に水がたまり、結構大変な思いをしたのである。 退院しても胃酸の逆流から起きる、逆流性食道炎になり、そのまま胃酸の一部が肺に入り、誤嚥(ごえん)性肺炎になったり、と結構肺には無理がいっているようでもある。
そんな事を繰り返している内ちょっと疲れたのか、人の心にもポッカリと穴が空くように、肺にもポッカリと穴が空いたのであろう、と勝手に想像しているところである。 仮にガン化したとしよう、幸いにして肺は二つある。 またバーテンダーという仕事はさして頭も使わないが、力も使わない。 シェーカーを振り、グラスとボトルを持てればいい。肺ひとつでも仕事はできるだろう。

もうすでになくなった臓器もいくつかあるが、これ以上無くならないともかぎらない。
そこで動機としては不謹慎であるが、使えるものは使っていただこうと思いたったのである。
もともと“臓器提供意思表示カード”は持っていたが“骨髄バンク”を思い立ち電話してみた。 しかし年齢制限があるらしく、登録していても年齢が55歳になると抹消されます、との事であった。 僕は今年56歳になった。 僕の場合もうひとつあった。 過去に悪性腫瘍になられた方はご遠慮ください、と丁寧に断られた。

もともと動機が甘く不純なせいもあるが、使い物にならないという妙なもどかしさと、寂しい気になったものである。
ネットでアイ・バンクを調べてみた。 年齢制限はないが、これとていつまでも使えるとは限らない。 ともかく登録する事にした。 ちょっとだけほっとした。

<主のひとり言>  毎・月半ば更新いたします。