嫌な気配がする。うっとおしい空気と、奇妙な既視感。 目の前には小さく華奢な少女がいて、こちらを見ている。 とても見覚えがあるが、誰であったか思い出せない。 いつの間にか少女は下品極まりない表情を浮かべた男三人に囲まれる。 男達は次々に少女の身体をまさぐりだした。 例えようもない嫌悪感。それなのに、自分の身体は動かない。 少女は色のない瞳で、こちらを見ている。 「おい、こいつ男だぜ」 男の誰かが言った。 そして少女−−−少年は着物を剥ぎ取られる。 そこには少女の身体にはないはずのものがあった。 「驚いた・・・。 だが、こんなに美人なら悪くはないな」 その台詞を聞いたとき、に向かって少年は微笑した。 の動機が急に激しくなる。 助けようにも、何故か自分の身体は縫い留められたかのように動かない。 これ以上この少年を見てはいられないと、きつく瞼を閉じた。 ・・・はずだった。 だが、の目はしっかりと開かれていて、その視線の先の少年は、ただ悲しげに微笑んでいる。 その瞳に、と同じく憂いの青を宿して。 −−−嫌だ!!やめろ、やめるんだ!!離せっ!! 少年と一緒に叫んだ。 −−−僕は(俺は)男だ!男なんだ!! 眼に涙を溜めて、精一杯身を捩る。 「・・・・おい、!」 地面が揺れている? これで助かるのか・・・と、安堵したようにが重い瞼を開く。 「・・・ぅ、あ・・・?」 「そうだ。、何があった?」 ぼんやりした視界がはっきりしてくる。 目の前には、心配そうに覗き込むの顔があった。 そういえばあの時もこうして、助けに来てくれたのはだった。 大の男を片っ端からのして。傷だらけになって。 「・・・あの時の夢を見てた。またお前に助けられたようだ」 寂しそうに目を伏せ、薄く笑うに、は苛立ちを隠せない様子だ。 肩をきつく掴み、がくがくと揺さぶる。 「何言ってるんだ、。俺は、何があったと聞いてるんだ。お前、どこへ行ってたんだ!?」 噛み付くように言ってきたに、は首を傾げる。 どこへ行ってた? とりあえず布団から起き上がろうと、身を起こした。 「−−−−−−−−っ!!!」 身体の奥深くからじわりと疼くような感覚。 瞬間、は全てを思い出した。 ぐにゃりと世界が反転し、歪んでいくのではないかという錯覚に陥る。 「っ!!」 寝台から落ちそうになったを、がすかさずに抱きとめる。 「おい、落ち着け。何があったんだ?」 「あ・・・あ・・」 頭よりも先に身体が思い出す。 月村にあのような場所に指を入れられいいように嬲られ、自身を擦りあげられた。 そしてそれを写真に収められてしまった。 「あ・・、おい?」 抱きとめるの手に力が篭った・・・そう思った瞬間、の身体がかっと熱くなった。 全身がぶるっと震えた。 「、今の俺に、触れるな・・・」 努めて冷静に、の手を押しのけようとする。 飲まされた薬はまだ完全に抜け切っていない。 「・・・・・・・」 「・・・?」 いつまでたっても自分を離そうとしないを、は訝しげに見た。 髪と同じ薄茶色の大きな目が、じっとを見据えていた。 この瞳は、完全に怒っている。 長い付き合いの中、が本気で怒ったことは片手に数えるほどもなかった。 しかもの記憶の限りでは、その怒りの矛先が自分に向いたことは一度もなかったはずである。 しかし今この瞬間、どう見てもはに対して怒りを覚えていた。 ぎしり、という音がした。 気が付くとは、また寝台の上に転がる羽目になっていた。 そして、両肩はに押し付けられている。 「あ、っ!」 「なんだ」 「なんだじゃない・・・っ離せ。今の俺に触るな・・・!!」 「触るなだと? ふざけるな。 お前の、これはなんだ?」 ついっと、寝巻き襟から覗く白いうなじを差す。 「?」 「誰に、こんなことを許した?」 低く、地を這うようなドスの利いた声。 が自分では確認しようもない部分を差し、が問う。 予想はついた。すぐさま否定したい。だが言えるはずもない。 今の自分は、その低い声すら腰にくるくらいに敏感になってしまっているのだ。 「お前の身に何があった?」 ぐっと顔を近づけるに、うろたえる。 これ以上触れられると、危険だ。 どうにかして逃げなければとは思うものの、力でに敵うわけがないことを、はよく知っている。 次第に身体は熱くなる。 「くぅ・・・っ」 僅かに漏れてしまった熱い吐息に、が驚く。 「?」 「やめ・・・てくれ。離してくれ、頼むから・・・」 の掠れた声は、妙にの欲情を掻き立てた。無意識に肩を押さえつける手に、更に力が入る。 しかし、どうも様子がおかしい。 は恐る恐る、しかしどこか期待しつつ、自分の膝での両足を割ってその間にあるものに触れてみた。 「−−−!!」 そこは、僅かに熱を持っている。 は目を見張った。胸の奥がじんじんと熱くなる。 