薄暗い土蔵。本日ここへ足を運ぶのは二回目である。 は、ぎしりぎしりと音を立てて階段を上り、昼間いた部屋の扉を開いた。 呼び出された薔薇の木の下に、繁はいなかった。 行こうか行くまいか迷っているうちにかなりの時間が立ったように思えたから、 痺れを切らして家に帰ったのかと思い、勝手に上がりこんだのだ。 「入るぞ?」 「どうぞ」 「っ!?」 耳元で聞こえてきた声は、予想していたものと違っていた。 もっと無機質で、冷たくて・・・それでいて、どこかで聞いたことのある声と口調。 背後に鋭利な感触。 「さぁ、入ってください」 背中に突きつけられているのは、おそらく小型の刃物だろう。 服越しではあるが、少し角度を変えられればざっくりとやられそうである。 否応なく、部屋の奥に通される。 「こんばんは」 どこか辛そうな、曖昧な微笑み。 そこには繁が手足を縛られ、ゆったりと座っていた。 「どういうことだ」 「火浦くんに君を呼んで来いと言ったのは、私ですよ」 月村が言う。 「どういうことだ」 はもう一度、繁の目を見て言った。 「どういうことも何も、つまりは、こういうことだよ。嫌な予感はしてたんだ。 君と初めて会ったときに、花喰ヒ鳥について聞いてきた時からね。 その後、幹彦が一泡吹かされた話を聞いたときは、真っ先に君のことが頭に浮かんだよ。用心深くて聡明そうだったから」 そう言って悲しそうに目を伏せる。 今日あんな風に挑発して、写真について聞きだしたかったのは、それを確認するためだったのか。 は、無意識に唇を噛む。 「要くんの写真は持ってきて頂けましたか?」 妙に苛立つ。 「持ってくるくらいなら、わざわざ隠したりはしない。あんたの目的はな・・・・・・ぐぅっ!?」 の目の前が暗くなるのと、繁が「あ!」と小さく叫んだのはほぼ同時だった。 肩を掴まれ、ぐるりと月村の方を向かされたその瞬間、の鳩尾に鈍痛が走った。 がくんと膝が崩れ、床に丸まるようにして痛みに耐える。 「気絶しない程度に加減しましから。ちゃんと意識はあるでしょう?」 胃が、ぐるんぐるんと回っている気がする。物凄い吐き気が襲う。 だらしなく開いた口からは、飲み込めなかった唾液が伝う。 「あ・・・ぐぅ・・・」 「幹彦、彼に酷いことをしないでくれ」 「私は要くんの写真を取り返したいだけですよ」 「送りつけた・・・のは、あんた・・・だな? あんたが・・・花喰ヒ鳥・・・っ、一体何が目的・・・・・・・・・・あうっ!?」 よろりと立ち上がろうとしたその瞬間、今度は開き気味だった足の間にある急所を下から軽く蹴り上げられた。 本当に軽くだったが、蹴られたのは男の最大の急所である。 硬い革靴の、甲の部分が柔らかく垂れ下がった袋の部分を下から的確に捉えたのだ。 の身体はいとも簡単に崩れ落ちる。 「あ・・・う・・・・・・・っ」 両手でその部分を押さえ悶絶するに、月村が意外そうな声を出す。 「そうでした。くんは一応男の子でしたね。失礼。くくくっ」 「きさ・・・まっ」 立ち上がろうとするが、鳩尾よりも遥かに効いたらしい。 独特の痛みで膝が立たない。 「幹彦!!」 怒りを露にして、繁が叫ぶ。 「このくらい、なんてことないですよ。さて、そろそろくんへのお仕置きを始めましょうか」 そう言うと、月村は無表情に悶絶するを抱え上げた。 「うぁ!?」 そして繁の前に、乱暴に落とす。 どさり。 「痛ぅ・・・」 「レイフ、君の仕事は彼に写真のありかを聞き出すことと、もう二度とおいたが出来ないように調教することです」 「おいたって・・・、くんは今までの子達みたいに要くんに手を出していないじゃないか」 言っていることは正しいのだろうが、どこか自信なさ気に言う繁。 月村に対し、それほどまでに恐怖感を持っているのか。それとも別の感情なのか。 が、必死に起き上がろうと、床に手を付く。ひゅんと背後で音がして、漆黒の髪が床に流れた。 髪を結わえていた紐を切られたようだ。 起き上がる途中、ちょうど四つん這いになった体勢のところで、が固まった。 「ぁ・・・っ!!」 股間の部分に何か触れている!! 「おや、さっきのは痛いばかりではなかったようですね」 ちょうど自分が蹴り上げた部分をやんわりと包むように月村の手が動く。 その手を振りほどきたいが、身体が先ほどの痛みを思い出し、勝手に身が竦む。 「くっくっく。大事なところを握られて、身動きが取れない?」 「幹彦、その手を離すんだ」 「そうですね、君が非協力的なら、このまま握り込んで白状させるのもいいかもしれませんね。 ほら、言わないと、本当に女性になってしまいますよ?」 ぐっとほんの少し手に力を入れる。 「ぅっ・・・・・うっ!!い・・・たぃっ」 「それはそうでしょうね。ここは副睾丸と言って、一番痛みのある場所ですから。でも、それだけではないみたいですね」 意味深に言う月村。 その意味は、が一番よくわかっていた。 −−−嫌だ、こんなこと、この人の目の前で・・・。 この人の目の前で。 自分で思ってしまって、はっとする。