QEMUでWindowsからKNOPPIXを起動
産総研の日本語版KNOPPIX(20040517-20040826)ではQEMUとcoLinuxというふたつの「Windows環境でKNOPPIXを同時使用する」手段が提供されています。両者はシステム的に違いがあり、仮想計算機とエミュレーターになりますが、初心者レベルでは同じようなものです。ただ、この違いはインストールや環境設定に現れ、使い方によっては決定的な違いになります。
QEMU:いわゆる「インストール」がないので、NT系で制限ユーザーでも使え、Windowsそのものは全く変化しない
coLinux:Cygwinなどのインストールが必要で、デバイスドライバも導入され、管理者でなければ使えない
お手軽という意味ではQEMUが勝ります。coLinuxの利点はパフォーマンスがよいことです。QEMUはかなり動作が重くなります。
ここではQEMUを初心者が使うという前提で進むことにします。
QEMUを使う場合には、CD起動か仮想CDへISOイメージをマウントするのが簡単です。高速かつ安定なCDドライブがあれば別ですが、基本的に仮想CDの方が早く動くでしょう。QEMUは重めなので、読み込みくらいは早くないとストレスフルになりやすいです。
以下、私の環境では仮想CDにDaemon Toolsを使い、Eドライブにマウントしているとして作業をします。CDから作業する場合は、CDドライブのレターに読み替えます。
とにかく起動させたいという場合は、エクスプローラからCDを開き、E:\qemu-0.6.0-windowsにあるqemu-knoppix.batをダブルクリックすればOK。インストール他が不要ですから、待つだけでKNOPPIXが起動します。産総研のページにあるように、そのままの設定であれば
boot: knoppix screen=800x600 desktop=wmaker
起動時に上記コマンドを使った方がよいでしょう。動作は起動フロッピーを使った場合と同じですが、本体CD以外のドライブを認識しないので、例えば「myconf=scan」のようなオプションは無意味です(CDを再構成する必要があるでしょう)。
これだけの話なら産総研のページで事が足ります。
折角なので、Linuxの深い知識がなくてもできるカスタマイズをしましょう。
実行しているのはWindowsのバッチファイルです。従って、Windows上から実行できるならどこにあってもよいことになります。
そこで、CDから「qemu-0.6.0-windows」フォルダを任意のハードディスク上へコピーします。これでバッチファイルの内容をカスタマイズできます。バッチファイルはメモ帳で編集ができます。
カスタマイズで守らなければならない条件は、バッチファイルと同じフォルダにqemu.exe他のファイルがあること。フォルダ自体はリネームしても構いません。
まず、任意のドライブレターで起動ができるようにするには、バッチファイルの以下の部分を変更します。
REM check CD-ROM Drinve
REM This script assume CD-RM has \qemu-0.6.0-windows\qemu-knoppix.bat
if EXIST h:\qemu-0.6.0-windows\qemu-knoppix.bat set BOOTDRIVE=\\.\h:
if EXIST g:\qemu-0.6.0-windows\qemu-knoppix.bat set BOOTDRIVE=\\.\g:
if EXIST f:\qemu-0.6.0-windows\qemu-knoppix.bat set BOOTDRIVE=\\.\f:
if EXIST e:\qemu-0.6.0-windows\qemu-knoppix.bat set BOOTDRIVE=\\.\e:
if EXIST d:\qemu-0.6.0-windows\qemu-knoppix.bat set BOOTDRIVE=\\.\d:
if EXIST c:\qemu-0.6.0-windows\qemu-knoppix.bat set BOOTDRIVE=\\.\c:
ここではC〜Hを想定しているようです。上でEにして話をしましたが、実は普段はWを割り当てています。このような場合は、以下のように書き換えておけば使用できます。
REM check CD-ROM Drinve
REM This script assume CD-RM has \qemu-0.6.0-windows\qemu-knoppix.bat
set BOOTDRIVE=\\.\w:
これでWに決め打ちしたことになります。C〜Hでも意味はないですが同じことができます。
次は環境を少しでもよくしましょう。
QEMUについて詳しくなくても、簡単に変更ができるパラメーターがバッチファイルには含まれています。
同梱のREADME-jaにも説明がありますが、確保するメモリのサイズがそれです。初期設定では128MBになっているので、Windows
Makerを使うことが推奨になっているわけですが、メモリが十分に大きければこれを変えてやることができます。ただし、Windows9X系ではメモリの制限があるので、256未満にしないといけません。
REM Start qemu on windows.