は、ついに観念したかのように、深く息をつき静かに言った。 「情けない・・・どうやら俺は、やつらに・・・月村に釘を刺されたようだ。口封じに薬を盛られ、写真を撮られた・・・」 目を逸らし、自嘲しながら言う。 は、目の前が真っ暗になった。 「これは、その薬のせいだ。すまない・・・みっともないところを見せて・・・」 不甲斐ない自分への嫌悪感からだろう、辛そうに唇を噛むに、気が付けば唇を合わせていた。 歯列を割り、優しく吸う。何度も舌の上をなぞる。 「ん・・・・んぅ・・・」 身を捩るに、はお構いなしに唇をむさぼる。 ようやく解放されたは、全身で息をする。 「な・・・何故・・・」 「馬鹿、辛いんだろうが。 今、楽にしてやるから、少し黙って大人しくしてろ」 「あっ!?」 いきなり、今の口付けで反応しきってしまっていた自身を軽く突かれて、は仰け反った。 電流のような快感が身体を駆け巡る。 「出せよ。そうすれば、きっと楽になる」 の寝巻きの中に手を突っ込み、擦る。 「やめ・・・!!」 「大人しくしろ」 言いながら、その手の速度をあげる。強弱をつけて、促すように。 「あ・・・ぁ・・・・あっあっ」 腕の中で切なく眉を寄せ喘ぐを、は熱の篭った瞳で見た。 本当に美しい。そう思わずにはいられなかった。 こうなった原因・・・あの薔薇の木の根元で見た小使いの青年などの比ではない。 何度この手に抱きたいと思ったことか。 それを本人に悟られまいと、隠し通して生きるのは至難だった。 今、この状況を利用して、にこのようなことをしている自分は卑怯で最低だと思う。 しかし、我慢できなかった。にこのような仕打ちをした月村を、絶対に許すわけにはいかない。 「あっ・・・・、駄目だ・・・もぅ・・・やめ・・・・てくれ・・・」 「何がだ。早く出して、楽になれ」 「いや・・・っっ は、恥かし・・」 ぞくりとの背に快感が走る。 悩ましく腰をくねらせ、その欲情した顔を見られまいと、顔を背ける。 の中に自身の抑えが効かなくなるのでは、という不安が渦巻いた。 これは、が盛られた薬の効き目がなくなるまでの処置であり、 がにそのような意味で心を許して行っている行為ではないのだ。 は必死に自分にそう言い聞かせる。 だから、もう少し・・・もう少しだけ、その美しい姿を見てもいいだろうか。 動かす手の速度を少しだけ落とす。 「は・・・ぁ・・・あ・・・あ・・・」 「もう、限界か?」 「うっ・・・ま、まだ・・・・もう、ちょっ・・・と」 途切れ途切れ言う。 羞恥からだろう、その真珠色の肌にかなり朱が差している。 濡れた青味がかった一対の宝石が、哀願するように刺激を求めている。 盛られたのは相当難儀な薬のようだ。 それを利用する自分も自分なのだが、とはには見えぬように自嘲した。 「そうか・・・それじゃあ、こうしたほうがもしかすると、もっと楽なんじゃないのか?」 が着ていたものをするりと脱がすと、ぐいっと片足を持ち上げてが言う。 そして自分の利き手の中指を一旦根元まで舐めると、ゆっくりとの中に挿入した。 「ああああっっ!!!」 「・・・」 一段と大きくなった自身に、愛おしそうに口付ける。 「ここがいいのか?」 一際大きく跳ねた場所を執拗に、しかし優しく弄る。 涙を溜めて、が自分の口を塞いだ。 「んっ・・・・んーっ・・・っ、っ、っ」 「、駄目」 弱い場所を、強く引っ掻いた。 が目を見開く。 「ちゃんと、聞かせろ」 そう言ってもう片方の手で、口を塞ぐの手を制した。 「や・・・ぁ・・・あんっ いや、そこ・・・・いやだ・・・っあっ・・・はぁっ」 「・・・そろそろ限界なんだな?」 のいい場所を、内側から何度か強めに擦ってやると、大きく仰け反って簡単に果てた。 の手が、の放ったもので濡れた。 「く・・・ぅ・・・」 「だいぶ楽になったか?」 くたっと力尽きたの頭を優しく撫でて問う。 「はぁ・・・・・・・・・・・はぁ・・・、お前・・・焦らした・・・な?」 肩で息をしながら、じとっと睨む。目を動かすだけで精一杯のようだ。 心の中でが言った『鈍感なお前へのお仕置きだ』という言葉は、には聞こえるはずはない。 隠し通してきたのだから、気付かれても困るのだが。 あまりにも理不尽な理由に、本人も苦笑いするしかない。 「さてな。さ、今後の計画立てようぜ? まさか、泣き寝入りするなんて言わせないからな?」 ごまかすようにいったに、は小さく謝った。 「すまない・・・」 「何が?」 「いや・・・その、お前を巻き込んでこんなことをさせて・・・」 「気にするな。もうどうせ後戻りは出来ないわけだからな。・・・もっとも、後戻りなんかする気もないが」 が見上げたの顔は、見たこともないほど、強い怒りを浮かべていた。 <<<前 次>>> |