それでは、まるで自分は繁に特別な感情を抱いているようではないか。 しかし、の身体はそうだと肯定するように、熱を持ち始めた。 握り込まれている袋の部分すらも熱くなる。 「あ・・・っ」 思わず漏れた、甘い秘め声。 は、目頭に涙を溜めながら耐える。 「・・・わかった。わかったから幹彦、その手を離して、ぼくを縛るこの縄を解いて」 繁がそう言うと、月村があっさり手を離した。 「はい、どうぞ」 縄を切ると、自分は部屋の入り口付近の本棚に背を預けて、見物体勢に入った。 は、すがる様な目で繁を見る。 「そういうわけだから・・・君も、あきらめてくれるよね?」 「何?」 は我が耳を疑う。 「もしも、ここで隠した写真のありかを教えてくれるのなら、昼間のように優しくしてあげるよ」 耳元で、月村には聞こえぬように言う。 「ふ、ふざけるなっ」 こんなところで言いなりになってたまるものか。このようなことが許されていいはずがない。 は、気配だけで月村の場所を探る。 どうにかしてここから逃げ出せれば、一時的にでもこの状況からは逃げられる。 そうしたら、あの写真を手紙と一緒に警察に送りつけてしまえばいい。 と、そこまで考えたとき、目の前にあった、繁の瞳に危険な色が浮かんだ。 「いけない子だ。反抗的なことを、考えていたね?」 見透かされて、ぎくりとする。 そういえば、月村は繁の手足を戒める縄を切っていたのだ。 は慌てて体勢を立て直そうとしたが、気付いたときには遅かった。 「やめ・・・っ」 抵抗も虚しく、あっさりと全裸に剥かれた。 そして繁は、再びに四つん這いの体勢をとらせる。 「ぼくはもうあきらめたよ。どうせだから、楽しく昼間の続きといこうか」 「や・・・っ何言ってる!!」 「でも、今度は君がされる方だよ。調教・・・随分といやらしい響きだけど、確かに君には必要なようだから」 そう言って、繁は自分の右手の人差し指と中指を舐める。 「前には触れないから、どうしても刺激が欲しいのなら自分でしてごらん?」 言うが早いか、の細い腰を押さえ付け、ゆっくりと中に指を挿入する。 「ぃ・・・・・・ああ・・・んっ」 「熱いね、中。もう、やらしいこと考えてたの?」 「ばっ・・・ちが・・・・あっあぁっ!!」 「ふーん、ここね」 ニヤリとうなじで囁かれ、一段と身体の中が熱くなる。 「昼間はぼくの中で頑張ってくれたからね。まずは、お礼をしなきゃね」 脇腹から片手を伸ばし、胸の紅い点を執拗に責める。 もう片手は、の中の一番反応する場所を。 「あっ・・・やめ・・・・そこ、いゃ・・・・・・・・・あ!」 どくんどくんと自身が脈打つ。 両手を床につき、必死に快感に耐えようとする。 「さぁ、写真一体どこに隠したのかな?」 「い、言う・・・ものかっ」 「そう、せっかく加減してあげてるのに。それじゃ、もう少し可愛い声で鳴いてもらおうかな」 ぐいっ。二本の指で、が感じる場所を同時に二箇所責め立てた。 「あアっっ!?」 身体が勝手に反った。 「気が付かなかった? 同じ場所じゃないよ、ここと、ここだ」 説明する声にあわせて、指がぐっぐっと弱い場所を突く。 「あっ あーっ んっ・・うぅあぁ・・・くっっ」 「いつまで、耐えられるかな?」 もう、腰にまるで力が入らない。は、唇を噛み締め声を必死に殺す。それだけが、今に出来る精一杯だ。 しかし、それももう限界だった。自然に声が漏れ、腰は揺れてしまう。 どれだけ情けないことか、わかっているはずなのに恥かしい声は、の喉の奥からせりあがってくる。 「・・・はぁっ・・・・あっ・・・・・あぁっ」 「可愛い声で鳴いちゃって・・・そんなにいい?」 「ぅ・・・・るさ・・・ぃっ」 否定ではない言葉が無意識に出てしまい、がはっとしても、今更だった。 耳の後ろから、優しげな吐息が聞こえたかと思うと、指を引き抜かれ、腰を高く持ち上げられた。 「い、嫌だっ」 「そんなこと言って、本当は待ち望んでるだろう? 素直じゃない子には、お仕置きだ」 秘部の下から覗く、先ほど月村に握り込まれていたの柔らかな部分を軽く指で弾いた。 前が勃ち上がっているこの状態で、これは少しばかり辛いだろうと思ったが、繁は薄笑いを浮かべての反応を楽しむ。 「あぅっ」 「正直に言わないと、もう一回するよ?」 脅すには十分すぎる低い声。まるで鬼のような仕打ちである。 は信じられないというように、無理な体勢から首を後ろに向ける。 だが、持ち上げられた自分の身体のせいで相手の顔が見えない。 「や、やめ・・・」 「やめて欲しい?」 「あ・・たり・・・まえだっ」 「写真の隠し場所と、続きをして下さい、の両方が、ちゃんと言えたらやめてあげるけど、どうする?」 「な・・・・!!」 「今度はぼく、もう少し力入れちゃうかもよ?」 「・・・・うぅ・・・」 「さぁ、どうする? ・・・・・・・ぼくに、酷いことさせたい?」 ずきりと、胸のうちが熱くなる。 何故だか今の繁の言葉が、妙にの胸を締め付けた。どこか切なそうな響きを持っていたからだ。 ついに観念したかのように、小さく言った。 <<<前 次>>> |