qemu.exe -L . -m 128 -boot a -fda qemu-boot.img -hda %BOOTDRIVE% -hdachs 1407,16,63 -user-net
-enable-audio -localtime
(変更する前にWindowsから現状の空き物理メモリを確認し、それの半分〜7割程度までのサイズに留めておいた方が無難です)
うちのThinkCentreは1GBのメモリがあり、通常700MB以上が空いた状態です。そこで480MBを割り当てて起動してみます。
するとKDEでちゃんと起動してきます。OpenOfficeも遅いながらちゃんと起動します。
うちにK6-2 533MHzで512MBのメモリのマシンがありますが、Pentium4 3.2CでQEMUを動かすとほぼ同じ程度(若干QEMUが遅いかも)になります。使えば使ったになる程度という感じです。
本格的に使うならcoLinuxだと思いますが、ホームページ作成時に他の環境での見栄えを確認するとか、危険なページかもしれないところを見に行くとか、その程度には今の程度でも使えるでしょう。もう少し高速化して「myconf=scan」に類する手段があればVirtual
PCがなくても大丈夫・・・なんてことになるかもしれませんね。(2004/8/31)
追記。
設定の保存・ホームディレクトリ作成(スワップ確保も)は以下のような感じでできました。
マウントしないでISOイメージを直接指定する方法があるので(下記)、
REM If you get iso image of KNOPPIX, please use the following options.
qemu.exe -L . -m 128 -boot d -cdrom knoppix.iso -user-net -enable-audio
-localtime
これを応用すると、ハードディスクを使うことができます。
そこで、Windows版QEMUを公開していらっしゃるこちらの説明から、ハードディスクのイメージを作成します。
作業は通常のKNOPPIX上で行います(QEMUではない)。コンソールから、
$ dd if=/dev/zero of=./harddisk.img bs=1024 count=10000
これでカレントディレクトリに10Mのハードディスクイメージが作れます。countを大きくすればサイズが大きくできます。付属のテキストに2GBまで可とあるので、それ以下で作成します。これをQEMUのフォルダに移動させます(FATが楽ですが、explore2fs・・・ext2などのパーティションを読み込めるツール・・・とかお持ちならNTFSへ移動させることもできます)。QEMUのフォルダが嫌ならば、バッチファイルでイメージをフルパス指定する方法も可能です。フルパス指定はISOイメージなどでも同様です。
qemu.exe -L . -m 128 -boot d -cdrom knoppix.iso -hda harddisk.img -user-net
-enable-audio -localtime
こんな感じで認識します。ただし、このままでは生ディスクですから、起動したQEMUのKNOPPIX上でfdiskを行い、フォーマットや領域の書き込みをします。qtpartedを併用する(fdiskしておかないと認識しない)とやりやすいでしょう。KNOPPIXを終了し、再度QEMU上で起動させると、今度はパーティションを自動マウントしてKNOPPIXが起動します。こうなれば設定の保存、継続的なホームディレクトリ作成も普通と同じになります。
おそらく、フォーマットをちゃんとすればフロッピーでも自由に使えそうです。
Windows9X系の人なら、Swap用のパーティションを足してやるとメモリへの割り当ての制限を少しは緩和できるかもしれません。
これで高速な環境を持つ人は、QEMUでかなり自由なKNOPPIXが使えます。
Linuxの知識がほとんど要らないままに使いこなせることと、Administratorsでなくてもよい点はいいです。fdiskのコマンドは、そのまま入力すると使い方を教えてくれますから、名前のルール(プライマリ・マスターのディスクは/dev/hdaであるなど)のみ知っていれば目的にたどり着くことが可能です。
これだと、DVD-RAMに一式入れておく使い方ができそうです。DVD-RAMドライブがあれば全部OKというのは、かなり画期的な話だと思います。近似的に更新可能な一枚KNOPPIXですね。(2004/9/14)
DVD-RAM"KNOPPIX-QEMU"試してみました。
当然ながら成功しました。おそらくDVD-RWでも同様のことができるでしょう。そろそろRWは8倍速になりそうなので、かなりの速度が期待できそうです。DVD-RAM3倍速でも、QEMUでの起動はそれほど遅れませんでした(むしろ読み込みよりQEMU処理で遅れている感じ)。バッチの設定が簡単になるように、ISOイメージとHDDイメージはQEMUのフォルダに置くといいです。
一枚で書き込み可能なKNOPPIXが欲しい方はいかがでしょう?
まあ、すっぱりとLinuxをHDDインストールしてQEMUで動かす手段もありますが・・・。KNOPPIXをインストールというのはハードウェア認識の問題が気にならないので、DVD-RAMで使うならよいかも。(2004/9/23)