KNOPPIXをハードディスクにインストールする
WindowsのインストールはWindows98SEでしかやったことがありません。
Windows98SEのインストールでは、ほとんどディスクの状態を変更せずにインストールします。基本領域がひとつしかない環境を基準にしているため、ごく簡単に進みます。時間はかかりますが、Debianのインストールに比べれば簡単なものです。
KNOPPIXのインストールは、2004年6月現在(20040510-20040520版、KNOPPIX3.4)「knoppix-installer」というパッケージ(Windowsで言うプログラム)で行えるようになっています。
このインストーラー自身については詳しい解説がいくらかWEBにあるので細かく言及しませんが、これはWindows98SEのインストールよりも簡単です。
Windowsとの比較という観点から、まず違いがあることは
Windows:1つのドライブ(パーティション)でシステムが完結する形が標準
Linux:複数(基本的な最低数で2つ)のドライブでシステムが構成される
ということです。
Windowsはいずれもシステムパーティション(通常Cドライブ)だけで稼動させることができます。Windowsユーザーにとってはごく当たり前で、他はデータ用だったりします。
Linuxの場合、ドライブ単位で役割を分担させることができます。例えば多くのHDDを使ってファイルを分散させることができます。少なくともスワップ領域(Windowsのスワップファイル・ページファイルに相当)は別ドライブに確保することになっています。スワップなしで稼動させることは(Windows同様に)可能ですが、多くの犠牲を払う可能性があるので、スワップは切るものだと思っていて間違いないでしょう。
Linuxではインストール時にパーティションを設定するのが当たり前で、インストールする場所もWindowsよりかなり柔軟なので、面白いとも言えますが、初心者にはやや複雑です。KNOPPIXでは普通に「knoppix-installer」を使うと、スワップ領域のみ設定を求められるようにできています。つまり、システムとスワップのふたつのパーティションが必要になります。
余談ですが、/home(ユーザーのファイル、デスクトップなどがあるディレクトリ。WindowsではNT系の「Documents
and Setting」フォルダに相当)を別のドライブにすると、別のLinuxと環境を共用することも可能です(設定はしなくてはいけませんが)。スワップも共用できるので、Linuxの複数のディストリビューションを併用するのは、(ディスク容量的に)やさしいと言えるかもしれません。
インストール時に最も危険なことは、次の違いでしょうか。
Windows:必ずWindowsのみが起動するように設定される
Linux:後々設定変更なしでは起動できなくなる場合があるし、最初から起動できないインストールもできてしまう
これはMBRに設定される起動手順の違いです。Windowsは常に一つ目のハードディスクのアクティブな基本領域から起動するように設定されています。そのWindowsを使う限り、障害が起こらなければそのままで使い続けることができます。
Linuxは、MBRに自由度が高い起動手順を行えるプログラムが導入されます。これによってWindowsのように決まった場所でなくても起動ができるわけです。ただし、自由に起動するので、その起動の仕方を決めてやらないと起動させることすら不可能です。しかも、使い続けていくとその設定を変える必要が生じる可能性があります。そうすると、Windowsにはない一手間が発生します。従って、MBRには本人が使いやすいブートローダー(起動手順を執行するプログラム)を使う必要があります。このことをインストール時に気をつけておく必要があります。
KNOPPIXではLILOという、柔軟だが設定が難しいブートローダーが使われます。インストール時に「MBRには書き込まない」を選択できるので、他のローダーを使う手もあります。他のOSと共存しないなら、当面はLILOをMBRに書いて構いません。というか、MBRに書き込まないとKNOPPIXを起動できなくなります。ブートローダーを使う技量がない場合は、MBRに書き込んでください。
私の場合は、WindowsやCD版KNOPPIXとの共存がしやすいGRUBを使うので、MBRには書き込まない(パーティションへ書き込む)ようにしています。
ブートローダー関係(起動全般)はこちらを参考にするとよいでしょう。(2004/6/29)
上記はWindowsとLinuxの比較のみですが、KNOPPIX自身もその元であるDebianと様子を異にしています。
KNOPPIXのインストールとDebian Sargeのインストールを比較すると、その性格がはっきりと出ます。
KNOPPIXはFedora CoreやVine、或いはWindowsと同じような完成した環境を提供するタイプのインストールです。もちろん設定を変えることはできますが、標準ともいえる環境が存在します。また、設定は容易な内容ばかりになるように記述、組み込みをされており、難しいことは別途の手段でインストールすることを求めているような感じです。
Debianはすっからかんのシステムをインストールする部分しか共通的な部分がありません。ある程度標準的な環境にする手段もありますが、それらは慣れている人ほど使わない代物のようです。これは余計なものをインストールしたくないことのあらわれで、そのくらい(いろいろインストールする)ならKNOPPIXでよいというような考え方の源流でもあります。
そして、インストール中から選択が多く存在し、一度にひとつだけの設定をし、後戻りができないという形式のため、知らないとミスが発生する難しいものです。
この辺はLinuxの中での相違ですが、Debianという難しさがあるディストリビューションを元にしながら、KNOPPIXはWindows並みに容易なシステム構築をインストール時に提供しているということだと思います。(2004/12/27)
以上は通常のLinuxとして扱う場合のインストールですが、KNOPPIX(他にもBerry Linuxなんかも同じ部類ですが)にはWindowsへのインストール(以前FAT領域にしかできなかったときは「FAT32インストール」などとも言われていましたが、現在はNTFSから起動可能なので、ここではWindowsへのインストールと称します)という特殊なインストールが可能です。
KNOPPIX日本語版の3.6から「install2win.bat」というバッチファイルが付くようになり、これをつかうとNTLDRに細工をしてGRUBを起動してKNOPPIXの起動ができるようになります。これにはWindowsNT系OS(NTLDRとBoot.iniで起動する環境)であることが必要になります。そしてこれはCDをハードディスクにコピーして起動するものであり、ハードディスクから読み込むことと、起動のためにFDやCDが要らないこと以外はCD起動と同じです。ホームディレクトリなどを使わないとデータなどを残せないので、本来のインストールとは異なります。しかし、これはこれでバージョンアップが簡単だとか、削除が容易であるとか、いくつかの利点があります(欠点として大きいのはaptなどで更新ができないことですね)。
従来のFAT32インストールのやり方を応用して、NT系でない環境でもマルチブートでKNOPPIXをCDからと同じようにブートすることができます(通常のFAT32インストールと違ってFDやCDが要らないことが長所)。FAT(NTFSでもよい)にCDのISOイメージをコピーします。一度CDからKNOPPIXを起動し、GRUBをインストールします。GRUBのインストールはKNOPPIXでなくても構いません。とりあえず、既存の環境が起動できるmenu.lstを作っておきます。次にどこかのパーティションのルートフォルダ(ディレクトリ)にlinux26とminiroot_ntfs.gzをコピーします。仮にhda5(第一ハードディスクの拡張領域の一番目)にISOイメージともども置いたとして、以下のようなシーケンスをmenu.lstに追記します。
title KNOPPIX
kernel (hd0,4)/boot/linux26 ro lang=ja bootfrom=/dev/hda5/knoppix.iso init=/etc/init
hdb=scsi hdc=scsi hdd=scsi apm=power-off vga=791 home=/dev/hda6 myconf=scan
initrd (hd0,4)/boot/miniroot_ntfs.gz
ここにはホームディレクトリ(hda6)も書き込んでありますが、以上のような方法でinstall2win.batと同じ環境を構築することができます。GRUBのよいところはmyconf=scanのような指定を予め書き込んでおけることです。
kernel行はkernelの位置、読み込み専用で日本語を使用し、ISOがある場所、初期設定が(イメージファイル内の)どこにあるか、他のIDEデバイスはSCSIとして扱う、電源管理の方法、画面の扱い、KNOPPIX固有のオプションという感じで書いてあります。
initrd行はそのままinitrdが指定したファイルであることを示しています。miniroot_ntfs.gzはNTFSを解釈できるので、NTFSからの起動ができます。minirt26.gzだとNTFSからは起動できなくなります。
GRUBを通常の形で使用するので、もともとマルチブート環境を構築しているなら間違いなくこの方が便利だと思います。
通常のインストールは必ず専用にできるパーティションが必要ですが、Windowsへのインストールはパーティションを用意せずに使うことができる長所があります。KNOPPIXの長所を生かすインストールであると言えると思います。(2005/4/12)